VRゴーグル毎の視野角や解像度、画質などを徹底比較!
「VR元年」と呼ばれる2016年以降、急速に発展・普及してきたVRですが、まだまだ技術的には完成されておらず、課題点が多いのも現実です。
今回は視野角や解像度の観点から主要なVRゴーグルやスマホVRを比較し、人間の眼とどの程度差があるのか、解説いたします。
VR体験を左右する視野角と画質の関係
VRヘッドセットの体験品質は、レンズ越しに平面のディスプレイを眺める構造上、単純な画素数だけでは判断することはできません。
VRの仕組みは、両眼の視差を利用して、そこに立体物があるように「脳をだます」ことによるものです。
VRヘッドセットを利用する際に問題になる「VR酔い」のほとんどは、まだ技術が追いついていないことが原因である部分が大きいのです。
Oculus goゲット!早速遊んでみたけど、一番はじめにジェットコースターに乗ったからか、VR酔いした。気持ち悪っ!(´;ω;`)#VR酔い
— ユメ@DLE(非公式) (@DLE_Inc) May 24, 2018
VR酔いは、VR映像から脳が認識した動きと、実際の体や感覚のズレが生じたときに起こります。
VR空間上で映像を追った際に「本来こう見えるはず」というイメージと、ディスプレイ上に見える映像の品質のギャップが平衡感覚を狂わせてVR酔いを起こすのです。
VR酔いには大きく次の3つの要素が関わっていると言われています。
- ディスプレイの解像度
- 視野角
- リフレッシュレート
ディスプレイの解像度(画質)
まずは解像度ですが、もちろん解像度が高いに越したことはありません。
iPhone等に使われているRetinaディスプレイは、スマホ利用ではドットの境目が認識できないほど高解像度ですが、目との距離が近く、さらにレンズで引き延ばす仕組みのVRヘッドセットでは、下記のように液晶のドットがはっきりと見えてしまいます。
人間の視野全体を単純に換算すると5億7600万画素となるそうですが、これは8Kの解像度(横7,680ピクセル×縦4,320ピクセル=約3,300万画素)でも全く足りません。
ちなみに「4K」とは水平方向の解像度が約4,000ピクセルあるために「4K」と呼び、「8K」は水平方向の解像度が約8,000ピクセルあるために「8K」と呼びます。
しかし人間の目は視野全体を同じ解像度で見ているわけではなく、視野の中心2度の範囲だけを高い解像度でとらえています。
VRにおける視野角
実際私たちがものを見る場合、焦点が合っている部分は視野の一部です。
2度というのは、両手を前に伸ばして左右の親指を並べた範囲になりますが、これより外側は少しづつ解像度が下がるのです。
この2度の範囲に限っていえば700万画素程度であり、周辺を考慮してもプラス100万画素程度あれば十分です。
次に視野角ですが、人間の視野角は水平約200度,垂直約125度(下75度,上50度)と言われています。
HTC VIVE Proの視野角は110度であり、まだまだ足りないのは明らかです。圧倒的な8K解像度を誇る、話題の「Pimax 8K」の視野角は200度となり、これでほぼ人間の視野角をカバーできた形になります。
リフレッシュレートについて
最後のリフレッシュレートについてですが、これは毎秒何回画面を描き換えることができるかを指し、1秒当たりのコマ数を表すフレームレートとほぼ同じ意味となります。
これが低いとカクカクした映像になり、激しくVR酔いを起こすことが多いようです。
目が認識できるのは60fps程度と言われますが、サブリミナル効果は、例えば10000フレームの中に、数マイクロ秒のフレームがたった1つ挿入されても起こると言われており、単純にリフレッシュレートでは判断できない部分があるのです。
さらに、人間が物体をイメージ形成するときには目だけではなく、聴覚や嗅覚などの情報や、予測を総合的に脳が判断して行います。人間は目だけでものを見ているのではないのです。
VRに話を戻すと、脳に情報を送るための情報として90fpsは必要と言われます。
視野角と画質観点での各VRゴーグルの比較
<ハイスペックヘッドマウントディスプレイ編>
それでは代表的な各社のVRヘッドセットを、視野角と画質の観点で比較してみましょう。
HTC VIVE | HTC Vive Pro | Oculus Rift | PlayStation VR | Pimax 8K | |
解像度 | 2160×1200 | 2880×1600 | 2160×1200 | 1920×1080 | 7680×2160 |
視野角 | 約110度 | 約110度 | 約110度 | 約100度 | 約200度 |
リフレッシュレート | 90Hz | 90Hz | 90Hz | 120Hz、90Hz | 75Hz、90Hz |
ディスプレイ | 有機EL | 有機EL | 有機EL | 有機EL | TFT液晶 |
VR HMD重量 | 620g | 765g | 440g | 610g | 不明 |
価格 | 69,390円 | 175,910円 | 50,000円 | 37,770円 | 未発売 |
これを見ると、視野角についてはPimax 8Kが明らかに優れていることがわかります。
これは液晶というよりもレンズの問題で、最新技術を採用したPimax 8Kで新開発された人間の視野角に近いレンズが使われていることがわかります。
液晶に関しても同様に、Pimax 8Kが8K液晶を搭載しているだけに明らかな高解像度を誇ります。
他の製品が有機ELを採用しているのに対して、Pimax 8KはCLPL(customized low persistence liquid)という液晶を採用しているためです。
関連記事) 最強のHMD現る? Pimax 8kのスペックや価格、評判を解説!
有機ELと液晶では発色については有機ELが優れているため、鮮やかさという意味では他の製品の方が優れているかもしれません。
しかしながら、8Kをもってしても人間の目の解像度にはまだまだ全く追いついていないことがわかると思います。
主要VRゴーグルのスペック/価格比較が知りたい方はこちら→)PC VRゴーグル5選、各製品の特徴を解説!
<スマホVR編>
次に、スマホVRを見てみましょう、
先日発売になったiPhoneXsはもちろん、GalaxyS9シリーズも有機ELを採用し、非常に鮮やかなコントラストと発色では定評があります。
iPhoneXs | iPhone XS Max | Galaxy S9 | Galaxy S9+ | |
解像度 | 2,436 x 1,125 | 2,688 x 1,242 | 1,440×2,960 | 2,960×1,440 |
ディスプレイ | 有機EL | 有機EL | 有機EL | 有機EL |
ディスプレイサイズ | 5.8 inch | 6.5inch | 5.8 inch | 6.2inch |
視野角 | 大体105度から120度 | GearVRを使用すると101度 |
VRヘッドセットではPSVRなどを除き、基本的にはディスプレイが2枚搭載されていますが、スマホVRの場合は当然ディスプレイは1枚です。何が違うのでしょうか。
ディスプレイが1枚でも、2枚足し合わせた分のピクセル数があれば、表示性能としては同じでは?と考えるかもしれませんが、そうではありません。重要なのは実効解像度(実際に目に映すことができるピクセル数)です。
ディスプレイが2枚ある場合、左右の瞳孔の距離を意識して、2枚のディスプレイをそれぞれ目の真正面に持ってくることができます。
これにより、ディスプレイのピクセル全てを視界に映し、表示に割り当てることができます。だからディスプレイは2枚ある方が有利なのです。
ディスプレイが1枚の場合、映像を瞳孔の正面に持ってくるために、描画を工夫して位置を調整させる必要があり、左右の目の内側には何も表示されていない(目に見えないので描画させない)領域ができてしまい、実行解像度は下がってしまうのです。
スマホ用VRゴーグルに関しては、下記をご覧ください。
関連記事) iPhone用 VRゴーグル5選!機種の選び方や評判レビューを解説!
まとめ
以上のように、現在の技術ではまだ人間の眼には及ばないことがお分かりいただけたかと思います。
また、ディスプレイ技術が仮に人間の眼に追いついたとしても、現在存在するグラフィックチップでは描画が追いつきません。
VRヘッドセットはあくまで解像度と、レンズ性能と、描画処理能力のトータルバランスが要求されるのです。
一方で、人間の眼がものを見る仕組みを参考に、焦点が合った部分のみを高解像度に描画し、それ以外の部分は解像度を下げるアプローチをとるVRヘッドセットが登場しようとしています。
フィンランドのVarjo(ヴァルヨ)のVRヘッドセットは内部にディスプレイをふたつ用意し、ひとつは通常のVRの解像度でヴァーチャル世界全体を映すディスプレイ、もう一方はより高い解像度で狭い範囲を映すマイクロ有機ELディスプレイを利用することで、人間の眼の仕組みと同じ形の視覚を実現しているのです。
VarjoのVRヘッドセットは年内にも量産に入ると言われていますが、楽しみですね。
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