博物館・美術館のAR活用事例10選|アップデートされる新たな展示手法を徹底解説


博物館や美術館、そして商業施設などの展示におけるAR技術の活用例が増えています。

現実空間を3DCGで拡張させるAR技術作品や空間の装飾などと非常に相性が良く、今後も一層加速していくと考えられます。

今回の記事では、

  • ARとは?技術の概要とARによって生み出される新しい体験の形
  • ARと美術館・博物館との相性が良い3つの理由
  • 国内や海外の美術館・博物館のAR活用例

など、たっぷりと解説していきます。

アートやサイエンスが好きな方から、「最新の技術を活用した展示」を検討しているミュージアム・商業施設の担当者の方、そしてAR界隈の方まで、ぜひ最後まで読んでみてください。

ARとは?体験型のデジタル技術が美術館・博物館などの展示と相性が良い3つの理由

ARが博物館・美術館・展示会とどれほど相性が良いのか?

そのことを調べる前に、まずはアートは大好きだけど、ARってなに?という方のために、ARの基本的なところから見ていきましょう。

ARとは?技術と体験の概要

そもそもARとは「Augmented Reality(=拡張現実)」の略で、現実世界にCGなどの人工的な映像を重ねて表示させる技術のことです。

スマホ向けアプリケーションの「Pokemon Go」が代表例であり、ゲームやエンタメアプリケーションでの活用イメージが強いARですが、BtoB領域でも着実に活用が進んでいます。

中でも製造業、医療分野へのAR技術の進出はめざましく、AR全体の世界市場は2018年時点の270億ドル(約2兆9700億円)から、2022年には2,087億ドル(23兆円)にまで達すると見込まれています。

そんなAR技術がミュージアムや商業施設の空間展示と相性が良い理由は大きく

1.機能性:説明やガイドを多言語対応させることが可能
2.学習効果:興味を引く展示や体験型の展示により、来場者の学習効果を促進する
3.費用削減:ARアプリで展示物で開発することで、低コスト化が可能

の3点であると考えられます。では、具体的にそれぞれ解説していきます。

相性が良い理由1.説明やガイドを多言語対応させることが可能

ARはデバイス(ARグラス・スマホ・タブレット)越しに現実空間に対して3DCGを投影する技術ですので、アプリケーション側の設計次第で多言語対応が可能です。

美術館や博物館では、展示物の説明が欠かせません。

通常は日本語で印刷された紙やボードで説明文を掲げますが、「日本語と英語」ぐらいが限界で、多言語で展示物の説明を印刷する事は難しいのが現状。

一方でAR技術を活用すると、

  1. 展示物付近にマーカー(特徴的なイラストの印刷物・QRコードなど)を設置
  2. マーカーにスマホなどのデバイスをかざす
  3. アプリケーションが起動・使用言語を選択
  4. その言語で、各展示物の解説文書を見る事ができる

といったユーザー体験の設計をする事が可能になります。

加えて、解説のボードも大きなものは不要になり、限られたスペースでも展示物の配置や空間設計を優先する事が可能になります。

日本ならではのアートや文化などの展示物を楽しみに訪日する外国人も決して少なくない中で、外国人かARを活用して印刷物に頼らない説明やガイドを多言語で用意することは、なによりの「おもてなし」となるでしょう。

相性が良い理由2.興味を引く展示や体験型の展示により、来場者の学習効果を促進する

2つ目は、ARによる展示の「学習効率の高さ」。このポイントとしては、

  1. AR(3DCG)を活用した演出により展示物の魅力を高め、来場者の興味関心を集める事が可能である事
  2. 従来の「博物館→来場者」への一方的なコミュニケーションではなく、インタラクティブな体験学習で来場者が楽しみながら学びを得る事が可能である事

の2点に集約されます。

まず、ARは3DCGによる表現や、鑑賞者が自分から積極的に関与できるインタラクションなどを活用することで、テキストや2Dの画像では表現できない作品の新しい魅力を浮き上がらせることが可能です。

※参考:AR展示活用の学習効果の検証論文:博物館での学習における拡張現実(AR)技術の可能性

たとえば、恐竜の骨格標本にARを使って肉付けして本来の姿を表示させたり、そこからさらに動く恐竜を見せることも難しくありません。

さらに絵巻物の展示では、「ARで巻物を自分で開き、巻物内に書かれている内容が3Dで表示」といった展示手法も既に実践されています。

単に「一方的に展示を見たり、音声ガイドで楽しむ」といった受動的な学習ではなく、実際に自分で手を動かし、体験するという双方向型のインタラクティブな体験は高い学習効果をもたらします。

関連記事)ARが教育を変える|活用事例・アプリから学習効果や導入メリットを分りやすく解説

ARによる興味を引く展示や体験型の展示によって学習効果を高めるとともに、展示品そのものへの興味を惹きつけることも容易になるでしょう。

相性が良い理由3.ARアプリで展示物で開発することで、低コスト化が可能

ミュージアムのAR活用のメリットは、低コストで興味深い展示物を開発できる点にもあります。

例えば、アメリカのスミソニアン博物館の国立自然史博物館では、元宇宙飛行士のバズ・オルドリンのガイドで、ARの火星旅行を楽しむことができます。

実際の火星の様子をハードウェアを使って再現するには莫大なコストかかる一方で、ソフトウェアの開発のみであれば比較的低コストで収める事が可能です。

AR体験にはスマートフォンなどのタブレットかAR/MRグラスの活用が一般的ですが、後者のグラスの価格も徐々に下がってきています。

499$~購入可能な次世代型MRグラス「Nreal Light」は、通常のサングラスと変わらないようなデザイン性・つけ心地と、従来のMRグラスの価格の半分以下の値段設定にも関わらず、美しいグラフィックのMR体験が可能です。

こうしたハード面での進歩と、低コストで興味深い体験型のコンテンツを開発できるようになってきたことで、ARは美術館や博物館にとっても非常に強力なツールとなっています。

本メディア運営元「株式会社x garden」は、MRグラスやスマートフォンを使った展示・装飾を検討しているミュージアムの担当者の方・商業施設の担当者の方向けに、展示アイディアや企画・開発の相談を承っておりますので是非こちらからご相談ください。

では、ここからは実際にARを活用している国内外の美術館、博物館をご紹介していきましょう。

事例1.琵琶湖博物館がリニューアル!展示でARを活用

最初に紹介するのは滋賀県草津市にある琵琶湖博物館。琵琶湖博物館は現在リニューアル工事の真っ最中で、新しい展示コーナーでARを活用する予定です(2020年7月にリニューアル予定)。

ARが導入されるのは、琵琶湖の歴史や文化に触れられるA・B展示室。

A展示室では化石資料などの地学標本を元に昔の琵琶湖をリアルに再現しており、約200万年前の琵琶湖を再現したコーナーではジオラマの中を歩いて当時の様子をリアルに体験できます。

また、象の化石や様々な岩石の標本、さらに琵琶湖の生き物の生い立ちを実際に触れながら調べられる研究室も人気です。

またB展示室では、縄文・弥生時代の生活様式や、湖上交通、漁撈、治水・利水への取組みの4つのテーマをもとにかつて琵琶湖の水運を支えた丸子船や海津貝塚、猟具のコレクションや洪水の歴史を展示しています。

そうした実物資料を見ながら、人と琵琶湖の関わりとその歴史を学ぶことができます。

この展示ブースで、ARを使ったどのような展示が始まるのか非常に楽しみです。

事例2.東京国立博物館はARアプリ「トーハクなび」をリリースなど、積極的に活用

東京都台東区の上野恩賜公園内にある日本最古の博物館「東京国立博物館」(通称トーハク)は、日本と東洋の文化財の収集保管や展示公開を行っており、AR/VRといった最新技術を積極的に活用しています。

例えば、トーハク内の「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」では、VRを利用した鑑賞体験が楽しめます。

超高精細の4K映像と迫力の大スクリーンで、まるで実際にその時代にタイムスリップしたかのような感覚が味わえるTNM & TOPPAN ミュージアムシアター。

VRを通して文化財の新たな魅力を発見できます。

さらに国立博物館ではARに対応したガイドアプリの「トーハクなび」もリリース。スマホにアプリをダウンロードすると、自分の位置に連動して自動的に動画コンテンツが再生されたり、ARで伝統技法を追体験できるインタラクティブ・コンテンツなどが楽しめます。

※「トーハクなび」のアプリダウンロードはこちらから

ARで江戸城を復元。江戸城天守閣を体験するイベントが話題に

東京国立博物館では、特別展「江戸城の天守」開催期間中、博物館本館の前に実物大の江戸城天守をARで表示、体験できるイベントを実施して評判を集めました。

徳川三代将軍家光によって建設された江戸城の天守は、莫大な費用と当時の最高技術が注ぎ込まれた史上最大の天守だったと言われています。

東京国立博物館は当時の図面や絵図に加え、現存する文化財や伝統技術を手がかりに当時の天守を再現。専用のARアプリをダウンロードしたスマホやタブレットを所定の位置からかざすと、約59メートルの江戸城天守が出現します。

明暦の大火で消失してしまった江戸城天守。日本に実在していた城の中では最大と言われているその姿を、最新のAR技術によって見られるのは感動的です。

このように、過去の文化遺産などを現地に再現できるのもARの魅力ですね。

トーハクなびには、日本美術に関するインタラクティブな機能も

トーハクなびは、東京国立博物館の総合文化展を鑑賞するための5つのコースとスタンプラリーが収録されています。

  • 日本美術体験型コース2階:縄文時代から江戸時代まで、日本文化の歴史をコンパクトに把握できるコース。一部インタラクティブコンテンツを収録 (所要時間30分)
  • 日本美術体験型コース1階:本館1階の12、13室及び17室を紹介するコース。一部インタラクティブコンテンツを収録(所要時間45分)
  • 日本美術の流れコース:縄文時代から江戸時代まで、時代を追った展示がされている本館2階を案内するコース (所要時間45分)
  • トーハク劇場コース:専用ARマーカーに端末のカメラをかざすと、バーチャルな俳優が現れ、演劇仕立ての映像が流れるコース(所要時間45分)
  • 建物めぐりコース:敷地内5つの建物を案内するコース(所要時間30分)

この中でも、ARを用いた展示を楽しむなら、やはり「トーハク劇場コース」がおすすめです。

ARマーカーにスマホやタブレットをかざすと、AR表示された人物が展示内容を説明したり、絵巻や屏風などの美術品を操作する事ができます。

またトーハクなびは、指定の3ヶ所(本館4室、本館17室、法隆寺宝物館)を回ると自動的にデジタルスタンプが取得できるスタンプラリー機能も装備。

全てのスタンプをそろえると、東京国立博物館所蔵で最も人気の高い「風神雷神図屏風」がデザインされた缶バッジがもらえます。

VRやARで日本の芸術や工芸品が体験できる東京国立博物館の積極的な試みは、これからも要注目です。

事例3.金沢くらしの博物館で展示物の回遊をARがサポート

かつて加賀百万石として栄えた金沢市。

その金沢に暮らす人々の暮らしに密着した生活用品や年中行事に使われてきた伝統工芸品、職人道具、さらに戦後から現代までの時代背景を忍ばせる様々な電化製品などを展示するのが「金沢暮らしの博物館」です。

受付で専用アプリがインストールされたタブレットを手に館内を巡ると、様々な場所でARが利用できます。

例えば、上の写真にある柱時計。柱時計といえば毎時の時報の音色を聞いてみたいものですが、そうそうタイミングが合うわけではありません。そこで、タブレットをかざすとAR表示された柱時計が時報を鳴らして当時の様子を垣間見られるという仕組みです。

ほかにも白黒の写真をカラーで再現したり、石川県の郷土玩具である「米食いネズミ」の動く様子が見られたり、最近の若者はもしかしたら分からない、かまどの使い方を動画で解説したりと非常に多彩。

ほかにも「加賀毛針」や獅子舞の様子が映し出されたりと、金沢の伝統を楽しみながら深く知ることができます。

金沢くらしの博物館は1899年(明示32年)に建てられた中学校の校舎を利用した博物館で、建物自体もレトロで雰囲気があるので、是非チェックしてみてください。

※金沢市では、他の文化施設でもARを取り入れる予定とのことです

事例4.シリコンバレーに体験型のデジタル展示・AR/VRのテックミュージアムが登場

IT企業が集うアメリカのシリコンバレーで最先端の技術を紹介・体験するための施設が「テック・イノベーション博物館(The Tech Museum of Innovation)」です。

テック・イノベーション博物館は電子工学、ハイテク自動車、ロボット、宇宙探検、バイオテクノロジーなどのエリアに分かれていますが、その中に新しくARやVRをテーマにした常設の「Reboot Reality」コーナーが登場しました。

Reboot Realityの展示には、GoogleやFacebook、Adobe、スタンフォード大学など実際にAR/VRコンテンツの制作に携わっているトップ企業・団体が技術協力をしており、最新のAR/VRテクノロジーに触れることができます。

たとえば、

  • 鳥になってニューヨーク・マンハッタンの上空からの景色を楽しめるVRコンテンツ
  • Googleの提供する3D空間にバーチャルの絵が描ける「Tilt Brush
  • OculusによるVR世界で粘土の造形が楽しめる「Medium」
  • Adobeの最先端デジタル・ペインティングツール

などなど、先端技術を持った企業の展示が結集しています。

ディレクターのプリンダ・ワナクール氏は同士施設の展示物について、

「ARやVRなどの最新テクノロジーは、我々の生活や仕事、学習の仕方まで一変させてしまう可能性を持っている。そうした技術を紹介することで、これまでとは違った問題へのアプローチ方法もあると気がつけるかもしれない」

と述べています。

ARを使った展示物の紹介ではなく、ARやVRというテクノロジーそのものを紹介するこうしたミュージアムの登が日本でも登場すると嬉しいですね。

事例5.スミソニアン博物館が骨格標本にARで肉付け・アニメーションの演出も

アメリカを代表する博物館であるスミソニアン博物館は一つの施設ではなく、アメリカを代表する科学、産業、技術、芸術、自然史というテーマごとにそれぞれの施設が存在します。

その中の「国立自然史博物館」で人気の展示施設の一つ「Bone Hall」では300近くの骨格標本や化石標本が展示されているのですが、「Skin&Bones」という専用アプリを入ったタブレットをかざすと標本骨格がARで肉付けされ、「生物として生存していたときの姿」に変身します。

加えて、骨格標本が動き出したり、3Dアニメーションによって再び命を得たかのように動き回ります。

これなら、骨格標本を怖いと感じてしまう小さな子どもでも展示物に興味を抱くことは間違いなし。

生き物の姿を見るだけではなく、命の価値や生きることの根源的な意味についても考えるよいきっかけになるかもしれません。

事例6.ロンドンの美術館・テートがARエフェクトツール「Spark AR」を活用

イギリス、ロンドンのテムズ川沿いにある国立現代美術館「テート・モダン(Tate Modern)」では、Facebookの開発する「Spark AR」を導入しています。

Spark ARとは、Facebookが提供するARツール

Spark ARは、Facebookが2017年から提供しているARツール。Facebookアプリ内のカメラを利用すると、専用の開発環境で制作したARエフェクトが見られます。

テート・モダンではこのSpar ARを利用して、展示作品のARエフェクトを楽しめます。

 

施されているARエフェクトは作品によって異なります。

例えば、19世紀の作品である「Fishing upon the Blythe-Sand, Tide Setting In,」は現実のエピソードをモチーフに、作品がAR上でバラバラになるという驚きのエフェクトが仕掛けられています。

ほかにも、ジョン・シンプソン作の「Head of a Man」では描かれた人物の眼がカメラに合わせて動くなど、作品の個性にあったいずれもユニークなエフェクトが楽しめます。

現代アートらしい、遊び心が込められたアート・モダンの展示は、芸術作品への新しいアプローチとして高く評価されています。

事例7.アーティスト必見?ARアートプラットフォームアプリ「Artivive」を美術館や画廊も活用

xすでに完成されているアート作品をARで紹介するのではなく、ARで表現するアートを制作する。

ARデジタルアートのためのプラットフォーム「Artivive」では、すでにそんな試みが盛に行われています。

クリエイティブプラットフォーム「Artivive」とは

Artiviveはデジタルアートを制作するアーティスト、クリエイターのための新しいプラットフォームです。

静止画を専用アプリでかざしてみると、その作品が動き出します。静止画はいわば作品を楽しむためのきっかけにすぎず、ARで表示することによって初めてその作品が完結します。

 

ArtiviveはARクリエイターだけではなく、美術館やギャラリーでの利用も始まっており、アート離れが深刻な若い世代に美術館や博物館を訪れてもらおうと、AR×アートを目玉にした特別展示を各美術館やギャラリーが企画しているのです。

※イギリスの大英博物館で過去2年間で入場者数が80万人も減少するなど、若い層を中心とした「芸術離れ」は起きつつあるものの、一方で期間限定の特別展には来場者が増える傾向が見られます。

得にArtiviveのような、これまでのアート作品では考えられなかったようなポップで刺激的な映像表現は、若い人たちの心を掴むのに最適と言えるでしょう。

実際に海外ではArtiviveを利用した展示会も徐々に増えてきています。日本にもその波がやってくるのも近いかもしれません。

Artiviveアプリのダウンロード

事例8.カナダのオンタリオ美術館もARを使った展示会を実施

カナダを代表する美術館の一つ、トロントの「オンタリオ美術館(Art Gallery of Ontario)」では、作品と鑑賞者の間の双方向コミュニケーションを実現させるために、ARを活用しています。

「ReBlink」と呼ばれるARアプリをインストール・起動し、マークのある作品の前でタブレットやスマホをかざすことによって、2次元の絵画が3次元の作品へと変様します。

例えば、あるポートレートでは作品中の人物がスマホを手にとり、逆に鑑賞者の写真を取り始めたり、Jean de Gaigneron氏の作品、イタリア公爵夫人のルイーザ・カサッティのポートレートではセルフィースティックを突き出す仕草も。

これは目立ちたがり屋の公爵夫人のキャラクターを表しているそうです。

ほかにも、地元カナダの画家であるGeorge Andrew Reid氏の作品「Drawing Lots」では、作中でデッサンをしている少年たちのスケッチブックがスマホに変わり、背景も田園風景から黒い煙を吐き出す自動車と都会の景色になるという演出を楽しめます。

このように、普段からアート作品を見慣れている人だけではなく、初めて美術館を訪れるという人の関心も惹きつけるオンタリオ美術館のARの活用方法は、新しいアートの楽しみ方を提供する試みとしても非常に興味深いのではないでしょうか。

事例9.GoogleとGuidiGO社が美術館ガイドアプリをリリース、デトロイト博物館が採用

アメリカ国内でも3番目の規模を誇るデトロイト美術館(Detroit Institute of Arts)は、Googleの開発したARプラットフォーム「Tango」を利用したガイドアプリ「Lumin」を採用しました

「Lumin」を開発したのは、ニューヨークやパリを拠点に美術館や博物館向けのモバイルガイドツアーアプリなどを開発するGuidiGO社。

来館者は入り口でLuminがインストールされたTango対応のスマホを受け取り、様々なAR効果を楽しむことができます。

その中の一つ、エジプトのミイラの棺の展示では、スマホをかざすことによって、その中身を透過できるというARならではの特徴を生かした鑑賞ができるようになっています。

Luminを活用することについて、デトロイト美術館のサルバドール・サロールト・ポンス館長は「ミュージアムという垣根を飛び越えて、来館者と展示物を常げてくれる非常にエキサイティングな方法」とその価値を強調しています。

Google TangoからARCoreへ

Googleは2018年3月に、「専用の端末でのみ体験可能」という制限から普及が進まず、Tangoのサポートを終了しました。

そして、Googleは新たなAR開発プラットフォーム「ARCore」をリリース。Tangoと異なり、幅広いAndroid端末で体験すること可能です。

※参考記事:ARCoreとは?

博物館や美術館向けにARテクノロジーを提供してきたGoogleの姿勢も変わっていません。

ARCore技術を利用したアプリ「Google Arts & Culture」では、ピカソやゴッホなどの世界中の芸術作品を鑑賞できるだけではなく、ARでフェメールの全36作品を美術館の仮想展示で楽しめる「Pocket Gallery」などの機能を装備しています。

Google Arts & Cultureが目指すのは、芸術と人々がより近づくための新しい方法を提供すること。

ARを活用したGoogleの芸術作品との関わりには、今後も期待しながら注目していきたいですね。

関連記事)ARアート作品・作り方|事例から見る、テクノロジーによる芸術作品のアップデートとは

Google Arts & Cultureアプリのダウンロードはこちら

事例10.Cuseum社×ガードナー美術館による「盗まれた絵のAR展示」

美術館にデジタル技術のサポートを行う「Cuseum」社が、ARを用いて盗難された絵画を再現する試みに注目が集まっています。しかし、盗まれた作品のAR展示というのは一体どういうことなのでしょうか?

篤志家だった故イザベラ・スチュワート・ガードナー氏が収集した作品を展示するイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館では、1990年に警官を装った犯人による美術品の盗難事件が発生しました。

被害となったのは計13作品、被害総額は5億ドルにも及び、史上最高被害額の絵画盗難事件として世界中に激震が走りました。この事件は未だに未解決のままとなっています。

同美術館では、ガードナー氏の「館内の展示物やレイアウトには手を加えてはいけない」という遺志に従い、 盗まれた絵画のスペースはそのままになっており、それ自体が作品へのオマージュともなっています 

その盗まれた絵画をARで鑑賞しようというのが、Cuseum社とガードナー美術館の試みになります。

上の写真のように、盗まれてしまった絵画の額縁に専用アプリが入ったデバイスをかざすと、その絵がARで表示されます。

盗難絵画のAR再現は順次行われており、最終的には13作品全てAR化する計画とのこと。

「Hacking the Heist」と名付けられたこの企画、実はガードナー美術館が発案したものではなく、絵画盗難事件が風化することへの心配と地元ボストンへの恩返しの気持ちから、Cuseum社が独自で始めたもの。

この企画は実験プロジェクトのため現時点では一般公開されていませんが、Cuseum社はHacking the Heisだけではなく世界初のAR展覧会を開催するなど、ARと芸術作品のコラボレーションに非常に熱心に取り組んでいます。

Cuseum社の創設者であるブレンダン・シエコ氏は、「ARは美術鑑賞のような教育分野のクオリティ向上に非常の大きく役立つため、今後もARを活用したプロジェクトを進めていく」と決意を述べています。

今後も、ARを活用した体験型のアート作品の関わりはさらに広がっていくことでしょう。

美術館・博物館や商業施設のAR展示の企画・開発依頼はこちら

ここまでミュージアムの展示や空間装飾におけるARの活用方法・活用事例を紹介してきましたが、本メディア「XR-Hub」を運営する株式会社x gardenはAR/VRのアイディア相談や企画開発依頼を承っています。

国内の大手観光企業や通信会社、東証一部上場のエクステリア企業など、幅広い業種の企業をクライアントにしたARアプリケーションの開発実績があるため、

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という方は是非こちらからご相談ください(初回無料でご相談可能です)。

まとめ

美術館や博物館を訪れて、ただ絵画や作品を眺めるだけの鑑賞はもう終わり。ARを活用した、芸術作品の新たな楽しみ方が始まっています

観るだけではなく、体験型の美術館や博物館へ。ARという技術があるからこそ、その流れが生まれたと言っても過言ではないでしょう。

さらに、ARを前提としたアート作品を発表するクリエイター、アーティストも今後さらに増えていくに違いありません。

AR×アートが生み出す新たな感動は、これからさらにアップデートされて、アート好きには新鮮な発見や喜びを、そしてこれまで芸術や美術に興味を持っていなかった人たちに対しても、作品に目を向けてアートの世界に一歩足を踏み入れる大きな助けになるでしょう。

博物館や美術館、展示会でのARの活用に引き続き注目していきましょう。

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今泉滉平:株式会社x garden執行役員 / XR-Hub 事業責任者

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