【AR R&D徹底解剖!】MESONが明かすR&Dプロジェクトの苦難と成功の舞台裏!


XR-Hubによる、XR業界の先駆者と知を共創するコンテンツ「XR Innovators Talk」第3弾。

今回はARクリエイティブスタジオ事業を運営する株式会社MESON CEOの梶谷健人さん(写真左)とCOOのARおじさんこと、小林佑樹さん(写真右)に「AR R&D最前線」と題し、AR開発のリアルを聞いてきました。

苦労した創業期のお話からAR R&Dプロジェクトの裏側まで、読者にとって価値のある情報を盛りだくさんでお届けしておりますので、ぜひ最後まで読んでみてください!

試行錯誤の連続、MESON創業の舞台裏

それでは早速ですが、まずはこれまでのMESONの軌跡をお聞きしてもよろしいでしょうか。

梶谷氏はい、創業期の話からで言うと最初の1年間はとにかく試行錯誤の連続でした。

ARをテーマに起業するというのは決まっていたので最初にやったのは、ひたすらARデモアプリを作って、興味を持ってもらえそうな企業に持ち込むという活動です。

エンタメ系の会社さんとか謎解きの会社さんとか、いろんな会社にデモを見せて提案をさせて頂いたのですが、当時(2016~17年頃)はまだARアプリの成功事例が少なく、担当の方も「結局ARで何ができるの?」という状態でした。

まだARに対する市場の理解がないこともあって提案した企画も中々前に進まず、事業としては成り立たないので、自分がグロースハックやサービスデザインのコンサルで稼ぎつつARのデモをひたすら作るという時期でした。

3Dモデル検索サービスへ挑戦するも…?

小林氏:そこからARというドメインを変えずに、事業を転換させて3Dモデルの検索エンジンサービスをリリースしました。

今後AR・VRが伸びていく中で3次元のモデリングデータが価値を持っていくはずなので、そこをどこよりも集めるというアイデアです。

小林氏:世界中の3Dデータをクロール・インデックスしてサーチ出来るようにするというのをやっていたのですが、それでもやはり早過ぎたようで半年くらいやってサービスをクローズする判断を下しました。

梶谷氏:その後、「ノウハウ・キャッシュ・タレントを獲得して、自分たちのオリジナルARサービスを作るところに向けて準備をできるように」という目的で、「ARクリエイティブスタジオ事業」を再開したのですが、それが現在かなり軌道に乗ってきた、というのが現在地点です。

2年前と比較した時のAR R&Dの市況感について

紆余曲折があった訳ですね。過去と現在のARの市況感については、どのような感覚をお持ちでしょうか?

梶谷氏:それで言うと、間違いなく変わってきていると思っています。

2年前の創業当初、僕らが「ARで何かしましょう!」って叫んでいても正直、見向きもされなかったのですが 今では「ARって大事だよね」とみんな分かってきていてその中でどうやったら自分たちのビジネスにインパクトがありそうかというのを考え始めるところまで来ている ように思います。

無関心だった頃からすると、だいぶARに対する興味・関心の温度感が高まってきているという事でしょうか。

そうですね。

まだ少ないですが、きちんとR&D用の予算を持って、まだ早すぎると自覚しつつも僕らMESONだったり他のAR企業と組んでサービス開発や研究をする企業が出始めたというのが、2年前からだいぶ変わったなと感じている部分です。

提案するよりも、向こうから「こういうことやりたい」と提案されることが増えた

小林氏テクノロジーの進化で、実現出来ることが増えたというのも背景としてあると思います。

ARKit1(2017年頃)からするとARkit2、ARkit3(2019年6月リリース)とアップデートされたことで実現できることが明らかに増えました。

(3,000回以上リツイートされたARKit3の投稿、ARの大衆化フェーズも近い?)

メガネ型もMagic Leapを始めとして様々なARハードウェアが出てきて、よりARが身近な存在になりつつあるのだと思います。

これまではこちらからARコンテンツを企画・提案することが多かったのですが最近は依頼元の企業から「こういうのやりたい」という話も増えてきました。

【本題】AR R&Dプロジェクトの裏側 – 成功と苦労談-

ありがとうございます。それではいよいよ本題に…!

AR R&Dに関する情報ってまだオンライン上で少ないと思うのですが、実際のプロジェクトで学んだ成功体験や、生々しい失敗事例などあれば教えていただけますか?

梶谷氏:はい、まずざっくりとサマリーからお伝えするとARのR&Dでは「AR特有の開発パートナーとの関係性」「プロセスの整理と形式知化」「越境型クリエイターチームの編成」の3つが重要になると思っています。

要点⑴ AR特有のプロセスをパートナーに理解してもらい、伴走する関係性を築く

梶谷氏:先週AWEに行ってきたんですけど、グーグルのARチームが明確に言ってたのが、 「空間的な体験であるARにおいて最初に仕様を決めきるのは不可能だから諦めろ」 という事です。

通常外部のパートナー企業とアプリやWebサービスを開発する場合、仕様を決めきってウォーターホール型でやることが多いと思うのですが僕らの場合、パートナー役員と毎週アイデアワークショップをして一緒に考えて、粗く決まった段階で作り始めて、ディティールは後から詰めるというアジャイルな進め方を採用しました。

 ARは身体を使った体験なので、とにかく試作品を作らないと伝わらない部分が多すぎるんです。 

小林氏:ARのR&Dでは、ウォーターフォール型でやるよりもアジャイル型で開発したほうがいいものができるというのが往々にしてあり、「走りながら作っていく」という ある種の”ゆるさ”を許容して頂けるように、パートナーとの関係性をプロジェクト初期にしっかり築いたこと が、今回うまくいったことの1つの要因だと思っています。

なるほど、面白いです…。

要点⑵ 開発プロセスを社内外で”形式知”にする

梶谷氏:2つ目のポイントはAR開発のユーザー体験設計をプロジェクト初期にしっかり整理した点だと思っています。

実は僕らもARのデザインをこの規模で本格的にやるのが初めてで、どういう順番で何をやっていったらプロダクトが完成するのか、最初よく分かってなかったんです。

普通、Webとかアプリとかってワイヤーフレーム書くじゃないですか。

でも「ワイヤーフレームをARにどうやって書くんだろう」っていう手触り感がなくて。

そこで1回ARサービスの全体設計ロードマップを整理したんです。

(以下、MESONで実際に活用しているARサービス設計用の資料。※ご好意で一部を公開!)

資料例1)ARサービス設計の全体のロードマップ

資料例2)ユーザーストーリーと機能のマッピング

 

梶谷氏:ARサービスでも通常のサービス同様に、ペルソナがユーザーゴールに至るまでの具体的な行動シナリオを描き、そのために必要な機能を洗い出し、優先順位付けします。
ただしARの場合、リアルな店員や空間とのインタラクションが重要なので、機能をアプリ・ハード・人(店員)などに分けて整理する必要があります。

資料例3)インタラクションデザイン – ユーザーフローを整理

梶谷氏:また先ほどの「Webサービスで書くようなワイヤーフレームをARの場合、どう制作するか?」という話でいくと

  • 「リアリティ シークエンス」
  • 「リアリティ スケッチ」

の2つをユーザーの体験シーンごとに書いて、時系列に整理していくことをしました。

リアリティシークエンスを活用し、チーム内で認識統一する

(リアリティシークエンスの概略図:梶谷氏のNoteより引用

梶谷氏:リアリティシークエンスでは、どういうインタラクションを通じて、次のシーンに移るのかを整理します。

また、 音の体験もARでは重要なので「今ユーザーが見てる視覚情報に加えてどのようなサウンドを出すのか?」 という点をチームの思考から漏らすことなく、認識を合わせるのに便利でした。

(実際にリアリティシークエンスを活用している風景)

第三者目線でAR体験を客観視するリアリティスケッチ

また、ARは現実環境の中でどう使うかが大事なので、第三者目線の「リアリティスケッチ」というもので三人称で見たらどういう風になっているのか?という視点も同時に定義しながら、チーム内でユーザー体験の解像度を上げていきました。

(リアリティスケッチの概略図:梶谷氏のNoteより引用

今お話ししたのはARだと特有のプロセスだと思うのですが、この辺りのプロセスを曖昧にさせず、かっちりフレーム化して社内外で認識統一出来たことがプロジェクトをうまく推進できた要因の1つだと思います。

工夫⑶ AR=総合芸術!越境するクリエイティブチーム創り

梶谷氏:最後に上手くいったと思う要素としては、外部の様々なクリエイターの人に参加してもらったことです。

例えば僕が担当したファッションARのプロジェクトでは、Webサービスやアプリではあまり聞かないと思いますが、サービスデザイン段階で知人のクリエイティブディレクターにお願いして入ってもらいました。

「きゃりーぱみゅぱみゅ」の増上寺のクリエイティブを手がけた長田 桂太さんがクリエイティブディレクターとしてプロジェクトに参加

サウンドデザイナーや建築家も巻き込む!

梶谷氏:あと ARって3次元の空間デザインだと思っているのですが、それってイコール建築なので建築家の人に入ってもらったりしてます。 

また先ほど音も重要と言う話をさせて頂きましたが、サウンドデザイナーに入ってもらって0から一緒にサウンド作ったり…。

そんな具合に越境する敏腕クリエイターも巻き込んで一緒に取り組む、みたいなのが弊社のARプロジェクトにおけるユニークな部分だと思うのですが、これによってかなりプロダクトの質が上がったという感じはします。

(※再掲)

苦労談⑴ 複数人参加型のARクラウドプロジェクトのデバッグに四苦八苦

小林氏:「AR City in Kobe」というARクラウド(※1)を活用したプロジェクトで苦労した話でいうと、普通のARアプリと違って複数人体験が前提のアプリケーションなので、デバックがめちゃくちゃ大変でした。

何故かというと、エンジニアが新規で機能を実装しても1人だと、iPadを両手に持って検証しないとマルチプレイの動作確認が出来なくて、それってつまり1人じゃデパックできないんです。

(※ARクラウド=複数人がAR体験をリアルタイムで共有できる技術)

MESON XR MAGAGINEより引用)

小林氏:そもそもARアプリのデバッグもロジックはテストなどできても、見栄えの部分は実際にビルドして実機で見て、っていうことをしないと行けなくて、結構コストが高いんですね。

それに加えて複数人でプレイするARクラウドアプリだと人の手が必要になるので、数人がかりで検証する必要があります。

ARのデバックって、ロジックの検証は一人でも出来るですけど、見栄えの部分ってどうしても実際にサービスを使わないといけないので、数人がかりでやる必要があって。

複数人が参加するARプロダクトの場合、デバックにかかるコストがスマホアプリとかに比べて異常に高いんですよね。

いろいろと工夫はしているんですが、まだそこに最適解がないという感じはありますね。

苦労談⑵ 本番の2日前にバグが発覚?

小林氏:他にも神戸市の展示ブースに2日前に入ってリアル空間を創りながら最終テストしたんですが、そこで初めて発生するバグとかあって大変でした。

それは大変でしたね…。想定外の要因とか、何か理由があったのでしょうか?

小林氏:要因は、ARアプリをデバックする現実環境の問題でした。

本番ではARを表示するために使うiPadを使い終わったらすぐに充電に回すようなオペレーションにしていたのですが、その時にiPadのカメラが机の面に接していると次のセッションでバグが発生するなんていうこともありました。

また、今回は5m四方のブースを設営してその空間をスキャンしてARを体験していただいたのですが、ブースのデザインも実際現場で制作されてからじゃないと本番環境でのテストできませんでした。

オフィスで完全に現場を再現することが出来ないので、現場で実際やってみたら想定の挙動と違う、みたいなこともあり、そのあたりはめちゃくちゃ苦労しましたね。

これまでのモバイルアプリだと画面の中でのみ検証すればよかったデバッグ作業も、ARだと現実の環境も整えて検証しなくちゃならないというのは大きな学びでした。


このツイートの裏側には、ARプロダクトならではのリアルな苦労体験が沢山あったわけですね…。

MESONの描く事業ビジョン

なるほど、今はR&Dの開発に注力されていらっしゃると思うのですが、御社の目指すビジョンを教えていただけますでしょうか。

事業ドメインとして将来的にどこを狙うという構想などあるのでしょうか?

梶谷氏:領域として将来狙ってるのは「AR」×「グローバル」×「toC」で、この領域だと「ソーシャルコミュニケーション」か「コマース」の2択だと思っています。

梶谷氏:ARにかなり早期に参入しているので、出来るだけデカいマーケットをちゃんと狙いたいなというのがあって。

Appストアのカテゴリーを見た中で縦軸に「市場の大きさ」横軸に「市場の立ち上がりの早さ」でプロットすると、右上にくるのが「コマース」と「ソーシャルコミュニケーション」なんですよね。

その他だと「アダルト産業」「軍事」「toB」などがあるんですが、そこは僕たちは狙ってないので、主に「コマース」と「ソーシャル」の2つを見ています。

2019年現在、「AR」×「toC」を狙う土壌は整った。

小林氏:この前AWEで発表されたnreal lightやARkit3の進化を見てると、ハード/ソフトともにかなり技術が進歩してきて「to C」でもきちんと正しいユースケースさえ見つければ、今からでも事業として成立させられる感覚を持ち始めています。

なので、 産業の成長を待つというよりは、自分たちからサービスインして市場を創っていく というのが、現状の経営方針です。

臨死体験で目覚めた、並行世界との差分への情熱

なるほど、ちなみにボラティリティが高い「toC」に拘るのは何故でしょうか?

梶谷氏:僕の場合でいうと海外で仕事したり、昔世界一周とかしている中でナイフ持った黒人に囲まれたりとかして、3回くらいリアルに死にそうになったことがあるですが、そうやって臨死体験すると「なんで自分で生きてるんだろう?」って生の意味を問うわけです。

き、急にすごい話です…。

その「何故生きてるか?」という問いの自分なりの答えとして「いかに自分がいる世界といない世界の差を増やすか」という一言に落ち着きました。

その差分を最大化するための手段として、この会社をやってるって感じなんです。

その自分が知覚したい差分というのは「to B」のように一部の人が知ってる差分じゃなくて、GoogleとかiPhoneとか、誰もが感じるような差分なんです。

だから「to C」で世界にインパクトを与えたいというのが自分の想いです。

ものつくりを通じて 世界中の人を驚かせたい

小林氏:自分も、日本が勢いがなくなっているみたいな危機意識があるのですが、その課題意識に対する解決としてARの「to C」はあると思っています。

あと、もともと自分が仕事とか開発をする上で生まれつきのモチベーションなのが「自分の周りの人を驚かせられる何かを作る」っていう部分なんです。

「これ作ったよ!」って発信して誰かに驚いてもらえるのが純粋に楽しいし、嬉しい。

それが自分の生来喜びになってて、梶谷に誘われるまで全くARとか興味なかったんですがARKitを初めて触ったとき、周りの友達や身近な人たちをを驚かすことも出来るかもしれないと感じました。

それからは寝食忘れてARに没頭してますし、世界中の人を驚かせるようなサービスを創りたいと思っています。

なるほど!

お二人が世界を目指す背景にある価値観がよくわかりました。

ARの未来を考えるパートナー募集中!

それでは、最後にAR関係者の皆さまへのメッセージをどうぞ!

梶谷氏:今後MESONでは、単発でプロジェクトを受けるというよりはパートナーシップを組んで毎月ARのサービス作りながらディスカッションをし、一緒に未来のユースケースを探索したり、サービスを出していくという事をしようと思っています。

単発のARプロジェクトでは仮説検証しきれない事も多いので、プロジェクト単位というよりはパートナーとしてARを活用する未来を一緒に考えましょうというのを今いろんな会社さんと進めているところです。

会社としてもそちらにシフトしていこうとしておりますので、この試みにのに共感してくださるR&Dの部門や会社さんはぜひお声がけください!

ご連絡お待ちしてます!

 

本日はありがとうございました!

おまけ:編集後記

最後までお読みいただきありがとございました。

XRの「知」を共創するメディアのコンテンツとして、社内の知見を惜しみなく公開してくださったMESONさんには本当に感謝しかありません。

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企業の取材も受け付けておりますので、プロダクトストーリーやコーポレートビジョンを伝えたい方などいらっしゃればTwitterのDMお待ちしております!

本日はありがとうございました。


XR-Hub 編集部