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【ActEvolve・CEO取材】バーチャルシンガー・YuNiのVRライブの見所と『VARK』開発秘話に迫る


XR-Hub編集部による、XR業界のイノベーターや先駆者達を取材する「XR Innovators Talk」シリーズ第2弾。

今回はVR×ライブハウスをテーマとしたサービス『VARK』などのVRコンテンツを提供する、株式会社ActEvolveのCEO加藤卓也氏(以下、加藤氏)にインタビューしました。

今回は12月24日(月・祝)に行われる、世界初のバーチャルシンガー・YuNiによるVRライブ「YuNi 1st VR LIVE! 〜VeRy Merry X’mas〜」の魅力から、ActEvolve社の掲げる今後のビジョン・組織論までたっぷりお届けいたします。

YuNiによるVRライブ「YuNi 1st VR LIVE! 〜VeRy Merry X’mas〜」の見どころ

XR-Hub編集部)まずは、早速ですが12月24日のライブの詳細について教えて頂けますでしょうか。

※以下、斜体青文字箇所は編集部の質問。

12月24日(月・祝)20時から、大人気バーチャルシンガー・YuNiのファーストライブを、『VARK』という弊社のVRライブ空間で行います。10月に発表されたオリジナルソング「透明声彩」をはじめ、YuNiが発表してきた大人気楽曲を披露予定のライブになっています。

YuNi:世界一のバーチャルシンガーを目指すバーチャルYouTuber。人気の動画は430万再生を超えている。2018年10月には、プライベートレーベル“yunion.wave”を立ち上げ、第一弾オリジナル楽曲「透明声彩(とうめいせいさい)」をリリースした。

透き通った美しい歌声を持つ実力派の彼女の、伸びやかで多彩な表現力を余すことなくお届けできるかと思います。

ありがとうございます。YuNiさんはYouTubeにアップされている曲を聴けば聴くほど、本当に歌手として秀でた才能をお持ちだと感じます…

今回のライブは、どのような演出になっているのでしょうか?

詳しくはお伝えすることができませんが、「VR」と「ライブ」双方の切り口から最大限YuNiのライブを楽しんでもらえるようになっています。

まず、VR空間でありながら「ライブの一体感」を体験できるという点。「ペンライトを振る」「アンコールする」「拍手喝采」など、ライブ独特の「お客様全員で一体となって盛り上がる雰囲気」をVR空間で表現できるようにしました。

そして「VRならでは」という点だと、仮想空間だからこそ成し得る演出を要所に詰め込んでいます

例えば、「ライブの最中に歌手がこんなに近くで、こんなことしてくれるの?」というような演出。

せっかくVR空間のライブに来てもらうわけですから、お客様にはYuNiの魅力を最大限味わって頂きたい。

そんなことをひたすら考えて、「お客様にVR上でもライブそのものを楽しんでもらうにはどうしたら良いか」「”YuNi”を感じてもらうにはどうしたら良いか」の2点を追求し続けています。

楽しみにしていて下さい。

なるほど。ライブそのものの楽しさはVR空間においても表現しつつ、YuNiさんそのものの魅力も余すことなく感じてもらえる仕掛けにしているわけですね。

『VARK』のライブはOculus Goで!高品質かつ低価格なVRゴーグルで最高の体験を届ける

加藤氏取材

今回のライブをはじめ、『VARK』はOculus Go使用して体験するようですが、なぜOculus Goなのでしょうか?

理由は1つです。バーチャルアーティストの皆様のライブやイベントをより良い形で、より多くの人に届けるためです。

VRのライブを他のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を使ってやろうとすると、まず20万ぐらいするPCが必要で、加えて10万弱するVRのゴーグルが必要なんです。中学生や高校生は買えないですよね。

Oculus Goは、利用するときにPCがいらないスタンドアロン型だし、価格も2万円代で多くのユーザーにとって手が届きやすい。一方で、体感できるVR体験自体はかなり高品質です。液晶画面の開口率は高いし、画質も液晶パネルで作られているため見やすくなっています。

※Oculus Go:Oculus社が展開するVRヘッドセットで、PCやスマホなどの外部デバイスへ接続することなく、ヘッドセットのみでVRを体験できる

※スタンドアロン型VRヘッドセット:PC接続などが不要で、他の機器を使わず単独で動作するVRヘッドセット

なのでOculus Goを通じてVRライブを行うことで、事前の準備の手間や立地による制約から離れ、より多くのお客様にライブ体験を届けられるし、「イベントのクオリティ」でも高いものが届けられるのではないかと考えました。

そうなんですね。確かにOculus Goはユーザー視点でのコストパフォーマンスという点ではかなり優れていますよね。

『VARK』開発の裏側~直面した2つの困難とは

加藤氏取材

ただ、Oculus Goを選ぶことで開発側としては様々な苦労があったのではないでしょうか?

めちゃめちゃありましたよ(笑)。

大きく分けると2個あって、フロントとバックエンドの話になります。

フロントっていうのが要はVR映像・ビジュアルの部分です。

前提として、Oculus Goって、実はひと昔前のスマートフォン程度の性能しかないんですよ。iPhoneXよりスペック低いんです。そのスマートフォンより低スペックなデバイスの中で3Dモデルを動かす、という処理が非常に大変です

いわゆる「最適化」と呼ばれている作業なのですが、スマートフォン以下のデバイスで3Dかつリッチな表現をするための開発は、腕利きのエンジニアを何人も抱えてないとできない。

それが出来なければHTC ViveOculus Riftといったスペックの高いに頼らざるを得なくなってしまう。これは避けたかったので、Oculus Goで最大限リッチな演出・表現ができるように尽力しました。

なるほど、ディスプレイの解像度が高くても、ハードとして比較的低スペックであるOculus Goで美しい映像を表現するのが非常に難しい、ということですね。

そうです。

対して、バックエンド側での話ですが、開発のネックになるポイントが通信大きさでした。

VR映像ってスマートフォンとかと通信量が全くうんですよ。VRって、身体中にモーションセンサーをつけて全身の動作の信号を送って、映像をリアルタイムで動かすんですね。

例えば、「右手をあげろ」といった指示ではなく、右手の角度がこうで、上がった速度がこうで、位置関係がこうで、みたいな情報をリアルタイムで飛ばさないといけなので、通信量が尋常じゃない。

スマートフォンだったら100万台でも耐えれるようなサーバーが、VRにしちゃうと1000台も耐えれないぐらい、通信量の差があります。なので、バックエンド側のサーバー開発にもそういったVR映像ならではの苦労点がありました。

そんなに違うんですね。

他に追加で挙げると、Oculus Goの通信回線ってWi-Fiを使うんですよね。デバイスをコードでネットに接続する必要がないんです。

そして、Wi-Fiってご家庭によって回線の強さが全然違うんです。そのあたりの通信量の計算は非常に苦労しました。

「回線が弱いフリーのWi-Fiは基本使わないで下さい」って注意書きしているのに、ユーザーさんが使ってしまうことがあるんですよ。その時、本来の通信であれば1秒で済むところがフリーのWi-Fiであれば3秒かかってしまうことがあります。

「1秒で済むはずの通信が3秒かかる」ってことは、通常の3倍の時間通信を送り続けなければならないので、3倍の通信量になるんですよ。

こういった状況が普通に起こりえます。なので、今回のVRライブに来お客様は、絶対にご家庭にあるWi-Fiを使ってください(笑)。

なるほど。そんな所まで苦労されていたとは…

ユーザーさんが利用規約を守ってくれない、というのは今後多くの企業が直面する可能性がありますね。

”モノづくり”にだけ専念して欲しい~徹底したクリエイターファーストな組織作り

加藤氏取材

そのような負荷がかかる開発現場ですと、エンジニアさんに対する開発時のケアが非常に重要な気がします。

もし御社で心がけている”組織哲学”のようなものがあれば教えていただけますでしょうか。

一つ挙げると、「クリエイターファースト」になります。

エンジニア・クリエイターには「モノづくり」に最大限集中してほしいですし、そうしてもらえるような環境を用意しています

まず、働き方という観点から言うと、出勤時間・働く場所は自由です。最も自分がパフォーマンスを出せるように、場所や時間を選んでもらう、という形ですね。

もちろん昼寝も自由です。当初は「イスで寝てOK」としてたんですが、イスでは寝づらいという意見が出たので、布団もいくつか買いました。

後、「業務中にシャワーを浴びたい」という声が上がったので、オフィスから徒歩2分の社宅を設置しました。なので、業務中でもシャワーを浴びれますし、そこで寝ることも可能。

加えて、雇用形態も自由ですね。弊社では採用時に正社員・業務委託を選択できます。

税金の申請等の手続きを自分で行いたくない方は正社員で良いし、自分で行うのも苦じゃないし、「よりフリーに働きたい」という方は業務委託でも全然OKです。

ただ、雇用形態でどちらが偉いか、という差は一切ありません。正社員は多くいますが、業務委託の方がプロジェクトのリーダーをやったりもします。

とにかく、「ものを作る」こと以外のあらゆる労力を全て取り払いたいんですよね。

移動、掃除、洗濯、入浴、睡眠。それらを全て解決するのが「会社」だと思っていますし、異常なまでのクリエイターファーストでいるよう心がけています。

なるほど、ありがとうございます。プロダクトの質はクリエイターが全てですし、非常に参考になるご方針です。

開発のプロジェクトって、「企画」「エンジニアリング」って結構時間の使い方が異なると思うのですが、エンジニアの方が企画も希望された場合、どのようにされていらっしゃいますか?

そこも自由です。

やりたいことをやっている時が人間一番パフォーマンスが上がるはずなんですよ。なので、企画をやりたいときは企画にも参加してもらいますし、エンジニアリングだけやりたい方にはエンジニアリングだけに専念してもらいます。

クリエイターの方には「納得感をもって好きなようにモノを作ってもらう」というのが私の考え方です。その他の、資金やリソースの調達、スケジュール管理やマネタイズはプロデューサーやディレクターの仕事です。

ActEvolveのメンバーが大事にしているキーワード【メリハリ×ならでは】

加藤氏取材

開発チームやプロジェクトの中で、大事にされている価値観やワードはありますでしょうか?

二つありますね。「メリハリ」と「ならでは」です。

まず、「メリハリ」ですが、ライブ演出を行う上でストーリー構成の「緩急」を非常に重視します

例えば、VR空間だと、極論海の中や宇宙空間といった特殊な空間でもライブできるじゃないですか。それって一見非常に面白いように感じますが、30分や40分そういったシチュエーションだと飽きられてしまうんですよ。

なので、30分間は普通のライブをして、10分間だけそういった特殊な演出にしてみる。その10分の演出を際立たせたいし、とにかく見て、感動してほしい。そのためには前後のストーリー性が肝になります。

そして「ならでは」ですが、「VRならでは」という点はやはり超重要です。

先ほど今回のYuNiさんのライブの見所として出てきたポイントですね。

そうです。

バーチャル上の空間でライブするわけですから、VRで表現しなければいけないものはVRでしか起きえないものだと思っています。

リアルに勝てない所をどれだけ追求しても、リアルには勝てないじゃないですか。実際にアーティストのライブに足を運んだ時の、会場の独特な一体感とか凄まじい高揚感とか。

ただ、実際のライブにはそういった良いポイントはあるけれど、お客さんにとって良くないことも起きるはず。アーティストが前の人に隠れてなかなか見れない、近くの人とぶつかってしまうとか。

そういう現実空間じゃ解決するのが難しい問題を解決して、純粋に「アーティストのパフォーマンス」を楽しんでもらう取り組みや、アーティストの世界観を最大限生み出すことこそが「VRならでは」なんじゃないかと

空間のデザインやライトの演出、全体の構成にあらゆる「VRならでは」を詰め込む。今回のYuNiのVRライブはそれを表現した一つの作品になっています。

加藤氏の描くビジョン~VRの力で「今だから輝けない、才能ある人」を輝かせたい

加藤氏取材

御社が掲げるビジョンや今後の展望についてお聞かせ頂けますでしょうか。

この会社を立ち上げたときの事業コンセプトが、「今の時代には輝けないが、才能ある人を応援する」です。

今この時代に未だ日の目を見れていないけど、才能があって、まだ才能を世に出せていない。ただ、VRをはじめとしたテクノロジーの力で新しい世界になった時に、初めて生まれる才能ってあるじゃないですか。

才能があって、努力もしていながら報われてないっていう人々に対してコミットしたいんです。そのための事業をやりたくて立ち上げたのがActEvolveであり、『VARK』もそのビジョンの中の一つです。

僕はバーチャルアーティストの皆様はある種リスクをとって活動されてる方だと思っていますし、強く応援していきたい。

その為により良いステージを用意してあげたいし、魅力が多くの人に最大限伝えられるように仕掛けていきたい。

これが私たちの想いです。

素晴らしい価値観だと思います。

今後も、バーチャルアーティストの皆様が活躍できるフィールドづくりを徹底して行っていきます。

観点としては「認知」と「ロイヤリティ(忠実性)」の二つですね。

先ほどお話ししたことと大分重複していますが、バーチャルアーティストの皆様を後押しするには、やはり中高生をはじめとした若年層・マス層へのリーチ手段を持っておく必要があります。

例えば、どれだけ質の高いライブができるとしても、それが高価格なVRヘッドセットでしか実現できないのであれば、体験できる層は限られてしまうじゃないですか。なので、『VARK』のVRライブは基本デバイス問わず行えるようにしています。

今伸び悩んでいるバーチャルタレントのが物凄いVRライブを行って、一気に上がっていく。そんなことが今後あるかもしれない

そういったことを実現させていくためにも、弊社はマス向けのプロモーションも可能なプロダクトを持ち続け、タレントさんの「認知」という面をサポートできればと考えています。

そして「ロイヤリティ」ですが、バーチャルアーティストの皆様世界観は忠実に再現します

事務所やご本人のご要望として「手の届かない歌姫」を表現したければそう表現しますし、ライブ独特のインタラクティブな雰囲気を表現したければ勿論その世界観を表現します。

タレントさんの願いは、どういったものであっても叶えられるような作りにしていきます。

なるほど。ちなみに、今後バーチャルタレントの方のライブを行う際、どういった事務所やタレントさんのライブを行っていきたいでしょうか?

やはり本気で、命かけてやっている事務所さんとやりたいですね。

最近では本当に多くの企業がVR事業やバーチャルアーティストの運用事業に参入していますし、中には正直「ブーム」という理由で入ってきている所もあります。

これからより一層競争は激しくなりますし、命を懸けて事業を行っている所でなければ生き残れないと感じています。

ライブのお話しを進めるにあたって、事務所の方やクリエイターの方、経営者の方が本気で事業に取り組んでいるな、という点は非常に分かりますし、実際にそういう会社の方と手を取り合って事業を進めていきたいです。

加藤さんの事業にかける熱い思いが非常に伝わってきます。 

12月24日のライブがますます楽しみになりました!

本日は、ありがとうございました!

【編集部Pick Up 本日の名言まとめ】

  • クリエイターには”モノづくり”にだけ専念してもらうべし。
  • プロダクト開発においては演出や構成の「メリハリ」とVRの「ならでは」を意識する。
  • 認知とタレントのロイヤリティを追求し、質と量の両面を担保することがバーチャルタレントの土台を作る。

いかがでしたでしょうか?

今回取材させて頂いたAct Evolve社が提供しているVRライブ空間『VARK』にて、12月24日(祝)にバーチャルシンガー・YuNiさんがライブを行います!

Oculus Goをお持ちの方は、ぜひ一度遊んでみてください!

YuNiのライブ詳細チケットはこちら

『VARK』公式ページはこちら

また、ActEvolve社では新しいブームを巻き起こすような製品を共に作り上げていく仲間を鋭意募集中です!「まずはお話しを聞いてみたい」という方でも構いません!興味をお持ちの方は、お気軽にお声掛けください!https://www.wantedly.com/companies/actevolve#_=_

最後に、XR-Hubでは、「XRの知を共創する」というコンセプトに共感して頂けた方の取材を受け付けております!

自社の事を発信したい方、プレスリリースとしてプロダクトストーリーを伝えたい方などのご応募お待ちしてます!

取材依頼はこちらから。


加藤氏

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