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【第二創業への飛翔】1億8,000万円を調達したホロラボ社CEO/COOトップ対談!


XR-Hubによる、XR業界の先駆者と知を共創するコンテンツ「XR Innovators Talk」第8弾。

今回は、XR業界では知らない人はいないテックカンパニー「ホロラボ」社CEO中村薫さんとCOO伊藤武仙さんによる豪華トップ対談!

累計で1億8,000万円という資金調達ニュースが記憶に新しいホロラボ社ですが、そんな同社の

  • 知られざる創業ストーリー
  • R&D/PoC開発事業で直面した困難
  • ベールに包まれた組織運営の裏側
  • 直近1~2年の採用像の変化
  • ファイナンスの狙いと今後の企業ビジョン

など、盛りだくさんでお届けいたします!それでは早速、本編スタートです。

ノリと勢いで起業!ホロラボ創業秘話

それでは、早速質問させて頂きます。

まずは、ホロラボ社創業の経緯から教えて頂けますでしょうか。

知られざるホロラボ創業秘話

中村氏 一言で言うと、ノリと勢いです。 

まず僕がHoloLensを入手したのは2016年の5月で、そこから1ヶ月間色々な所を回って様々な人にHoloLensを体験してもらう、言わば布教活動をしたんです。

HoloLens用のアプリを制作し、実際に装着して体感してもらっていましたが、反応はいずれも非常に良く「これは来るな」と肌で感じていました。

そして2016年の11月30日に初めてマイクロソフト社公式のHoloLens体験会があり、そこでHoloLensの日本発売も発表されて、MRの浸透が全国的に加速すると感じました。

体験会の後に、5年来の付き合いで一緒に参加していた伊藤に「会社作って一緒にやらない?」と持ちかけたら「いいんじゃない?」と。

それで会社作ったので、本当にノリと勢いですね。

HoloLensの入手は一苦労。隠れホロシタン時代の布教活動

ノリと勢いで起業とは…最高ですね。

法人化までのプロセスを、具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか?

伊藤氏:2016年の1月に、マイクロソフトがHoloLensの発売を発表した当時、我々は東京モーションコントロールネット(TMCN)という3次元センサーのKinectのコミュニティを運営していたんですね。

最新デバイスが好き人が多いコミュニティだったので、案の定コミュニティ内でもHoloLensに興味を持つ方が多くて、希望者で共同購入することになったんです。

ただHoloLensは当初北米(アメリカ、カナダ)に住んでいる人限定発売だったので、住所が北米でないと応募できなかったんですよね。

そこで当時アメリカに移住していた前職の先輩にHoloLens2台分の受け取りと支払いを何とか頼み込み、日本に輸送してもらったりして。

執念の買い物ですね…。(笑)

そうなんです。HoloLensが日本に到着してからは「HoloMagicians」という新しいコミュニティを立ち上げ(発起人は @mitsuba_yu氏)、様々な方々にHoloLensを体験してもらっていました。

 当時はHoloLensが技適を通っていなかったので、試験するのに電波暗室が必要だったりで細々と活動せざるを得なかった だったんですよね。

通称「隠れホロシタン」時代です。

初の自社サービス「mixpace」のリリース

HoloLensを入手してから軌道に乗るまではどのような道のりだったのでしょう?

中村氏:最初にMR開発の仕事を受注したのは2016年後半で、今年リリースした「mixpace」の原型に当たるプロジェクトでした。

3D CADデータをAR/MR向けに最適化するクラウドソリューション、mixpace。ホロラボがSB C&Sと共同で開発。
3D CADデータをAR/MR向けに最適化するクラウドソリューション、mixpace。

当時私は個人事業主としてセンサープログラミングの仕事をしていて、その関係で頂いた案件になります。

そして2016年の後半に数件のHoloLensの案件をやっていました。

実はHoloLens案件は全体の5割程度。

現在の主力事業も、HoloLensを使ったMR開発でしょうか?

中村氏:今はVR案件も含め、幅広い開発案件が入ってきています。

 弊社の2018年の売り上げに対するHoloLens案件の比率は、大体55%程度です。 

他はVRやセンサー系、スマホARでの開発案件になります。

「ホロラボ」という社名から「ほとんどがHoloLens系の案件なのでは?」というイメージを持たれやすいですが、基本的には 「クライアントの課題や予算を考えた上で最適なソリューションは何か?」 という観点を優先にしており、その結果として最初はHoloLensを使いたいって相談だったものでも、コンサルテーションの結果としてHoloLensを使用しないことも多々あります。

HTC Viveを使ったVR開発やiOS・Androidアプリ開発、Kinectなどの3Dセンサー技術を始めとした、提案可能な幅広いソリューションの中から、常に最適な提案を行うよう心がけています。

ジェットコースターのような売上増減…?!R&D案件特有の難しさ

創業以降に直面した困難について、お聞きしても宜しいでしょうか。

伊藤氏:それでいうと、 昨年前半の売上の乱高下 ですね。

研究開発系の案件の特徴として

  • 年度末に予算消化のために一気に案件が増える
    → 12月 – 3月の売り上げが伸びる
  • 4月にクライアントが予算編成で案件が無くなる
    → 4月以降一気に売り上げが落ちる

という傾向があります。

数字で言うと、2~3月で初年度1年分の売上があがってるんですが、4~6月がその1/10とかに落ち込んでたりしました。

プロジェクトマネジャーも開発メンバーも、年末から3月末までは怒涛の案件ラッシュだったので、今振り返っても限られたメンバーだったのにみんなよく頑張って乗り切れたなと感じます。

今後は個別の開発案件とSaaS型のサービス展開を両軸で進める

伊藤氏:現在MRやVR、そしてtoB領域のR&Dだと特に、クライアント側からの要望は「ARやVRを使って、こういうことをしてみたい」という実証実験の個別案件が圧倒的に多いです。

となると我々の開発の目標は品質以上に 「いち早くプロトタイプを開発し、実際に顧客に確認してもらうこと」 になり、冗長性やメンテナンス性を意思した綿密な設計や中長期の運用を視野に入れたカスタマーサポートの体制の構築は基本必要ありません。

一方、mixpaceは「サービス」としてリリースしており、他の案件と比較した際の

  • プロダクト品質
  • サポート体制

が必要となりました。

こちらに関してはサブスク型なので個別開発案件と比べて継続かつ累積する売上・利益が期待出来ますし、ユーザーのみなさんへも個別に開発するよりは圧倒的安価に、共通ニーズを備えたサービスを提供することが可能になると考えています。

個別開発とSaaS型サービスの提供と、一長一短あるのですが、今後はサービス提供の方もしっかり伸ばしていきたいと考えています。

CEOを補完する「なんでも屋COO」伊藤氏

ちなみにホロラボの経営者として楽しさを感じるポイントはどういったところでしょうか?

中村氏:「好き勝手できること」ですね。(笑)

 社内のメンバーが優秀なので、「こんなことしたい」と言うと、みんなでやってくれます。 

そ、それは最高すぎますね…。

当初は自分が手を動かさないことに対するもどかしさがあったのですが、ある時期を過ぎた辺りから「楽だ」と感じるようになりました。

伊藤氏:中村さん、昔は自分で手を動かせなくて悲しそうでしたが、ある時から「これは楽だ」って味をしめ始めましたよね(笑)

中村氏:そうでしたっけ?ちなみに伊藤さんは僕がやらないことを全てやってくれます。

商社出身ということもあり、日本語・英語の契約書の読み書きからオフィスレンタル、税金周りなど、スタートアップにとって手が回らないポイントをくまなく対応してくれます。

伊藤氏:確かに、前のキャリアは全てホロラボのためにあったんじゃないか、と思うぐらい前職の経験が活きていますね。

とても良い関係で経営されていらっしゃるのがひしひしと伝わってきますね。

知られざるホロラボの組織の裏側

それではここからは組織やカルチャーの話に入っていきたいと思います。

ちなみに御社に参画されている方は、どういった経歴の方が多いのでしょうか。

中村氏:2017~2018年に関してはもともとの所属会社などでHoloLensをやりたいんだけど出来なかった人が来てくれることが比較的多かったように思います。

2019年に入ってからは他社でHoloLens触ってたけど、うちに来てくださる方が増えましたね。

「人材のブラックホール」と言われるほど求心力があるイメージなのですが、その強さの源泉はどこにあるのでしょうか。

8月~9月に新しく加入した5人のメンバー達。

(国内外の各種メディアに取り上げられた「銭洗弁天VR」でお馴染みの龍さんも参画)

中村氏ホロラボのツイッターアカウントがあって(2019年9月現在)1,400人ほどフォロワーがいるのですが、結構な比率で社員個人アカウントからのTweetをRTしてるだけだったりします。

通常の企業アカウントですと、オフィシャルな会社としてのコメントがながれてくるものだと思いますが、社員メンバーに個人アカウントから研究開発成果などを発信することを推奨しています。

そうやって会社の中をオープンに発信することを通じて 「大人たちが遊ぶように仕事してる」という雰囲気とか空気感 が滲み出て、そこに惹かれる人がホロラボの門を叩いてくれるのだと思います。

あとはTMCN時代の顔なじみが最近複数入社してくれてて、居心地の良さというかアットホーム感もあるかもしれませんね。

似た者同士が惹かれ合っているのですね。

ちなみにホロラボらしさや組織カルチャーのような部分で言うと、どういうものがあるのでしょうか。

所属メンバーは、指名されるクリエイターになって欲しい。

中村氏:お話ししました通り、作ったものをTwitterなどで発信するカルチャーは特徴的かもしれません。

僕の経験談なんですけど、僕が個人事業主として開発で生活できるようになったのはTwitterで発信したり、ブログ書いたり、それでイベントに呼んでもらって喋ったりとか、そういう事の積み重ねから結果として指名で仕事がもらえるようになりました。

 会社のメンバーもそういう指名されるクリエイターになって欲しい というのは創業当時から言ってました。

その背景として、会社が今後どうなるか分からないからという現実的な話があります。ただでさえ黎明期の産業ですから、ホロラボだっていつ潰れるかわからない。

もし仮に潰れ多としても、自分の腕一本で生きていけるようになって欲しいと、そこは強くメッセージングしてます。

伊藤氏:ホロラボはまだ小さい会社ですが、色々と面白い仕事があるし、ドローン×MRといった面白いデバイスを使った仕事も豊富に揃えています。なるべく 個人名が出るような仕事を作るように我々も頑張っていくつもりです。 

極力 管理しない。自律的な個で成り立つ有機的組織。

現在プロジェクトはどれくらいの数になっているのでしょうか。

中村氏:今期は半年で60プロジェクトぐらいでしょうか。

伊藤氏:そこからまた増えて、結構な数になってます。大型プロジェクトが増えてきているのですが、そういった大型プロジェクトは固定メンバーで運営しつつ、PoC開発案件もありがたいことに沢山依頼を頂いています。

それだけ仕事が流動的だと、社員も新しいことを学び続けないといけないかと思うのですが、そういった環境に適用できるメンバーが多いということなのでしょうか。

中村氏:そうですね。自由にやってくれと、個々の裁量に任せています。

これくらい放り投げるのも勇気が必要なのですが、期待と責任にちゃんと応えてくれるメンバーが多くて、頼もしく感じています。

メンバーの自発性に委ね 30人の壁を突破していきたい

伊藤氏現在所属メンバー数が20名ほどに拡大してきている中で、巷で言う30人の壁(スタートアップが組織として秩序を失い始めると言われる規模感)をどう乗り越えるか?みたいなことに悩んだ事もありましたが、最近は従業員メンバーからの改善提案が具体的なアクションを伴ってたくさん出てくるようになりました。

中村氏:基本ホロラボはリモートワークなので、会話量が少ないというのが、ここ数ヶ月ぐらい前からの課題だったんです。

でも週1回月曜日だけは必ず来て、そこでウィークリーミーティングで1人2分ぐらいで状況共有みたいなのをやりはじめて、月曜日はめちゃめちゃ盛り上がります。

(ホロラボメンバー。1人1人マイホロレンズを所有)

最近は社員数が増えて、プロジェクトもたくさん増えたので「横の連携を強化していかないとね」と話し合ってます。

ファウンダーの僕ら以上にメンバーの方がよく考えてくれてて「何かあった時に誰かに聞けば解決する体制を作ろう」という事を数名の有志が話し合って、「じゃあ俺そのリーダーやるよ!」みたいな感じで現場から提案してくれたり、自発的に進めてくれてますし、本当にありがたい事です。

今の状態であれば30人の壁も突破できるという手応えはあると…?

中村氏:今の感じであれば超えられると思っています。

採用も営業も 基本インバウンド。MRは売り込むと失敗する。

伊藤氏:あと特徴的な点で言えば、 ホロラボは採用と営業にコストをかけてない んです。内部コストはかかってるけど採用のエージェトに頼むとか、合同説明会に出るとかそう言った事は一切してません。

採用に関してはほぼ自前主義なんですね。

伊藤氏:営業に関してもほぼインバウンドです。

 逆に営業するとダメなんです。こっちから売り込むとクライアントに熱意がないので、ポシャってしまう んですよね。デバイスも高いし、やらない理由は山ほどあるので。

逆に今取引している会社さんは、どちらかというとすでにMRに関心が強くて、自社にビジネスに活かしたいという熱量が高い方達ばかりです。

「自社でいきなりMR開発チームを持つ事が出来ない。でもどうにか実績を出して会社にMRを認めてもらいたい」という方々にとって、頼りやすいのが弊社なんだと思います。

だから担当者とは先方社内のMRのプレゼンスを高めるために一緒に戦う仲間みたいな感じですね。

ファイナンスの狙いとホロラボの未来

最後に、累計で1億8,000万円を外部調達した先月の報道が記憶に新しいですが、改めて御社のビジョンをお聞かせ頂けますでしょうか。

中村氏:まずはこれまで PoCで終わることの多かったHoloLensをちゃんと実務で使えるようにする というのが第一ミッションです。

立ち位置的に我々が今それをやらなきゃいけないと思っています。

調達後に投稿された、決意のツイート

伊藤氏:3年近くお付き合いいただいているお客さんがいるのですが、いつまでもお試しお試しやってるわけにはいかないという危機感もあります。

中村氏:今まではHoloLensを使って何ができるか?の検証をパートナーと取り組む形でしたが、実際の業務に組み込み、システムと連携するところをやりきるのが直近の動きになると思っています。

第二創業期への飛躍 – 採用要件の変化

なるほど、そのミッションのために必要な採用像・人材像は言語化されているのでしょうか?

伊藤氏:今まではHoloLensでコンテンツ開発ができるエンジニアさんが欲しくて、20人規模までは拡大できました。

 でもそうやってただ3DCGを表示するだけのMRコンテンツを作っていればよかった時代はもう終わりつつあるように感じています。 

 

今後は、お客さんがどういう環境でMRを使って、そのMRはクライアントの業務プロセスの中でどういう意味を持っているのか深いレベルで理解しないといけません。

 建設業であれば紙媒体でのコミュニケーションからライフサイクル含めたBIM化の取り組みだったりだし、製造業でも企画設計から開発、生産、物流、販売、アフターサービスと、お客様のバリューチェーンそれぞれの現場でMRがどのような価値を提供し得るのかを理解する必要があります。 

クライアントの現場で働いている人の目線を我々自身が持つ必要性が出てきています。

泥臭く クライアントと同じ目線で語れるパートナーに。

伊藤氏お客さんからARCHICAD使って設計してますって言われたら、ARCHICADでどう設計してて、BIMのデータがどう現場で使われているかというように、クライアントの課題と同じ目線で語れる人というのが開発・営業で必要になってきています。

中村氏 お客さんの言葉で会話できないとプロジェクトがうまく回らないし、お客さんが信用してくれないのです。 

お客さんは現場のプロで僕らと圧倒的な情報格差がありますが、それを理解しにいく努力をしなければいけません。

自分から現場に入っていくみたいな、泥臭さが必要であると。

中村氏:かなり泥臭いです。でも意外とお客さんに聞くと色々教えてくれますし、こちらがどれくらい関心を持つ姿勢・スタンスが持てるか?ということだと思います。

ハードウェア、ソフトウェア、バリューチェーンを全方位でカバーしていく。

伊藤氏:HoloLensでは今ネットワークと繋がるプロジェクトが増えています。

クライアント側だけじゃなくてシステムの設計とかサーバ側の開発なども手掛けることになってきています。

また、今まで3ヶ月の短いスプリントでやって、作って終わりというプロジェクトが多かったのですが、これからは保守・運用を踏まえた役割を全方位でやって行く必要が出てきています。

第二創業期として、劇的に変化するタイミングということですね。

中村氏:そうですね。「HoloLensのアプリ開発だけしています」というレベルではなくなっていくと思います。

サーバー側の開発や運用を踏まえた開発も増えてきていますし、クライアントハードウェアに関してもMagicLeapや、Nreal Lightなど他のMRデバイスはもちろん、iOSやAndroidベースのスマホアプリや、Azure KinectやIntel RealSenseなどのセンシングデバイスを絡めたシステムなども増えてきています。

会社のメンバーはそういう技術が大好きな人たちばかりなので、これからも根本は変わらず、技術的にエキサイティングな挑戦していきたいと思っています。

テックカンパニーとしてホロラボさんの未来が楽しみです。

本日も貴重なお話ありがとうございました!

最後に社内にいたメンバーの皆様でホロラボのポーズで一枚。

まとめ

最後までご覧頂きまして、ありがとうございました!

今回はホロラボのCEO中村薫さんとCOOの伊藤武仙さんをインタビューさせて頂きました。

MR業界の発展を引き寄せるため、常に様々な技術を取り入れて業界をリードし続けるホロラボ社の熱意と挑戦には、業界に関わる多くの方々が共感できるのではないでしょうか。

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XR-Hubでは今後も「XR企業のリーダー達のインタビュー」を通じて、読者の皆さまに有益な記事を提供して参ります。

XR-HubによるCxOインタビューシリーズはこちら


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