【Spatial Computing Lab創設者対談】大学生AR/MRコミュニティ創設に込められた想いと展望


学生が主体となりアイデアを形にしていくAR/MRクリエイティブサークル「Spatial Computing Lab(以下、S.C.L)」。

そんな彼らの実態を紐解くべく、今回はS.C.L所長の田中朗士さん、副所長の松迫翔悟さんに取材させて頂きました!

この記事では、S.C.Lの創設者2名が

  • S.C.L参加者の特徴
  • S.C.Lを立ち上げたきっかけ、想い
  • S.C.L1期生で創作されたコンテンツの紹介
  • S.C.Lの将来展望

について語ってくれました。AR/MRの学生クリエイターを取り巻く今がわかる内容となっておりますのでぜひご覧ください!

S.C.Lを率いる田中氏、松迫氏の自己紹介

本日は宜しくお願いします。まずはお二人の簡単な自己紹介からお願いします。まず田中さんお願いします。

田中:株式会社x gardenの田中朗士といいます。S.C.Lでは所長をやらせていただいています。

(田中朗士さん S.C.Lでは所長を務める)

役割は、S.C.L全体の方向性を定めたり中間発表や最終発表などのイベントのプロデュース、協賛企業との折衝など行っています。

ありがとうございます。では次に、松迫さんお願いします。

松迫:松迫翔悟と申します。

S.C.Lでは副代表として担当しています。

具体的には運営の実務面であったり、所属する学生たちがより活発にコミュニケーションを行い、アイデアが形になるような仕組み作りなどを推進しています。

(松迫翔悟さん 東大VRサークルUT-virtual立ち上げメンバーの1人)

他にも学生時代にUT-virtualという東大のVRサークルの代表やっていたので、その時の経験も踏まえてコンテンツ制作やUX設計のサポートをしています。

学生向けAR/MRクリエイターコミュニティ「S.C.L」とは?

それでは、S.C.Lとはどんな組織なのか詳しく教えて下さい。

S.C.Lとは学生向けAR/MRクリエイターコミュニティ

田中:S.C.Lは簡単にいうと 大学生向けAR/MRクリエイティブコミュニティ です。

大学生を中心に毎回、約10人のメンバーが3~4カ月の期間でプロダクトを制作する活動をしています。

もちろん作って終わりではなく、最終的には外部の方々が体験することを前提にした展示会も用意しているため、この展示会でのアウトプットを1つのゴールとして活動しています。

1期生のアウトプットでは、来場数2万人を超えるDOCOMO Open House 2020に学生として出展。なんと当時のMagic Leap CEOのRony氏が立ち寄ってくれた。

(S.C.L1期生の集合写真)

S.C.Lは「実社会に浸透するAR/MR」を探求するコミュニティ

多くの社会人や一般の方に体験してもらう仕掛けがちゃんとあるんですね。

それでは松迫さんに質問ですが、UT-virtualとS.C.Lとでカラーの違いはありますか?

松迫:そうですねUT-virtualも文化祭に向けてチームを組んで作品制作をしていくというプロセスは近いですが、アプローチが少し異なるのかなと思っています。

UT-virtualは東京大学のサークルなのでややアカデミックな、それこそ大学の教授にご協力いただいたり、大学と連携してコンテンツ制作をするような側面があります。

一方でS.C.Lには 「実際に世の中で利用されるサービスを作ろう」というマインドが強いように思います。 

AR/VRサービスって内輪消費が多いと感じるのですが、そういった内輪や界隈で終わらない「しっかり社会に根差すサービスを作りたい」という学生がS.C.Lの参加者の中には多いイメージがありますね。

後ほど、紹介しますが1期生が作った「手話MR」なんかは社会課題を解決する素晴らしいサービスだったと思います。

なるほど、アカデミックなUT-Virtualと社会実装を意識したS.C.L。2つとも違って、両者にしか出せない良さがあるわけですね。

「チャレンジスピリッツ」と「圧倒的な創作意欲」がS.C.Lメンバーの特徴

メンバー個人ではどういった特徴の学生が多いですか?

田中:S.C.Lは誰でも入れるオープンなコミュニティではなく、カジュアルな面談を行って、S.C.Lらしさがある人だけが参加できるクローズドな少数精鋭コミュニティです。

そしてカジュアル面接の中では2つ、大事にしている部分があります。

 1つ目はチャレンジスピリッツが旺盛であること。 

AR/MRはまだまだ未開のテクノロジー領域ですが、この未知の世界に対してためらいなく飛び込んでいけるマインド、そして分からない部分があっても自分なりに工夫しながら乗り越えていく知的根性がある人が多いです。

 2つ目は技術的な部分ですが「創作意欲」 

今までAR/VRなどのXR作品に触れてきて、実際に自分で何かしら形してきた過去がある。そんな創作意欲溢れる学生はS.C.Lにとてもフィットすると思っています。

S.C.L創設のきっかけ

S.C.L創業期のお話を聞きたいのですが、立ち上げたきっかけを教えて下さい。

AR/MR学習を阻む高価なデバイスの壁。その障壁を無くす。

田中: 学生AR/MRクリエイターに学習機会を提供してあげたかった という点に尽きると思います。

現状AR/MRデバイスって数十万円なので学生が簡単には手を出せないんですよね。

学生からすると価格が一定の学習ハードルとなっているのです。

そして学習者が少ないということは、開発で困った時に助けてくれる仲間も見つけづらい…課題も同時に生んでいます。

このような状態では、AR/MR開発にモチベーション持つこと自体難しい。

そういった課題を解決するために立ち上げたのが、AR/MRデバイスと作業スペースのシェアを前提にしたS.C.Lなのです。

なるほど、「開発環境」と「仲間」の2つが揃うコミュニティは学生にもニーズがありそうですね。

田中:あとは社内的な話になりますがx garden代表の松谷が、教育事業に対してかなり情熱的だったことも背景としてあるかと思います。

今でこそ運営統括は私たち2人が行っていますが、S.C.Lの初期プロデュース自体は松谷が陣頭指揮を取ってましたし。

x gardenは「人の創造性と主体性を解放すること」をテーマにしている企業なので、コーポレートアイデンティティを体現する営みとして、S.C.Lのような大学生コミュニティは松谷もずっとやりたかったようですね。

S.C.Lはx gardenのビジョンや存在意義を体現する営みの1つだったのですね。

根底にあるのは学生起点。チャレンジャーへの支援は惜しまない

メンバーの才能や創造性を引き出すためにお二人が意識していることはありますか?

松迫:僕たちはあくまでサポートとして、学生がやりたいことを思いっきり楽しめる環境を整えたいと考えています。

例えば先日、S.C.Lのメンバーに「ボリュメトリックキャプチャ技術を使って、ダンスをトレーニングできるようなコンテンツ作りたい」と言われました。

ホログラム技術ですね。

松迫:はい、偶然そういうプロジェクトが社内で動いていたので、その装置を使えるように社内調整しました。

彼ら自身がAR/MRで表現したいことのために自分からキャッチアップして動いているので、すごく魅力的なメンバーがそろっているんだなと思った瞬間ですね。

S.C.Lメンバーが作業をしたいと思える作業空間を提供

他にここがS.C.Lの特徴だ、というところはありますか?

松迫:個人的に思うのは、カフェ(作業場)の居心地が良い…という点も推しポイントです。

(渋谷駅徒歩5分のXR-Hub Cafe S.C.Lの活動拠点)

これはお世辞とかではないのですが、VR/AR/MRをやってる会社のオフィスってちょっとギークなイメージがあるんですよね。

でもこのXR-Hub Cafeは過ごしやすいですし、空間もゆったりしているのでリラックスして作業できる空間だと思います。

渋谷から徒歩5分で来れるので、アクセスも良いですしね。

田中:確かに、初めて来た学生は「思ったよりきれいで、ぜひここで作業してみたい」と言ってくれることが多いですね。笑

運営者がおすすめするS.C.Lの創作コンテンツ

ちなみにS.C.Lメンバーが創作した過去作品で、個人的に印象に残ってる作品はありますか?

柔軟な発想が 面白い作品を生み出す

松迫:UT-virtualでもそうなのですが、 ビジネス目的でないところに 面白いコンテンツが生まれる と思っています。

S.C.Lって、実社会での利用をイメージしながら実験的な発想でものづくりをする場なので、すごく面白いものが多いです。

(docomo OpenHouse 展示会 S.C.Lブースの様子)

田中:自由な環境であるが故に、尖ったものが生まれるのは確かに感じますね。

松迫:例えば先ほど少しご紹介した1期生の「手話MR」はビジネスにはしにくいけど、今後長期的に見ると絶対必要になってくるコンテンツだったと思います。

社会人からすると、「それってビジネスになるの?」とアイデアフェーズで一蹴されるような内容でも、学生団体だからこそ形にまで実現出来る。

なるほど、ビジネス起点じゃなく、純粋にあったら良いな…を形にできるのがS.C.Lの強みであると。

松迫:そうですね。今、学生だからこそできることをメンバーには取り組んで欲しいなと思います。

S.C.L運営2人が選ぶ1期生のおすすめコンテンツ

では、1期生の最終発表時に、お二人の中で特に面白かったっていうコンテンツを教えて下さい。

「ARVJ(ビデオジョッキー)」で空間に浮かぶ映像をミックス

松迫:「ARVJ」っていう作品が、僕は一番好きでした。

製作者→ Main : LAKU / support:  Yuya/ Yoha

Magic Leapを使ってVJ(ビデオジョッキー)をする作品で、本来PCを前にして操作が必要なことを、Magic Leap一つで操作することを可能にした作品です。

これを見た瞬間、 実際これは実用性が高いなと直感しました。 

いわゆるSFの映画のような、空間に何個も映像画面が出て、物理的には実在しないツマミとかボタンをコントローラーで操作して、映像を混ぜるんです。

実際にMagic leap内でAR空間で作った映像をプロジェクターに出力するっていうところまで作成してました。

ハードウェアまで実装対象に入ってて、この人たちすげーなと。(笑)

元々VJに興味があって、実際にVJワークショップにも通ってるメンバーが制作したプロダクトなのですが、現状のハードウェアで物足りないと感じた部分をARで補完するというアプローチですね。

現実世界の「物足りない」みたいな不満から始まってると…。めちゃくちゃ面白い発想ですね。

「Spatial History」教育分野での活用を視野に入れた教育コンテンツ

田中さんはお気に入りの作品はありますか?

田中:僕のおすすめとしては、「Spatial History」です。

僕も知らなかったんですが、大阪城って実は歴史上、5回も破壊と創造を繰り返してるらしくて、この「大阪城の破壊と創造の歴史」をARで体験するという野心的な試みです。

体験してもらったら分かるのですが、しっかりインタラクティブな学習コンテンツになってますし、教科書で学ぶより断然面白い。

従来の教科書で勉強する方法より遥かに記憶に定着する教育プロダクトだと思います。

たしかに、博物館とかに置いたり教育にも使えそうですね。

そうですね、まだ詳しくは言えないのですが実際S.C.Lで作ったものをリアル空間に展示する話なんかも進んでいたりしてます。

産学連携ではないですが、彼らの制作物を社会に知ってもらえる取組や仕組み作りは今後もしっかり行っていきたいと思っていますね。

S.C.L1期生の創作した作品についてはこちら

【Spatial Computing Lab】若手XRクリエイター集団の第1期生に迫る!

S.C.Lの今後の展望|目指すはARクリエイターの登竜門

では、現在活動中の2期生の今後についてお聞かせください。

「S.C.L出身」がキャリアで有利になる状態を作っていきたい

田中:現在活動中の2期生に関しては、お客さんのいる展示会で彼らの作品と彼らの名前が広まり、何かしらキャリアとしての飛躍に繋がったら良いなと思っています。

S.C.Lは引き続き、誰でも入れるオープンなコミュニティではなく、あえて少数精鋭のクローズドなAR大学生コミュ二ティとして育てていくつもりです。

「未踏ソフトウェア人材」のように「S.C.L出身です」と人事に伝えるだけでXR人材市場で評価されるようなコミュニティに育ててていくのが、僕らのミッションですね。

(S.C.L2期生 MTGの様子)

AR/MRの優秀な学生はここにいる!と有名になればコミュニティに所属する価値が増大する循環が生まれそうですね。

松迫さんはいかがですか?

松迫:今、学生のAR/MRのイケてる学生集団って僕の知る限りでは無いと思います。

おそらくこのまましっかり積み重ねていけば、間違いなく 業界で一番のAR/MRのクリエイターを輩出する集団になるのではないでしょうか。 

ここで出会った仲間同士で起業してチームラボのようになってもいいと思いますし、あるいはS.C.Lを卒業して数年後、卒業生同士が集まってペイパルマフィアじゃないですけど、何か大きなことに挑戦する人たちになってほしいな、という期待がありますね。

田中さんと松迫さんの卒業生や在籍生に対する熱い期待がひしひしと伝わってきました。ここから未来が生まれる。そんなコミュニティなんですね。

まとめ|大学生AR/MRクリエイティブ集団「S.C.L」に今後も注目

最後までお読みいただきありがとうございました!

現在2期生が活動しているSpatial Computing Lab(S.C.L)の創設者のお二人にインタビューを実施しました。

AR/MR業界の若手クリエイターを支援するために創設し、学生起点の自由な発想でARコンテンツを制作するクリエイティブ集団「S.C.L」に今後も注目です。

ぜひ身近にAR/MRクリエイターに興味のある若者がいれば、S.C.Lを紹介していただければと思います。

また、S.C.Lの最新情報、動向は公式Twitterをフォローしてチェックしてくださいね。


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