ARが教育を変える|活用事例・アプリから学習効果や導入メリットを分りやすく解説
VRやARがますます身近になってきた昨今、VR/ARの活用方法として注目されているのが、教育分野への導入です。
情報を3Dで表示できる点やインタラクティブであることから、XRは教育分野での応用が非常に期待されています。
今回の記事では
- AR/ARの現在の市場分析
- 教育分野へのARの活用メリット
- 教育用ARアプリ
- 実際の教育現場でのAR活用事例
といった点に焦点を当てて解説していきます。
教育関係者はもとより、ARアプリ開発者にとっても大注目の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
ARが教育現場を変える – 活用のメリットと現在の市況を分析
VRやARが子どもたちの教育にどのように役立つかを考える前に、VR/ARの現在の状況を見てみましょう。
ARとはどのようなテクノロジーか / 現在の市況
日本語で「拡張現実」とも訳される「AR(Augmented Reality)」は、実在する映像にCGなどの人工的な映像を重ねて表示させる技術のことです。最近ではARスマホゲームアプリの「ポケモンGO」によって、日本でも認知度が上がってきました。
VR(Virtual Reality)=「仮想現実」とARを合算した世界における市場規模は、2018年時点で270億ドル(約2兆9700億円)、2022年には2,087億ドル(23兆円)にまで達すると見込まれています。
まさに右肩上がりの成長が見込まれている市場なのです。
VR/ARというと、どうしてもゲームのイメージが強いですが、産業や医療の分野での活用も目まぐるしく、特に最近注目されているのが「教育分野」への導入です。
実際、教育分野へのVR/ARの市場規模も増大しており、2016年の205億円から2021年には1,870億円まで拡大すると見られています。
特に北米市場を中心に、高等教育の分野だけでも年間51%もの成長が続くとされていますから、教育分野へのVR/ARの広がりは今後一層拡大していくでしょう。
※関連記事)国内と海外のAR/VR市場規模予測と本格普及への課題
教育分野での導入が、日本のAR/VRの浸透を加速させる?
北米に比べると、日本の教育現場におけるVR/ARの浸透はまだまだこれから、といったところが実際のところです。
IT専門の調査会社であるIDC JAPANの調べによると、2022年時点での日本におけるVR/ARの分野別の支出金額のトップは「消費者向け」で6,446億円。これは主にゲーム分野向けとなります。
続いては「運輸」「組み立て」と続き、教育分野は約16.5億円で、全体におけるシェアは0.17%に過ぎません。
ただしこの数字だけを見て、日本の教育現場へのVR/ARの取り組みを悲観的に考える必要はありません。
日本市場におけるVR/ARの普及は世界的に見ても遅れていて、その最大の原因と捉えられているのが消費者のVR/ARに対する消極的な意識=ボトルネックにある、とされています。この障壁を打ち砕くのに最適なジャンルが「教育」だと考えられており、実際に多くのVR/AR開発者が、現在教育分野向けのVR/ARアプリを開発しています。
実際に開発者会議の「XRDC」が2018年に発表したレポートによると、今後注力していくコンテンツの種類として、ゲームに次いで高い支持を受けたのが「研修・教育」であり、前年の調査からも大幅に増加しています。
日本の教育現場へのVR/ARの活用も、今後ますます増えていくことでしょう。
では、具体的にARを教育分野で活用するメリットに関して解説していきます。教育分野にARを活用するメリットはどこにあるのでしょうか?
AR活用メリット1:好奇心を刺激する・学習が楽しくなる
真っ先に考えられるのが、VR/ARを活用した刺激的な教材の利用によって、子どもたちの好奇心を刺激し、より積極的に勉強に取り組むようになることです。「近年は理解よりも思考力の育成が求められる傾向にある」
と、四国大学で児童学科の教鞭をとる奥村秀樹教授は述べていますが、思考力を育てていくためには、まず「物事に対する正しい理解」が必要であることは自明の理。
そのためにARを用いた教育が役立つと考えられています。
その点、奥村教授は「学校教育でのICT(※)活用は,産業界の変化ほどには変わっていない」と述べて、教育現場へのVR/ARの積極的な活用を提案しています。
※ICT:Information and Communication Technology。「情報通信技術」の略であり、一般的に用いられているIT(Information Technolog)と大きな意味の違いはない。ただし、ITがコンピューター関連の技術を指すのに対し、ICTはその技術の活用に対して用いられることが多い。
単に文章を読解や表面的な理解だけに留まらず、様々なコンテンツを目の前に表示できるARを活用することによって、子どもたちが物事の関連性に気づき、「生徒の学び」と「理解」がさらに深まる、と奥村教授は考えています。「 現実の映像に仮想的な画像や映像,文字情報を付加することでしか表せない教育的な提示内容をできるだけ多く見つける必要がある 」とも奥村教授は述べています。
例えば、凸レンズが結ぶ光の焦点を頭の中でイメージするのではなく、実物の凸レンズにARを用いて本来は見えない、光の経路を生徒たちに見せれば、より容易に光の屈折と焦点に関する理解を得ることができるでしょう。
※参照文献:「AR 等の新しい技術を教育現場に普及させるための視点に関する一考察」/ 奥村英樹市
AR活用メリット2:情報が3Dで視覚化され、理解が促進される
ARは幼児の「概念理解」のスピードの向上をもたらすなど、幼児教育の分野においても力を発揮します。関西大学学術リポジトリの「ストーリー性を付加したARキャラクタインタラクションのよる表音文字学習システム」と題する論文の中では、幼児が表音文字を理解しやすくするための助けとしてのARの活用が論じられています。
表音文字とは、文字それ自体に意味を持たない文字のことで、英語のアルファベットや日本語の平仮名などが相当します。
文字自体に意味はないため、初めてその文字(言語)を学ぶ際には他者の発音によってその文字の読み方を覚え、文字の並びとその並び(単語)が何を意味するかを理解しなければなりません。
論文では平仮名のカードのARマーカーを取り付け、ある単語を並べたときにはその動物がARで表示されるように設定しました。
例えば、「う・さ・ぎ」とカードを並べるとうさぎがARによって表示され、「く・ま」と並べると、くまのキャラクターが表示されるといった具合です(上の画像のイメージ)。
逆に、先にうさぎのキャラクターを表示させ、平仮名を正しく並べられる作業も行えます。カードや並びが間違っていれば、ARで「△」や「×」を表示させるわけです。
このように、ただ単に平仮名のカードを並べる言語教育と、ARを用いた単語習得のレッスンを比較したところ、 明らかにARを用いたほうが理解が早くなることが実験によって明らかになりました。
まさしく、情報を3Dで視覚化することによって理解が促進されることが証明されたわけです。
※参照文献:「ストーリー性を付加したARキャラクタインタラクションのよる表音文字学習システム」
こうした実験は海外でも広く行われていて、学校の授業にARを用いたクラスを調査した結果では、82.7%の生徒がARを教材として用いた授業の内容により強い関心を示し、81%の生徒が授業の理解度が深まった、と報告されています。
インタラクティブな3Dデータを授業に上手く活用することによって、子どもたちの理解が確実に進むのであれば、教育分野にARを活用しない手はないでしょう。
AR活用メリット3:アプリ化されることで、学習時間や場所の制約が無くなる
学習分野にARを用いることのメリットは、子どもたちの理解の促進だけにとどまりません。
様々なアプリを活用することによって学習時間や場所の制約がなくなり、従来不可能だった学習方法も可能となります。VR/ARを事業の柱の一つと位置づけている株式会社ドワンゴは、マイクロソフト社が開発するMRヘッドマウントディスプレイ(※)、「Microsoft HoloLens」を利用した多人数同期コンテンツ配信システム「DAHLES」の教育現場への活用を促進しています。
※MR:Mixed Reality。「複合現実」と訳され、VRとARを組み合わせた技術。現実世界と仮想世界をより密接に融合し、バーチャルの世界をよりリアルに感じることができる。
「DAHLES」はHoloLensなどのデバイスをリアルタイムで動悸し、複数人数で同じ空間表示を共有することができます。
複数の生徒を一度に教える学校教育において、この多人数同期システムは肝心要のシステムと言えるでしょう。
またこの「HoloLens」を利用すれば、遠隔地のクラスを同時に受け持ったり、逆に授業の様子を記録して別の時間や場所で授業を受ける「タイムシフト授業」なども可能になります。通常の対面教育と通信教育のメリットを活かしつつ、さらに遠隔地の子どもたちが最先端の授業を同じように受けることができるようになります。
また没入型のVRデバイスとは異なり、「Microsoft HoloLens」は視界を遮ることなく、デバイスを装着したままノートを取ることもできるため、生徒たちも違和感なく授業をすすめることができる点もメリット。
このように、ただ「単に教育現場にARを取り入れる」ということではなく、それぞれの授業内容や現場の状況に適した最適なアプリを利用することによって、これまではできなかったような授業内容や新しい教育の形を生み出すことができるようになるのです。
教育事業者や教育現場でのAR活用のご相談はこちら
また、ここまで教育現場や、教育系の企業がARを活用する際の方向性やメリットをを解説してきましたが、本メディア「XR-Hub」を運営している株式会社x gardenはAR/VR事業コンサルティング・開発事業を展開しています。
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最新の海外事例も!AR教育アプリ・ツール4選
ではここからは、実際に教育現場でARを活用している実例をいくつか見てみましょう。
1, Googleが提供するAR教育アプリ「Expeditions」
VR/ARを積極的に展開しているgoogleは、教育分野へのARの活用にも力を入れており、教育用ARアプリ「Google Expeditions AR tours program」を無償公開しています。
「Google Expeditions AR tours program」は同社の提供する教育用VRアプリ「Expeditions」のAR版(公式サイト)。
「Expeditions」では世界中の様々な場所を360度のVR映像で視聴することができ、海外の美術館や噴火する火山の火口など、通常では行くことが難しい場所もリアルに体感することができます。いわゆるVR版『社会見学』のようなものですね。
「Google Expeditions AR tours program」では芸術や生物などの文化的な特徴に焦点を当てており、Google社のブログでは「VRは他の場所へ行ってみるのに役立つ一方で、ARはそこで見つかる”モノ”についてより詳しく知るのに役立ちます」とその意義を説明しています。
「例えば実物大のアフリカゾウが教室を歩き回ったり、美術館にある古代ギリシャの彫刻を自分の机の上で見たり、といった経験ができるわけです(同ブログより引用)。
「Expeditions」アプリのARモードを利用すれば、火山の爆発や激しい竜巻などの教室では決して見ることができない現象や、それらの現象の内部メカニズムをリアルに体験することができます。
上の動画でも「AR tours」を使った授業で、子どもたちが火山の噴火する様子を観察したり、竜巻の発生のメカニズム、宇宙空間の少隕石などを「観察」しています。
映像の中で女の子が「これまで見たことがない、人間の体の中で細胞がどのように分裂するかを見ることができました。とてもクールな体験でした」というコメントを述べているのが興味深いですね。
通常では決して見ることができない世界を体験することは、その授業における理解を深めることはもちろん、子どもたちの好奇心を刺激し、より深い思考を促す助けになることは明白でしょう。
※Google Expeditionsをダウンロードしたい方はこちらから(iOS/Android)
2, iOS向け幼児教育ARアプリ「Wonderscope」
Googleだけではなく、Apple製デバイス向けのAR教育アプリももちろん存在します。
それが、室内が絵本の物語の世界になるアプリ「Wonderscope」です。
「Wonderscope」では、現実の空間が絵本の世界の延長線上になります。絵本の登場キャラクターたちがテーブルやベッドの上に現れ、物語を展開していきます。
ただ単に本を読むのではなく、キャラクターたちと会話を行うことによってストーリーが進むというインタラクティブな世界は、きっと子どもたちを魅了することでしょう。
子どもの頃にお気に入りの絵本を読んでワクワクした気持ち、登場人物に感情移入してドキドキした感情を覚えていますか?
「Wonderscope」は、そうした子どもたちの感情をよりかき立てるアプリケーションです。
ユーザーが物語に書かれているセリフを話すと、ARで現実世界に表示されたキャラクターがユーザーの目を見て答えます。
それは絵本の世界と現実の世界を結びつけ、子どもたちの豊かな感性をより一層育む体験となるでしょう。
「Wonderscope」は主に幼児教育の分野での活用が見込まれていますが、このシステムを応用したアプリであれば、ハイ・ティーンの少年少女たちはもちろん、大人たちも魅了されるに違いありません。
現在は英語のみの提供ですが、早く日本語に対応してもらって幼稚園や保育園で活用したいですね。
3, 楽しく遊んで学ぼう!教育用AR玩具「Merge Cube」
スマホ用のVRゴーグルなどを製造しているMerge VR社が手掛ける教育用AR玩具が「Merge Cube」です。
これはまるで「天空の城ラピュタ」の飛行石を思わせるような、不思議な模様の入った立方体(キューブ)ですが、AR表示させることによって様々に変化していきます。
万華鏡やロケットなど、単純におもちゃとしてみても楽しいMerge Cubeですが、惑星の自転・公転を表示したり、人間の頭蓋骨を見たりなどと、教育目的にもしっかりと使えます。
子どもたちにとっては、遊びながら学べることが一番の学習方法。
Merge Cubeは子どもたちの好奇心を刺激しつつ、これまで見たことがない世界への関心を駆り立てるのにきっと役立つでしょう。
Merge Cubeの販売は現在のところ、アメリカのウォルマートのみ。こちらも早期の日本での発売が望まれます。
4, HoloLens用の本格的なAR教育アプリ「Lifeliqe HoloLens」
「Lifeliqe HoloLens」は、マイクロソフトのMR対応デバイス「HoloLens」に対応する教育アプリです。
科学、技術、工学、数学の分野を教える「STEM教育」に特化しており、現実空間に投影された様々な3Dモデルを通して学ぶことができます。
上の写真のように、空中に投影されたモデルをタップするとサメの骨格や臓器の様子が映し出されます。指のピンチでサイズ変更も自由自在。
これならば、科学に興味がない子どもでも退屈することなく学ぶことができるでしょう。
Lifeliqe HoloLensには合計10個のレッスンプラント、20種類の3Dモデルが用意されています。いずれもアメリカ統一の学力基準・Commo Coreに準拠しているため、全米の教育レベルの水準に合わせた学習プランを提供できます。
扱う教科も化学や解剖学、地質学に物理学など様々。
Lifeliqe HoloLensを使った3D教材で学んだ子どもの86%が、テストの成績が向上したという研究結果も報告されています。
これからは、こうしたARアプリを用いて学ぶのが当たり前になっていきそうですね。
効果はいかに?ARが教育現場に利用された事例3選
ARアプリをつかった教育アプリの学習効果は、実際のところどれくらいのものでしょうか?
ここからは、実際の教育現場にARを導入した事例を通して、メリットや目的にかなうARの使い方を見ていくことにしましょう。
1, 海外の教育現場でのAR活用例
まず最初に、教育現場へのARの活用が進んでいる海外の事例をいくつか見てみましょう。
(1) ARで人体模型(イギリス / Curiscope社)
学校の理科室にある人体の標本骨格を不気味に感じて、勉強意欲を削がれた経験を持つ人も少なくないのではないでしょうか?
イギリスに本社を構えるCuriscope社が提供する「AR人体模型」を用いれば、人間の体の内部構造について興味深く学ぶことができます。こちらの40秒の動画をご覧ください、
お分りいただけましたでしょうか?
ARで表示される骨格や臓器は友達や自分自身のもの。もちろんそれらはバーチャルのものですが、子どもたちにとってはまるで本当に人体を覗き込んでいるかのような感覚に陥るでしょう。
「AR人体模型」の使い方はとっても簡単。スマホにアプリをダウンロードして、骨のイラストがプリントされた専用のTシャツを着るだけです。
スマホをかざせばTシャツを着た人の内部が映し出されます、スマホのインカメラを利用すれば、自分の体内も見ることができます。
しかも映し出されるのは静止画像ではなく、心臓が脈打ったり、血液が流れるリアルな様子が映し出されます。
これならば、物言わぬ人体骨格模型に目を背けるような子どもにも人体への興味を抱かせることができるでしょう。
(2) AR教育アプリ「zSpace」(アメリカ)
アメリカの教育現場で用いられているのが、zSpace社が展開するAR教育アプリです。
zSpaceの製品はスクリーン、ペン、メガネの3つからなり、メガネをかけてスクリーンを覗き込むと3Dの映像が表示され、ペンを使ってそれらを自由に操作することができます。
昆虫や蝶々などの生き物、地球やメカの内部構造など、zSpaceを使って見ることのできる『世界』は多種多様です。
これまで図鑑の中や想像の中でしかなかった世界が目の前に表示されるとき、子どもたちには驚きとともに歓喜の表情が浮かびます。
学びたい気持ちを呼び起こし、学習経験に革命を起こす。zSpaceはインタラクティブで直感的な操作方法で子どもたちの好奇心をくすぐります。
全米での小中学校へのzSpaceの導入はすでに100を超え、現在や大学や図書館への導入も広がっているとのこと。
zSpaceはまさに学校教育にイノベーションを起こす、画期的なツールなのです。
(3) AR/VRの遠隔講座で学生間の交流を(アメリカ/ペンシルベニア州立大学)
アメリカのペンシルベニア州立大学はアメリカの優秀な州立大学を示す「Public Ivy」の一校に数えられる研究型の大学です。
そのペンシルベニア州立大学の夏期講座にVR/ARのオンライン講座が導入され、世界中のどこからでも受講が可能になりました。
ペンシルベニア州立大学の遠隔教育の歴史は古く、1892年にはラジオを使った講座が開かれました。そうした背景もあるため、インターネットの誕生と一緒にオンライン教育を進めてきたのも自然の流れだったのでしょう。
アメリカの教育現場では一般的なオンライン教育ですが、問題点も少なからず存在します。その中でもよく取り上げられるのが、クラスメイトの顔が見えず、教授との対話式の会話も行えないという点でしょう。
そうした問題点を解決するために導入されたのが、VR/ARを用いた遠隔講座なのです。VR/ARによって、まるで目の前に教授がいるかのような環境の中で講座を受講することができますし、リアルタイムの相互通信も可能。
ペンシルベニア州立大学では、将来的にもこうしたヴァーチャル教室での講座を拡大してく予定だそうです。
※参考記事:ペンシルバニア州立大学公式サイト
2, 日本の教育現場でのAR活用事例 – N高等学校がHoloLensを使用
日本では教育現場へのVR/ARの活用が遅れていると最初で述べましたが、実はすでにARを積極的に用いている高校があります。
それがN高等学校(※)です。
※N高等学校:N高等学校(通称N高)は、角川ドワンゴ学園が2016年に沖縄県うるま市に開校した通信制の私立高校。授業やレポート提出は基本的にインターネットを通して行い、旧来の教育システムや教育方針を変える新しい形態の高校として注目を集めている。
N校ではもともと授業でのネット活用が当たり前に行われていましたが、HoloLensを使ったMR空間での多人数での授業も取り入れられています。先に紹介したHoloLensを多人数で用いるためのシステム「DAHLES」は、まさにN高での利用を真っ先に想定したものだったのでしょう。
DAHLESを利用することによって、多人数にリアルタイムで同じ映像を表示させて授業を行うことができるわけです。
そんなN校のARへの取り組みが顕著に現れているのが、入学式でしょう。
なんとN校の入学式では新入生が最初から最後までHoloLensを着用し、入学式に臨みます。
沖縄本校以外にも全国にキャンパスを持つN高の入学式では、来賓の挨拶もARを使って遠隔地から行われます。
目の前にホログラム映像で現れる来賓の挨拶の様子を見ていると、一気に未来の世界がやって来たかのよう。
通常の授業でも同じシステムを用いて遠隔授業が行われるN校では、教育現場へのARの活用が「当たり前」となっています。
様々な事情で学校に登校できない子どもたちでも、こうした高校があれば自由に学ぶ権利を放棄しなくとも学び続けることができるかもしれません。
対面教育と通信教育のメリットをうまく融合させたN高の取り組みには、これからも目が離せませんね。
3, 幼児教育へのAR活用事例
VR/ARを用いた教育は、幼児教育の分野への活用も期待されています。
その点に関し、静岡理工科大学の小杉大輔教授と手島浩詞が行った実験では、ARを用いた幼児用教育教材の有用性が証明されました。
実験の中では、食べ物のイラストが書かれたマーカーをWebカメラで撮影すると、イラストの食べ物の持つ主な栄養素がARで表示されます。
この食育カードを15名の保育士に手渡して子どもたちに遊んでもらい、結果を集計したところ、幼児は本教材に強い興味を持ち、カードやAR画像にも積極的に働きかけたとのこと。
物事を直感的に捉え、反応を示す幼児には、ARを用いた教育教材がとても有効的なのでしょう。
(参照論文:「 AR 技術を用いた幼児用教材の開発と評価 」)
まとめ – XR-HubではXR事業コンサルティングも行なっています。
学習現場へのARの導入は時代のニーズと必要に応じたものになるはずです。子どもたちの知的好奇心を刺激しつつ、正しい理解を自ら得、深い思考を促すARを用いた教育はまだまだ始まったばかりですが、有用性は既に証明されつつあります。
XR-HubではARに精通した起業家による導入コンサルティングを実施しており、国内の大手企業を中心に多数の導入支援実績があります。
国内外の事例収集や事業規模の産出・事業計画書の策定からアプリ・デモの開発まで一気通貫でのハンズオンでの支援が可能です(自社でXRエンジニアを採用しています)
- ARやVRを教育で活用することを検討している
- (教育機関や教育系の企業の方で)ARやVR事業を立ち上げたい
こんなニーズがある方にはコンサルティングを行なっておりますので、
もし「話だけでも聞いてみたい」と興味がありましたらこちらからお問い合わせください。
※関連記事:【2019年最新|ARビジネス活用事例11選】効率化や精度の向上などAR化のメリットに迫る
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