KDDIが提携する最新ARグラス「nreal light」まとめ – スペック・価格・開発者向けとの違い・購入方法など
AWE2019で一大センセーショナルを引き起こしたのが、今回紹介する「nreal light(エンリアル・ライト)」です。
中国のスタートアップ企業・nreal社が開発する「nreal light」の発表は、業界内外に大きな衝撃をもたらしました。
今回はそんな「nreal light」のスペックやクオリティ、KDDIなどを巻き込んだ今後の事業展開など、ARレンズの「今」と「これから」を俯瞰する内容を紹介していきます。
今回の記事で分かる内容
- 「nreal light」とは一体どんなデバイスか?
- 「nreal light」のスペック
- 「nreal light」の凄いところ
- 「nreal light」を取り巻く環境とこれからの展望
- etc…
ARレンズって何なの?という方から、VR・AR・MRの将来に思いを寄せているコア・ユーザーまで、気になる情報をまとめてご紹介します!
Contents
nreal lightのスペック – 解像度・質量・価格など
では、さっそく「nreal light」の概要(スペック・価格などの基本情報)について解説していきます。
nreal lightとは?
「nreal light(エンリアル・ライト)」はカリフォルニアで開催された「Augmented World Expo(AWE2019)」に登場し、大きな話題となりました。
「nreal light」は中国のスタートアップ企業「nreal社」が開発するMRデバイスで、通常のサングラスのような大きさとサイズを実現した、一般向けのARグラスです。
デジタルやCGで表現される情報や映像を、まるでそこにあるかのように認識することができます。
スマホなどのガジェットを介さず、メガネ型のデバイスでAR(拡張現実)を視認できるMR(複合現実)型デバイスは、Microsoftの「HoloLens」などが先行していますが、それらはサイズ的にも重量的にも『グラス』というよりもハッキリ言えば『端末』。
業務用や室内であれば問題ありませんが、一般ユーザーが日常的に用いられるものではありませんでした。
※MicrosoftのHoloLens2。toBのMRソリューションとして展開されています。
ところが、この「nreal light」は88グラムという軽量・小型化を実現し、我々一般ユーザーでも違和感なく伝えるデザインとなっています。
発売は2020年初旬を予定しており、それに先行する形で開発者版(developer)が2019年9月に提供されます。
価格は一般消費者向けが499ドル。
この価格も大きな話題となった理由の1つで、「nreal light」はそのデザインと価格によって、事実上世界初の一般ユーザー向けMRデバイスとして登場することになるのです。
消費者向けnreal lightのスペック一覧表
ではここで、「nreal light」のスペックを確認しておきましょう。
- メーカー:nreal
- 解像度:1920 × 1080 px(非公表数値)
- 視野(FOV):52°
- 発売日:一般向け/2020年初旬、開発者向け/2019年9月
- 生産国:中国
- 価格:一般向け/499ドル、開発者向け/1,199ドル
- 公式HP:https://www.nreal.ai/
- 機能:
- SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)
- 6DoF
- 平面検知
- イメージトラッキング
nreal lightの凄さとは
「nreal light」の凄さは、事実上、世界初の一般ユーザー向けのARレンズとして発売される。ということに尽きます。
「nreal light」が一般向けユーザーとして発売できるのは、次の二点の要素を満たしたからでしょう。
- 本体重量88gというデザイン性の高さ
- 499ドルという価格
価格については事項で取り上げるとして、「nreal light」のデザインについて考えてみましょう。
先行するMicrosoftの「HoloLens2」の本体重量は約570グラム(メーカー未公表)ですから、もう別物です。
そもそも「nreal light」と「HoloLens」では設計思想も大きく異なります。
「HoloLens」がWindows10を搭載したヘッドマンとディスプレイ型のARウェアラブル”コンピューター”であるに対し、「nreal light」は日常使いのできるAR“グラス”として開発されました。
「nreal light」が88グラムという超軽量のデザインを実現できたのは、基本動作を外部端末に委ねるという割り切ったアーキテクチャにあります。「nreal light」はスマートフォン、もしくはSnapdragon 855以上のプロセッサを搭載する外部機器に接続して使用します。
有線で外部端末に接続すると聞くと煩わしさを感じるかもしれませんが、実際に装着してみるとイヤホンのような感覚でそれほど気になりません。
むしろ、外部端末に本体動作を委ねることでこの軽量化と普通のサングラスと同じようなデザインを実現できたわけですから、一種の『発明』と言ってもいいのではないでしょうか。
また、解像度こそ公開されていないものの、視野角52°と広い視野と美しい映像はまさに未来を感じさせます。
「nreal light」で表示される映像がどのように見えるかは、こちらの動画をご覧ください。
「nreal light」は世界初の一般向けARグラス、そしてこれがARグラスであるということを忘れさせてくれるほど高いそのデザイン性こそが、世界を驚かせた大きな理由でしょう。
驚異の499$!低価格の実現は「絶妙な機能・スペックの制限」から
「nreal light」の一般向けモデルの発売価格は499ドル。多くのMRデバイスは10$~30$の価格帯である中で、なぜ「nreal light」は499ドルという低価格を実現できたのでしょうか?
一番の理由は、「nreal light」が機能を限定したことにあります。「nreal light」はSLAM、6DoF、平面検知、イメージトラッキングなどの機能こそ備えてはいるものの、本格的な深度センサーを搭載していないため、できることに限りがあります。
具体的には、自分が今いる空間やCGをカメラが認識して現実世界にリアクションとして反映させるような、高度なMR機能を「nreal light」は持ち合わせていません。
その代わり、CGやデジタル情報を現実世界に表示させるというAR機能に限定することで、低価格を実現させました。
そしてもう一つの理由が、上にも述べたように本体動作を外部端末に委ねたこと。
動作部分を外部端末に任せ、「nreal light」はカメラ、そしてスクリーンとしての機能に限定することによって部品数を減らし、499ドルという価格で発売できるのです。
nreal light developerと消費者向けの差は付属品
「nreal light」は一般向けとは別に、開発者向け(developer)向けが先行して発売されます。
一般向けとの違いは同梱物。
開発者向けには「nreal light」本体とコンピューティングユニット、そしてコントローラーが付属されます。価格は1,199ドル。
開発者向けは一般向けに先駆けて2019年9月に発売されますが、開発者登録が必要になります。
登録さえしてしまえば、一般ユーザーでも開発者向けの「nreal light」を購入することは可能だと思われます。
付属するものも開発キットというわけではないので、いち早く「nreal light」を手に入れたい!という方は開発者版の購入を検討できるかもしれません。
付属のコントローラー・コンピューティングパックの機能・スペック
「nreal light」開発者版に付属するコンピューティング・ユニットとコントローラーのスペックは次の通り。
【コンピューティング・ユニット】
- 重量:170グラム
- ハードウェア・プラットフォーム:Qualcomm Snapdragon 845
- OS:Android
【コントローラー】
- 重量:20グラム
- トラッキング:3DoF
- センサ:感圧式
- 接続方法:Bluetooth
「nreal light」は外部端末に接続して使用しますが、Snapdragon 845を搭載するコンピューティング・ユニットがその役割を果たします。
コントローラーは3DoF対応で、「nreal light」で表示されるアプリやコンテンツを操作することができます。
一般向けの「nreal light」はスマホに接続して使用・操作することになりますが、開発者向けのコンピューティング・ユニットとコントローラーを使えば、ユニットはポケットなどの入れっぱなしにして(デモでは首からぶら下げていました)Bluetoothで無線接続されたコントローラーで操作できるので、より便利に使えそうです。
nreal lightとKDDIがパートナーシップを締結!その背景を考察
「nreal light」はそのデザインと価格で世界中に驚きをもたらしましたが、日本市場に限っても大きなサプライズを提供してくれました。
それがKDDIとのパートナーシップの締結、そしてメルカリとの実証実験の開始です。「大手通信キャリア×MRグラス」に現れるキャリアの戦略
KDDIは来る5G時代に向けた新しい取り組みの一環として、「nreal」と業務提携を結び、「nreal light」を日本国内向けの販売・サポートを開始します。
さらに日本市場向けのカスタマイズや実証実験を行うことによって、「nreal light」の可能性を検討していくとしています。
KDDIとnrealのパートナーシップ提携に関して、nrealのCEOであるChi Xu氏は次のように述べています。
「スマートグラスは日本で近く大きな市場になるでしょう。我々は、日本における大手通信会社であるKDDIと、この領域で次世代の空間コンピューティングの実現に携われることを大変光栄に思っております」
(KDDIプレスリリースより引用)
ここで鍵となるのが「5G」と「ネクスト・デバイス」です
❶, 5G時代の到来とMRの普及
現在のスマホの通信技術である4Gから、次世代の通信技術である5Gへの移行が2020年からスタートします。
4Gと5Gの一番の違いは、通信速度。
5Gでは4Gの100倍の速度で通信が行えるようになります。
その高速・大容量通信化によって映像コンテンツの拡大が進むと同時に、VR・AR・MRの普及もさらに進むことになるでしょう。5Gによって場所を選ばずにVRやARによる没入体験が得られるようになるのです。
また、多数の端末がネットを介して接続するIoTの更なる拡大も規定の事実と見なされています。
様々な端末が情報を互いにシェアし、最適化をもたらすIoTは高速通信がなくては本領が発揮できません。
そのIoTと我々を結びつけるデバイスこそが、VR・AR端末なのです。
❷, スマホに代替するネクスト・デバイスがMRグラスになる
スマートフォンの普及台数が頭打ちになる中、各キャリアが懸命に探っているのがスマホの次、つまり「ネクスト・デバイス」です。
5GによるVR・ARの拡大と、ネクスト・デバイスとしての期待も持てる「nreal light」は、KDDIにとって渡りに船。通信会社としてのKDDIと、全く新しいデバイスである「nreal light」の販売を拡大したいnrealの提携は必然と言えます。
もちろん、我々ユーザーにとっても両者のパートナーシップはメリットをもたらします。
海外メーカーの開発・販売が中心となっているVR・ARデバイスを一般ユーザーが購入しようと考える時、ネット通販か代理店を通しての購入がほとんどで、実際に自分の手に持って商品を吟味できる機会はほとんどありませんでした。
しかし、「nreal light」がauショップに並ぶようになると話は変わってきます。
「nreal light」は単体では動作せずに、スマホ端末に接続して使用しますから、携帯ショップでの販売は自然な流れと言えるでしょう。
これまでVRやARに興味を持たなかった人でもショップで手軽に手に取れるようになりますし、スマホと同じような『セット割』のようなものも提供されるかもしれません。
ネクスト・デバイスを押さえたい通信キャリアのKDDI、全国での販売チャンネルを利用できるnreal、そしてARグラスをより身近で触れられる我々ユーザーと、まさに今回の提携は『三方良し』です。
mercariも参加?nreal light実証実験の内容
KDDIはnreal lightの販売だけではなく、nreal lightが社会にどのような恩恵をもたらすかの実証実験も行っています。
その一つが、フリマアプリでお馴染みの「メルカリ」での実証実験です。
上の動画にあるように、「nreal light」を装着した状態で商品を指差すと、メルカリ内で同様の出品物を検索したり、価格などの情報を入手することができます。
出品者の側であらかじめ商品の3Dモデルをスキャンしておけば、「nreal light」でAR表示された商品をよりじっくりと検討できるようになるでしょう。
現状では実証実験の段階に過ぎませんが、近い将来のショッピングはARレンズを利用して購入するというのが当たり前になるかもしれませんね。
Twitterでの評判が話題!海外のnreal lightのユーザー・レビュー情報
「nreal light」は今年のAWE2019で発表され、大センセーショナルを引き起こしたのは最初にご紹介した通りですが、その会場で実際に「nreal light」に触れた人の感想を見てみましょう。
【速報】ほぼサングラスと同じ見た目のARグラスnreal lightがたったの$499で2020年に発売されることが発表されました!!
スマホやPCに接続してARを描画することができますこいつはすげえー!!安過ぎる、、、
めっちゃ鳥肌たった!! pic.twitter.com/3NDBgdxPEl— ARおじさん / MESON (@AR_Ojisan) 2019年5月30日
AWE2019の会場では「nreal light」の499ドルという価格に拍手喝采が沸き起こっていましたが、やはりその価格と、値段以上のクオリティに興奮を隠せない様子が伝わってきます。
nreal lightでmixed realityのデモを体験した。簡単に言うと軽いMagicLeapみたい。グラス自体が85gとかなり軽く、見た目のサングラスみたいで全然ARグラス感はないのに、FoV52°あり6DoFでトラッキングできて輝度もかなり高いと、欲しい性能が全部詰まっている感じ。音もかなり綺麗。#CES2019 #R4DCES pic.twitter.com/yr4a4JIP5p
— Nakaji Kohki / リリカちゃん (@nkjzm) 2019年1月8日
もちろん、「nreal light」は海外での評判もウナギ登りです。
Wow this is looking promising! #Nreal light glasses from ex magic leap team member coming soon for around $1000 think I’ll be getting a pair thank you very much! https://t.co/eP45yQkJNV https://t.co/BJAPUZQ1TU
— John (@johnhanacek) 2019年1月8日
意訳:これはすごい!1,000ドル超えのマジックリープよりもよっぽど良さげに見える。素晴らしい…
Oh my god. I don’t want a Magic Leap anymore. I want an nReal Light. Day 1 buyer right here. Buying a white one.
— VR Nima (@nimazeighami) 2019年1月8日
意訳:なんてことだ!これはもうマジックリープは要らないね。「nreal light」、絶対に買わねば!
「Magic Leap」というのは、アメリカ国内で注目されているハイエンド・ARヘッドセットです。しかし、価格が高いこと(20万円以上)と、一向に開発が進んでいないように見えてしまうことから、開発者やユーザーからも不満の声が上がっています。
「nreal light」の登場は、そんな業界関係者にとって、MRの開発を加速させる契機となるデバイスになるでしょう。
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まとめ / 考察
ARグラスは現在までのところ、医療や工業分野などの専用分野での利用がほとんどで、一般ユーザー向けの製品は皆無と言っていい状態でした。
そんな中で登場したのが今回紹介した「nreal light」です。
低価格と高いデザイン性で喝采を浴びている「nreal light」ですが、もちろん問題が無いわけでもありません。
深度センサー非搭載で、ハンドジェスチャーやアイトラッキングなどの動作にも対応していません。外部端末に依存することも、賛否が分かれるポイントでしょう。
しかし、「nreal light」はARレンズが一般に普及するためのブレークスルーとなりうる製品です。
5G到来を見据え、ますます脚光を浴びるようになるであろうVR・AR・MR市場。そんな近未来の世界と我々とを結び合わせるデバイスが、「nreal light」と言えるのかもしれません。
スマホやモニターを介さずに、3Dの迫力ある映像や没入体験をいつでもどこでも気軽に楽しめる時代も、そう遠くないでしょう。
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