2022年ARの広告・プロモーション活用事例|仕組みやメリットなど徹底解説
AR技術は、インターネット史でも大きなパラダイムシフトになると言われていますが、その中でも特に大きな影響があると言われるのが広告分野です。
ARアプリを使ったプロモーションはもちろん典型的な使い方ですが、ARを活用することにより紙の印刷物に動画や音声を追加できるだけでなく、O2Oのソリューションにつなげることができるようになりました。
またAR広告を取り巻くテクノロジーの進化は昨今著しいものがあります。
そこで、この記事では
- AR広告のメリット
- AR広告の仕組みについて
- AR広告の成功事例集
- 広告における未来予測
などに焦点を当て、AR広告・プロモーションの現在地と未来について考察していきたいと思います。
AR広告の3つの活用文脈|それぞれの効果・メリット
広告やプロモーションにおいてARを活用する際、3つの活用文脈が存在します。それは
- ソーシャルバズ狙いの文脈
- 購買意欲の促進文脈(コンバージョン率の向上)
- パーソナライズ文脈(1つの看板で同時に複数の広告を表示)
の3つです。1つずつ見てましょう。
1.ソーシャルバズ狙いのAR広告
こちらはプロモーション手法の1つとしてARを活用するもので、「Foot Loker × NikeのARアプリ企画」などが例として挙げられます。
簡単に施策を紹介すると、スマホに専用のアプリをインストール。
アプリ内に様々なヒントが表示され、それを手がかりに現実の街なかを歩き回り、隠されたARマーカーを『ハンティング』すると、次第にシューズの輪郭が明らかになり、限定版のエアジョーダンをゲットできるという仕組みです。
現状スマホ利用を前提としたAR提供がベースとなっており、その結果として撮影されやすく、ARの技術の新しさ・視覚的な面白さも相まってソーシャルメディアで拡散されやすい特徴があります。
国内の事例だとサッポロビールがARを用いた広告を実施し、Twitter上で話題になっていました。
アプリ入れずに出来るので、良かったらぜひ試してみてください〜!https://t.co/fD8nCpiFmU https://t.co/Pz4uShm2Xm
— なかじ / リリカちゃん (@nkjzm) January 8, 2020
Webを用いたAR広告でアプリをインストールする必要がなく、消費者にとっても手軽に試せるといった点が特徴となっています。
この様に従来の手法とは全く異なる広告体験を提供でき、ソーシャルアプリとも相性が良いことから認知を広げるプロモーション文脈でARは大いにメリットがあるのです。
2.Eコマースにおける販売促進・コンバージョン改善
2つ目は「販売促進」という意味のプロモーションです。
最も分かりやすいのが「サイト内の商品を、実寸大で試着可能にして購買率を高める」という施策。
この施策はすでにAmazonを筆頭に多くのECサイトが採用しており、導入前後で費用対効果が計測しやすこと、そして成功事例も多いことから一層活用が進んでいくと想定されます。
※参考:ARをECサイト・店舗に導入する|11の事例から見る小売のアップデートと活用方法
3. パーソナライズ文脈(1つの広告枠で同時に複数の広告を表示)
最後は、3~10年後の世界観ですが「個人にカスタマイズされた広告が、個別デバイス毎にAR表示される」というもので、プロモーションやサイト内AR活用ではなく、屋外広告などに代替する活用方法です。
- 電通デジタルとKDDIによるAR広告プラットフォーム開発
- 博報堂DYメディアパートナーズとスターティアラボが「AR広告」の提供を開始
など、2019年以降特に国内でも実証実験が着手され始めています。
現状のリアルな屋外広告は当然ながら1つの広告枠に対して1つの広告しか表示できません。
しかしARを用いた場合、1つの広告枠に対して複数のデバイスに対して別々の広告を配信することが可能になります。
これは次の章でご紹介する「VPS(Visual Point System)」を活用することで実現できる未来型の広告ですが、そのためには
- 「ARクラウド技術の進化」
- 「5G回線の商用化」
- 「ARグラスの普及」
などインフラ環境・デバイスの進化が必要条件になってくるため、実現するのはしばらく先になる見通しです。
ここまでARの活用メリットを解説してきましたが、本メディア「XR-Hub」を運営している株式会社x gardenはARの共同事業開発を展開しています。
- 自社の新規事業としてAR広告領域を検討している。
- 最新のARにおける技術動向を知りたい。
という企業担当者の方はぜひご相談ください。
ARの仕組み|広告として表示されるための技術とは
ここからは、どのような仕組みでARを表示するのかを解説していきます。
⑴ARマーカー or 平面認識によってARコンテンツを画面上に表示
ARの仕組みは基本的にどの方法も同じで、マーカーもしくは平面認識によって、対応するARコンテンツを画面上に表示させるものです。
先ほどご紹介したサッポロビールのAR広告は、 缶のラベルの★マークをARマーカーにする事で、Webカメラがラベルを認識した際に広告が表示される仕組み となっています。
アプリ入れずに出来るので、良かったらぜひ試してみてください〜!https://t.co/fD8nCpiFmU https://t.co/Pz4uShm2Xm
— なかじ / リリカちゃん (@nkjzm) January 8, 2020
(再掲)
ARコンテンツは画像や3DCGだけでなく音声も扱うことができます。
例えば、写真や図面だけではわかりにくい住宅情報雑誌に対し、内見動画を表示するようにすれば、より立体的に情報を伝えることが出来ます。
レストランのメニュー写真などに3DCGを重ねることで、より一層シズル感を持たせることも可能でしょう。
AR広告は従来広告に比べてより一層五感に訴えることができるのが特徴であり、広告から受け取ってもらえるメッセージを拡張することができるのです。
インスタやSnapなど、ソーシャルプラットフォームのARの取り組みが加速
さらに、現在注目を浴びているのはSNS連携によるAR広告です。
若者に人気のSnapChatやInstagramではARでストーリーなどの動画に対してデコレーションすることが可能で、これを広告利用する動きが広がっています。
ARのエフェクト自体を広告化し、ユーザーがそれを面白がって自撮り動画を拡散してくれるのです。
例えばこちらは、Instagramのストーリー機能で口紅をARエフェクトとして使えるもの。
インフルエンサーがこのエフェクトを使い、視聴者はストーリー上からこの口紅を購入することが出来ます。
言うまでもなく現代マーケティングでは「共感を得る」ということが非常に重要ですが、InstagramのAR広告はソーシャル上の親しい人からの自然体に近い推薦・提案であり、視聴者の共感性も高いためにROIが高いことが証明されており、昨今多くの販売事業者やメーカーから注目を集めているのです。
InstagramのAR広告についてはこちら→)インスタARフィルター徹底解説|SNS AR広告のコスト感・メリット・事例集
⑵VPS(Visual Point Service)の仕組みを活用した実証実験も
また新しいAR広告の仕組みとして、VPSを用いたコンテンツ配信手法も注目すべき潮流の1つです。
VPSとは「Visual Point Service」の略称で、スマホやARグラスに搭載されたカメラ越しの画像と現実空間の3D情報を照合し、ユーザーの位置情報や向きや方位を推定する技術です。
このGifのように、 AR広告に対して広告を見るユーザー位置や向きに対して整合性のある(アメフト選手の体の向きが最適化されている)コンテンツが表示されている のがお分かりになるかと思います。
これは「周辺の空間・環境情報をスマホカメラが読み取り、サーバー上でユーザーの位置やカメラの向きを認識、その位置に対してコンテンツの見せ方を同期させる」という処理を行なっているため可能な演出なのです。
(スマホでのVPS活用イメージ。周囲環境を点群化しスマホの位置・方向を推定する)
これがVPSの概要ですが、実運用となると膨大な通信量が発生します。
なぜなら常にカメラが読み取った情報を逐一サーバーへ送信し、リアルタイムで位置を照合。表示するコンテンツに反映させ続ける必要があるためです。
そのためVPSが一般に浸透するためには5Gやポイントクラウド(ARクラウド)といった技術が必要不可欠になります。
参考)【3分で分かる、VPSの仕組み】AR領域で不可欠である理由・活用事例を解説
⑶、デジタルサイネージやテレビCMと連動したAR広告も実用段階に
また昨今の最新技術ですが、テレビCMやデジタルサイネージと連動したAR広告を実現するテクノロジーも生まれています。
こちらの動画は海外のARスタートアップが提供するAR SDKを活用することで実現したもの。
ARマーカーの代わりにテレビの映像がARコンテンツの表示トリガーとなっています。
ユーザーは家でテレビを見ながらARコンテンツを楽しむことができるため、従来以上に訴求力の高いCMを広告主は展開することができます。
実際、美容大国である韓国では、美容系機材のプロモーションにこちらの技術を活用した実証CMを展開しました。
この技術はテレビだけでなくデジタルサイネージにも応用可能。
今後、サイネージ広告枠を保有する企業によるAR導入が進むとXR-Hub編集部は予想しており、実際にデジタルサイネージにARを活用する研究を行なっております。
AR広告の事例集
それではここから、AR広告の事例を1つずつ見ていきたいと思います。
事例1.アプリ・SnapchatのAR広告 – すでに多くの企業が広告で活用
アメリカを中心に若年層に浸透するカメラアプリ「SnapChat」ですがAR広告媒体として頭角を現しつつあります。
Snapchatには「レンズ」というAR機能が搭載されており、これを広告利用するのです。
広告としての魅力はコストが非常に低いことで、 サービス開始6ヶ月の間に100社が広告主としてSnapchatのAR広告を契約するなど、非常に活発な動きを見せています 。
ご紹介したのはハーシーズのアイス・ブレーカーズ(Ice Breakers)という商品広告になります。ご覧いただければわかるように、これがユーザーによってAR映像としてSNSで拡散されていくのです。その広告効果は計り知れません。
事例2.資生堂のARアプリ「カラーシミュレーション」
iPhone📱でメイクを試すことができる人気の #アプリ「ワタシプラス カラーシミュレーション」がリニューアル!この動画のようにスマホ上でバーチャルで試せちゃうんです!ほかにも便利機能イロイロ💕ぜひダウンロードしてみてくださいね♪
➤https://t.co/pT3mZaEC6V pic.twitter.com/OlMwNN9Tbf— 資生堂 ShiseidoCo.,Ltd. (@SHISEIDO_corp) 2017年7月4日
資生堂の化粧品をバーチャルに試すことができるアプリです。顔を動かしたり表情を変えたりしてもリアルタイムにメイクがちゃんとついてきますので、いろいろな角度から色の具合を確認することができます。
気に入った商品はそのままECサイトの「ワタシプラス」で購入することができます。
事例3.TISSOTによる腕時計オンライン試着、売り上げ85%増加
こちらも「販売促進」という点でのプロモーションの事例。
スイスの高級腕時計TISSOT(ティソ)の試着ができるアプリです。
TISSOの店舗の前で配られている紙のリストバンドを手にはめてそばにある端末に手をかざすと、画面上にTISSOTの腕時計をはめた自分の姿が映し出されます。手を動かしても実際に手にはめているようにAR表示され、もちろん時計の種類も瞬時に変えることができます。
TISSOTのこのプロモーションは3週間で85%も売上が増加したとのことです。事例4.紙幣がマーカー!ケンタッキーフライドチキンのアプリ(インド)
インドのケンタッキー・フライド・チキンで提供されたARアプリで、実際のルピー紙幣にスマホをかざすと紙幣の額によって実際に注文できる商品がAR表示されます。
手持ちのお金が少なくても、変える商品が事前に確認できるため安心してお店に行けますね。
このアプリは35,000以上ダウンロードされ、iTunesストアの『インド/食品カテゴリー』で1位を記録。インドにおけるケンタッキーのブランドイメージを変えたとも言われています。
事例5.あらゆる平面をディスプレイ化するARサービス「Bring print to life with Layar!」
こちらは「Layar」というARのサービスですが、雑誌や牛乳パック、コーヒーカップ、ポスターなどにAR広告を追加して、さまざまなシーンで利用しています。
このように紙の印刷物に、動画や音声などの追加情報を付加できるのがAR広告なのです。その訴求度の高さは一目瞭然ですよね。
事例6.ポーランドの美術館でのAR利用
美術館の来場者にアプリを提供。
展示している絵画にスマホをかざすと、絵の中の人物が動き出したり、作者が作品の解説をしたりしてくれます。
博物館や美術館向けのアプリは従来ビーコン連携で解説音声を流すものが多かったのですが ARを活用することでビーコンの装置が不要になり、安価で、楽しいアプリを提供できるようになりました 。
キャンペーン連動させることにより、大きな集客効果を得ることができた例になります。
事例7.Mercedes-Benz
メルセデス・ベンツはプレゼンテーションや広告によくARを活用しますが、こちらは2015年に行われたARプレゼンテーションです。ステージのプレゼンにライブでAR効果を加えています。観客が皆スマホをかざしてプレゼンを見ているのがなんとなく可笑しいですが、訴求力は抜群ですね。
以下は厳密にはARではないのですが、なんと2011年に南アフリカで実施した紙面広告です。
アイディアが素晴らしいですね。
事例8.National Geographic
これはナショナル・ジオグラフィックが2011年にロッテルダムのショッピングモールで行ったARキャンペーンです。
スマホではなく、大型スクリーンを使って、指定したマーカーの上に立つと、スクリーン上に映った自分の近くに恐竜や宇宙飛行士が寄ってくるなど非常に斬新なAR体験であり、大きな話題となりました。
事例9.FXMIRROR & FIT’N SHOP
これはFXGear社の「FXMIRROR」というARフィッティングソリューションです。
店頭では大型ディスプレイに自分の姿を映してAR試着ができます。スマホ用には「FIT’N SHOP」というアプリが用意されており、このAR試着のFXMIRRORと連携して購入決済まで可能なのです。
事例10.バーガーキングによる競合を炎上させるAR広告
アメリカでは、バーガーキングのAR広告が話題になりました。
バーガーキングがリリースしたアプリをダウンロードし、街中でマクドナルドなどバーガーキングの競合他社の広告にアプリ内のカメラをかざすとその広告が炎上する、というもので、炎上後にはバーガーキングのクーポンを受け取ることができるという演出付き。
SNSでの効果も抜群、非常にインパクトのあるプロモーション活動でした。
事例12.FacebookがSNS広告のAR対応を試験導入
2019年秋より、FacebookのAR広告対応が試験的に導入開始しました。
すでにテスト済みで、ECでは高いCVR効果も。
実はすでにCVRなどへの効果性は検証済み。
「AR広告でサイズ感を確認(試着)、そのままアプリで購入」といった形で勧められており、化粧品ブランドWeMakeUpはFacebookのAR広告開始によりコンバージョンレートが大幅に改善されたようです(27.6ポイント改善とのこと)。
Web広告は”ブロック用のアプリ”がリリースされるなど、「個人へのカスタマイズの最適化」と「表現方法のリッチ化(最適か)」は、「広告を価値ある訴求」へとアップデートしていく中で喫緊の課題。
立体視可能でリッチに表現できるARは、後者(「表現方法のリッチ化」)に良いアップデートをもたらしてくれるでしょう。
広告の未来|ARがもたらす広告業界へのインパクト
このようにARは広告分野で非常に影響力を持ってきており、集客力向上と売上アップにつながりつつあります。
AWE2019では、「Houzz(家具・インテリアEC)がARを使用することでCVRが11倍に跳ね上がった」という報告もありました。
この動きはARKitやARCoreがリリースされてから加速しており、SnapChatのAR広告がこれに火を付けた形になりました。
また、現在は視覚と聴覚にのみ影響を与えるAR/VRですが、近い将来に触覚や嗅覚にまで訴えることを考慮する必要が出てくるのかも知れません。
※AR広告が普及する鍵となる概念「WebAR」についてはこちらで言及しています→)WebARがAR時代を牽引する2つの理由。事業機会や技術を解説。
※WebAR開発ツール8th Wallの開発記事はこちら⇒【8th Wall徹底解説】特徴比較から使い方、WebAR開発事例まで
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