ARISE#1 レポート|Media Session:2019年メディアから見たARのトレンド(久保田瞬氏)
XR-Hubによる、クリエイター向けリアルイベント速報コンテンツ!
今回は8月3日(土)にMESON社主催で行われたARイベント「ARISE#1」の様子をお届けいたします。
ARISEは「日本発のグローバルARコミュニティを創る」こと、そして「業界業種を超えて、より多くの人々がAR技術で価値を創造する」ことを実現するために発足した日本発のARコミュニティイベントです。第一回では大きく
- 業界を牽引する気鋭のクリエイター・経営者たちによるトークセッション×5
- 最新のデバイス体験会
- 参加者の交流会
といったコンテンツが開催されました。
司会はもちろんこの方!
通称「ARおじさん」、MESON社COOの小林佑樹氏です。
そして、ARISE最初のセッションは、MoguraVRというメディア編集長であり、海外・国内のVR/AR情報に精通した久保田瞬氏から始まりました。テーマは「2019年のARを振り返り、今後のARを考える」。
今後のARの浸透を「VRとの比較」「技術的な側面(ハード・ソフトの両軸から)」「市場的な側面」の3点から考察する内容でした。
本記事では久保田氏のセッション内容を紹介していきますので、ぜひ最後までチェックしてみてください!
ARとVRの広がりの違い
まずは簡単に、VRとARの違い・共通点から。以下の表がサマリになります。
前提の概念的な説明になりますが、AR/VRの共通点は「脳を騙すもの」であることで、違いは
- AR:物理的に存在しないものを存在していると思わせる
⇅ - VR:現実ではない別の仮想空間に没入させる
というもの。
よって、よくある問いで「ポケモンGoはARか?」というものがありますが、久保田氏曰く「ポケモンGoは十分にARと定義できる。本来存在しない仮想のモンスターを、プレイヤーたちに存在するかのように思わせることに成功している。」とのことでした。
また、普及の速度はARの方がVRよりも早い(ARは全世界で10億人以上が体験している一方、VRは数千万程度)ものの、ウェアラブル端末自体の普及はVRの方が進んでいる様子。
この背景としては現在のデバイス価格が大きく起因しています。
本格的なVR/AR体験に必要なヘッドセットを購入する際、VRヘッドセットは数千〜数万円程度で購入できる一方、ARデバイスは十数万〜数十万円かかってしまうため、価格差によりウェアラブル端末はVRの方が普及しているのです。
とはいえ、スマホカメラアプリの一機能としてAR体験可能なものが増えてきているため、
- 体験のクオリティを問わなければ、広くARが普及していると言える(スマホAR)
- ARというより「アプリ内のカメラの一機能」としてARが登場。「AR」というワードは出ていないが体験自体は浸透している
という点はARの浸透を表す特徴的なポイントです。
デバイスの普及と市場規模予測
ここからは、AR/VRの現在・今後を市場の観点から解説する内容。
先ほどお伝えした通り、ARデバイスと比較すると、VRデバイスの普及は広く浸透している傾向にあります。
スタンドアロン型デバイス「Oculus Quest」に代表されるように、ハードのスペック改善(解像度の向上など)と価格の低下が同時に起きており、VRは今後急速に一般消費者に普及していくと予測されます。
よって現状VRの方がARよりも市場規模は大きいことは間違いありませんが、 時間は要するもののAR市場も間違いなく成長し、2025年にはVRとほぼ変わらない市場規模にまで発展していくようです。
カオスマップの図に見られるVR/AR両業界の特徴
ここからは、VR/AR両市場の参入プレイヤーのお話。各産業のカオスマップをベースに解説していきます。
VRハード・プラットフォーム領域への参入は、すでに障壁が高い
一番下の企業群はVRハードウェアのメーカー群で、中央はコンテンツプラットフォームを運営する企業群ですが、この2つはすでに勝ち組の企業が大方定まっているのが現状。
すでに大企業化した企業が大半を占めており、 VRデバイス、プラットフォームの領域はソフトの領域と比較するとスタートアップの参入難易度が高いと考えられます。
AR領域は、未だカオスな状況
VR市場ではプレイヤーが淘汰されつつある一方、 ハード・ソフト・プラットフォーム共に新規参入企業が多く、未だ混沌としているのがAR領域になります。
コンシューマー向けのハードの普及に時間がかかることもあり、爆発的な売り上げを挙げている企業は多くない様子。
ハード・ソフト共に今後も市場内での参入・激しい競争が予測されます。
モバイルARの急激な盛り上がり
VRと比較するとデバイスの普及は遅れるという報告はあったものの、現在モバイルARに関しては急速な広がりを見せています。
昨今のいくつかのニュースからその様子を読み解きます。
❶, なじむAR
ここでの「なじむ」とは、あらゆる日常シーンで登場するARの「違和感のなさ、面白さ、便利さ」などをさします。
現状モバイル端末でARを体験するにはスマホかざし、位置や角度の認識精度が必要である以上「なじむ」とは若干言い難い部分はありますが、SLAM技術や顔認証の精度向上により徐々に「ARがなじみつつある」と言えます。
❷, モバイルARの急激な盛り上がりの背景
モバイルARは2017年のARKit以降に加速しました。
その後GoogleもARCoreもリリースし、両者継続的にアップデートされたことでソフトウェアの開発も盛んになりつつあります。
また、ポケモンやハリーポッターに代表されるような「IPとののコラボ」や、SnowやSnapchatのように「SNS映えするアプリ」の作例が非常に増えてきており、技術的にもコンシューマ向けの浸透という観点でも盛り上がりを見せています。
❸, ウェアラブルARの展開は?
上記画像3グラスに代表されるように、ウェアラブルAR端末の普及も現実味を帯びてきています。
- HoloLens:昨年アップデートし、Hololens2がリリース。スペックが大幅に改善し、toB向けの普及は一層加速する見込み。
- nreal light:AWE2019で発表され、一気に話題になったデバイス。わずか$499の本格ARグラスで、来春の一般発売が発表されています。
- Magic leap:一般消費者向けARデバイスの代表例。どうアップデートされるかが注目を集めています。
ちなみに、話題に事欠かないAppleですが、久保田氏は「正直なところ、リリースの時期は読めない。価格・機能の両面がtoCに浸透する水準であると判断できたタイミングで一気に仕掛けてくるのでは?」と話していました。
※AWE2019では、AppleはARデバイスのリリースの話題が一切無いにも関わらず来場者の高い関心を集めていたとのこと。Apple社に寄せるユーザーの期待は高いようです。
❹, 着実に進む、企業向けのAR普及
コンシューマーとは異なり、ハードの価格が高くても費用対効果が期待できれば普及するのがtoB領域。
TOYOTAのHoloLens導入をはじめ、 すでに導入事例が多く出ています。
WorkLink社は、様々なデバイスに対応し、価格や機能面でクライアント側のニーズに最適化できる「Scope AR」というSaaS型のサービスを展開しているとのこと。
具体的になり始めた未来
最後は、よりVRやARが「日常のシーン」として浸透していく未来像について。
現在は、VR/ARは日常的な体験とは言い難く、「非日常的な何かを行うために、使用するツール」という状況ですが、デバイスが普及すると、デバイスの使用は日常的になり、「日常的に必要な(VR/ARの)コンテンツを作成する」ということがベースになります。
例えば、以下のスライドは未来の会議のワンシーン。青く描かれているものがバーチャルで、黒く描かれているものはその場に物質的に存在する人・ものになります。
あらゆる日常のシーンに「実在」「仮想」が入り混じる未来では、現在はプロダクト設計のベースではない「3次元UIの設計」が制作における必須項目となってきます。
※実在と仮想を対極に、仮想の濃度を4分割し概念化したのが上の図です。「拡張VR(Augmented Virtual)」は今あまり見られていない、「VRヘッドセットを付けながらでAR体験する」という新しい考え方です。
手軽なメガネのようなデバイスで、シームレスに実環境からAR、AV、VRを切り替えることができる「現実とバーチャルが融ける(とける)未来」が近づいており、用途に応じたバーチャル濃度の最適化も行っていく必要があるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
まずは最初の久保田氏のセッション内容をサマリでお届けしました。
広くVR/ARの情報に精通した久保田氏ならではの俯瞰的かつ明瞭なセッション内容で、VR/AR業界に詳しくない方でも非常に理解しやすいコンテンツだったのではないでしょうか。
次回は、MESON社CEO 梶谷氏、meleap社CEO 福田氏、ホロラボ社COO 伊藤氏、Graffity社CEO 森本氏による「スタートアップセッション」をお届けしますので、お楽しみに!
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