5分でわかる5GとAR/VRが生み出す新たなビジネス|技術と活用事例から見る産業・社会の変化
皆さんはARとVRの普及において、どれほど5Gが重要な役割を果たすかご存知でしょうか?
「5G抜きにはARとVRは大衆化しない」と言う専門家もいるほどですが、本記事ではそれほどに密接な関係にあるAR/VRと5Gの関係性を紐解いていきたいと思います。
Contents
AR/VR時代を支える5Gとは何か?
では、そもそも5Gとは何かという事から説明します。
5Gとは、高速通信・同時接続次世代型のモバイルネットワーク技術
まずGは世代を表すGenerationのGの頭文字ですが、これまで主流だった4Gは「モバイルネットワークの第4世代技術」を指し、5Gは「次世代型のモバイルネットワーク技術」を指します。
具体的には、以下の3点が大きな変化のポイントであるとされています。
- 高速かつ大容量の通信が可能になる
- 通信時の遅延の低下
- 多数の端末の同時接続
1.高速かつ大容量の通信が可能になる
5Gと4Gの速度を分かりやすく比較すると、4GではHD映画をダウンロードするのに10分近くかかりますが、5Gの場合なんと10秒以内に完了します。
つまり速度感でいうと5Gは4Gの50倍〜100倍の速度を実現できるネットワーク環境なのです。
2.通信時の遅延の低下
5Gでは、ネットワークの「遅延」が解消されます。
5Gは4Gの10分の1ほどの遅延になるため、
- マルチプレイ型のオンラインゲームでのリアルタイム性が向上する
- 遠隔医療が発展する
- リッチな3Dアバターを使ったオンラインMTG
といったことが可能になります。
3.多数の端末の同時接続
3は「1つの基地局に対して大量の端末が同時にアクセスしても、安定した接続が可能になる」という意味で、5Gで同時接続可能な端末数は4Gの100倍以上とされています。
こちらはARはもちろんですが、IoT時代で求められるネットワークインフラと言えます。
スマートフォンだけでなくIoT家電や乗り物など、あらゆるデバイスに埋め込まれたセンサーが通信を行い自動化していく社会を支える期間技術になります。
5Gは、通信する情報量が肥大化していく社会の基盤になる
この5Gが誕生した背景は一言で言うと「2020~30年の社会を支えるモバイルネットワークへの備え」です。
2025年の流通するデータ量はIoTの影響もあり2016年の10倍に肥大すると予想されています。
5Gは「膨大なデータを吸い上げ、それら瞬時に解析し、ハードウェア端末にフィードバックする」という、いわゆる「ハード」×「ソフト(データ)」×「AI」の本格普及を見据えたインフラの整備ということなのです。
少し乱暴かもしれませんが4Gが「スマートフォンのための通信技術」であり、5Gは「すべての端末とすべてのアプリケーションのための技術」と認識しておくと良いかもしれません。
さて、ここまで「5G」について紹介してきましたが、ここからは5G時代の本命とされるAR/VRについて簡単に解説していきます。
AR/VRとは|技術の概要と体験可能なグラス・デバイス
AR(拡張現実)は、3DCGなどの映像や音声情報を、現実世界に重ねて表示(拡張)させる技術を指します。
人気ゲームの「ポケモンGO」のように、現実世界に仮想空間上のキャラクター映像や音声を表示させる技術がARで、基本的には「AR/MRグラス」と呼ばれるグラス形の端末か、スマートフォンのカメラ越しに体験します。
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一方のVRは「仮想空間に没入する技術」であり、ユーザーは視界を覆うデバイスを装着し、3DCGで構築された360度の立体的な空間対して自身の5感を没入させます。
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ARとVRの違いのイメージ
ARとの違いは、「3DCGのグラデーション濃度」になります。完全に3DCGが視界を覆う技術がVR、現実空間に対して3DCGのオブジェクトを出現させる技術がAR/MR、という認識で問題ないでしょう。
AR/VRと5Gの関係
2020~2021年度には5Gの商用化によってVR・ARサービスが高度化すると言われています。
(総務省の公式サイトより)
ここまで解説してきたように、ARのコンテンツやVR空間を構成するデータは、2次元ではなく3次元のデータになります。
つまり従来の通常のスマホで見るコンテンツとは比較にならないほど情報量が多く、現代よりも優れた通信環境がなければ、ユーザー体験の質は担保できません 。
その結果、
- 通信の遅延が発生してしまう
- デバイスの通信環境が安定しない
といった事象が発生します。
5Gは4Gの10倍近くのスピードを提供できるようになるため、VRやARの体験の質が担保されるわけですが、それゆえに5G無しにはVR/ARは普及しないと指摘する専門家も多いわけです。
▼従来のネットワークインフラと比較した際の5Gの通信速度のイメージ
タイプ | 速度 | フルHD映画をダウンロードする時間 |
3G | 384Kbps | 1日以上 |
4G | 100Mbps | 7分以上 |
4G + | 300Mbps | 2.5分 |
5G | 1〜10Gbps(理論値) | 4-40秒 |
通信キャリアとARグラスの提携の背景を考察
5GとARのトレンドとして、「通信キャリアとARデバイスメーカーの提携」や「ARグラスの活用」が挙げられます。
それぞれの提携内容と、各グラスの特徴を見ていきましょう。
DOCOMO社による米・Magic Leapへの投資とデバイスの発売
2019年4月、NTTドコモはアメリカのMRグラスメーカー・Magic Leap社に2.8億ドルを同社に対して出資したと発表。そして、2020年5月に同社のプロダクト「Magic Leap 1」を発売します。
Magic Leapの特徴は「高精度な空間コンピューティング技術」。
現実空間に配置された様々なオブジェクトの形状をスキャンし、空間に即した配置で3Dオブジェクトを投影するため、例えば「あたかもそこに仮想のキャラクターがいるかのような体験」が可能になります。
関連記事)Magic Leap Oneのスペックや仕組み、活用事例を解説!
KDDI社は中国のARグラスメーカー・Nreal社と提携
2019年5月、KDDI社は、中国のデバイスメーカー「Nreal社」とXR技術を活用したスマートグラスの企画開発、日本展開で戦略的パートナーシップを締結すると発表しました(参考)。
Nreal Lightの特徴としては、
- デザイン性
- 軽量であること(88g)
- 3Dオブジェクトの解像度・発色の良さ
の3点。サングラスのような見た目で、日常のユースでも十分に使えそうなスマートなデザイン・軽さにもかかわらず、非常に解像度が高く、AWE2019やCES2020では注目の的となりました。
参考記事)KDDIが提携する最新ARグラス「nreal light」まとめ
SoftbankもMRグラス「Nreal Light」を使った5Gの実証実験を実施
Softbank社も、上記MRグラス「Nreal Light」などのXR技術と5Gを活用した実証実験を実施しました。
この実証実験は「次世代のスポーツ観戦の形」であり、ARグラスを装着すると以下の体験が可能とのことでした。
- 3点のカメラの映像をグラスの一部に投影。カメラは自由に切替できる
- 試合のスコアをリアルタイムで表示
- 両チームの学校名を表示
といった体験を行ったとのこと。
(詳しくは、上記の映像をご確認ください)
※5Gや、Nreal Light・Magic Leapを活用したAR/MRコンテンツの企画・開発依頼はこちら
ポストスマートフォン?次世代形ウェアラブル端末としてのARグラスへの期待
このように各通信キャリアがARグラスに熱視線を注ぐ背景には、「AR/MRグラスが、”スマートフォンの次”を担うウェアラブルデバイスとなるのでは?」というARグラスへの期待が存在すると考えられます。
2Dの小さな画面のスマートフォンと、視界の大部分に3Dの情報を投影できるARグラスでは、享受できる情報の量や質が大幅に変化することに加え、「逐一スマートフォンをカバンやポケットから取り出す必要がない」という点で操作性が大幅に変化します。
日常利用であれば、
- ゲームのキャラクターが現実空間にARで出現する
- グラス上に仮想のディスプレイが出現し、テレビ番組や映画をグラス1つで楽しむことができる
- 街を歩いていると、店舗のレビューや広告が個人にカスタマイズされARグラスにリアルタイムで表示される
といった変化が起きていきます。ビジネスユースであれば、
- 製造業の現場で、作業しながら常にグラス上に作業マニュアルを表示。音声入力を活用し、ハンズフリーでマニュアルを進める
- 自動車メーカーの企画会議で、新車の3DCGモデルを会議室に出現させ、複数人でデザインをレビューしあう
- 医療現場で、手術前にチームメンバーで3DCGを使った医療シミュレーションを行う
といったことが可能になります。
このような「3D情報の活用」や「リアルタイムで複数人が干渉する」といったリッチな体験の通信基盤として、現在の4Gではなく5Gが必要になるのです。
日常シーンだけでなく各産業をアップデートしていくXR技術に対して、通信キャリアや企業は熱視線を注いでいるのです。
新たなビジネスが到来?5G×AR/VRの活用事例4選
さて、ここからは実際に5Gが恩恵を与えるxRの4領域について解説していきます。
1.AR/VRコンテンツ×自動車
ARコンテンツと自動走行車との連携は5Gがもたらす恩恵の1つです。
UberやGoogle、Appleが力を入れている自律型自動車は今後数十年にわたって一般的に普及していくはずですが、車のフロントガラスはARグラスとしての役割を持ちます。(Googleは既にポルシェなどの自動車メーカーとの提携を進めています)
「近場のレストランをフロントガラスに表示する」「地図ルートをリアルタイムで反映する」といったコンテンツを車技術と統合し、ユーザーが違和感なく利用するには5Gの帯域は不可欠です。
2.仮想空間内ライブストリーミング
スポーツやアイドルグループがライブ配信を、VRを利用して世界中のユーザーに届けるといった事は、国内の場合、SHOWROOMやClusterなどが力を入れてますが、家(wi-fi)がなくてもポータブルデバイスでどこでもアクセスできる様になる事で、益々普及していくはずです。
テキストデータといった原始的な情報ではなく、仮想空間内の3次元的なユーザーコミュニケーションは、従来とは比較にならないほどの膨大なデータを扱う事になるはずですが、5Gであればこれを瞬時に処理できるようになります。
3.映像コンテンツのリッチ化
未来の映像フォーマットは、VRやARアプリケーションの影響もあり現在よりもはるかにリッチな体験となると言われています。
これまでの「二次元的なスクリーンで物語を楽しむ」とは全く異なり「物語の中に没入し、実際に移動したり、キャラと触れ合える」といったインタラクティブな映像体験は既にディズニーやGoogle、Pixerなどが力を入れ始めており、映像と人の関係性の変化点を迎えようとしています。
国内では初のVR長編アニメ「Project LUX」がその先駆け的な存在として注目を集めました。
4.遠隔操作の活用
こちらの記事ではAR医療を紹介していますが、遠隔コントロール技術が5Gによって現場浸透することが予想されます。
遠隔制御において、医療手術などで活用する場合はコンマ1秒のズレも許されません。
リモートでデバイスを完璧に制御するためにはモバイルネットワークのレスポンス時間を短縮し、完璧にリアルタイム性を実現する必要がありますが、その役割を5Gが担うと予想されます。
逆に言えば、4G世代では実用レベルのレスポンスが担保できないため、遠隔操作による浸透は進まない可能性がこれまであったのです。
ドコモ社による5Gを使ったスポーツ観戦
それでは最後に国内における活用事例を見てみましょう。
今NTTドコモなどが力を入れているのが、スポーツ観戦とAR/VRの統合です。
2020年は東京オリンピックが開催されることから、VRを用いた臨場感あふれるスポーツ観戦や、ARによるインタラクティブな体験を備えたスポーツ観戦が提供されるようになると想定されます。
現にアメリカではすでにMagic LeapとAT&Tが業務提携を結んでおり、エンドユーザーにARを通じた新しい視聴体験を提供する準備を進めています。
例えば自宅のテレビでスポーツ中継を観戦するときでも、自分の机の上にサッカー場の縮図を映し出して観戦したり、審判の目線カメラから試合を楽しめた方が楽しいですよね。
ARで机の上で再現されるサッカー映像
各産業のAR活用事例に関しては、こちらの記事で詳しくまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
※【2020年最新|ARビジネス活用事例11選】効率化や精度の向上などAR化のメリットに迫る
5G時代のARコンテンツ開発企業
5Gは自動運転やIoT、ドローンなどさまざまな分野で活用が期待される技術ですが、VR・ARも5Gの有望なアプリケーションの1つなのです。
ここまで様々な業界のAR活用事例や活用方法を紹介してきましたが、本メディア「XR-Hub」を運営している株式会社x gardenはXR事業導入コンサルティングを展開しており、Nreal社ともエバンジェリスト契約をしています。
国内の大手観光会社、大手通信会社を始めとした実績が多数あり、国内外の「各産業×AR/VR」の事例収集や事業規模の産出・新規事業の企画・計画書の策定からアプリ・デモの開発まで幅広く支援を行っています(自社でエンジニアを採用しています)。
- 5Gを使ったARコンテンツ開発を行いたい
- ARやVRを、自社の既存事業に導入することを検討している
- ARやVR部門を立ち上げたい
こんなニーズがある企業担当者の方にはリサーチや要件定義書の設計、開発を含めご要望に応じたコンサルティングを行なっておりますので、
もし「話だけでも聞いてみたい」と興味がありましたらこちらからお問い合わせください。
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