観光でのAR活用事例|アプリ・パンフレットによる町おこしプロモーションの効果やメリット
観光立国推進のために国策で進めらているAR観光アプリをはじめ、観光領域でのAR活用は事例が増加傾向にあります。
3DCGをスマホやグラスに投影した「単なる外国人向け観光ガイド」だけでなく、歴史ブームや、人気アニメの舞台設定などを取り込んで、町おこしに利用されていることが大きな特徴です。
スタンプラリーやオリジナルフレームでの写真撮影などの機能もあり、イベントの企画にも活用されていて目が離せません。
今回は、
- 観光業界でARが重宝される理由
- ARが活用された事例
- アプリ編
- 観光パンフレット編
- 観光へのAR活用の企画・開発に強い企業
など、観光領域におけるAR活用の事例やポイントを詳しく紹介します。
地域活性化のプロモーションための観光地向けARサービスの活用により紙媒体だけでは伝えることができない街の様子や情報をアピールできるようになりますので、企業・自治体担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
Contents
なぜARと観光なのか?ARと観光の相性が良い2つの理由
観光用AR(拡張現実)アプリの増加を始め、観光領域でARを活用した事例は非常に増えてきています。
国土交通省も「ARによる訪日外国人旅行者への案内情報の提供に向けて」とガイドを出しており、国家規模でツーリズム領域におけるARの活用を推奨しています。
そもそもARが観光領域での活用が期待される背景としては大きく
- 利便性:多言語対応や映像での説明が可能。訪日外国人の方が現地の博物館などでも理解を深めやすい
例)美術館の展示の説明テキストを、多言語で3DCGで表示する etc… - 観光内での新たな価値創造:ARにより、現実空間に演出を付け加えることで観光地の魅力を引き出すことが可能
例)現地の風景をより楽しむ演出をARで付与する/アニメの舞台(聖地)にARでキャラクターを出現 etc…
の2点と言えます。
では、それぞれに対して詳しく解説していきます。
⑴AR(3DCG)は多言語、映像で投影可能。訪日外国人を始め、言語の障壁を払拭できる
観光立国の推進のために訪日外国人旅行者の増加が期待されていますが、我が国の観光地を国際競争力のある魅力的なものとするためには、外国語での案内標識や観光ガイドが必須でした。
そこで、国土交通省は低コストで分かりやすい案内情報を提供するため、スマートフォンを利用したAR(拡張現実)による案内情報の提供を推進したのです。
ARは
- 看板や説明文章を、ユーザーに合わせて多言語で表示することが可能
- 動画(映像)での表示も可能
といったメリットがあり、各名所の歴史や背景といった情報を適切に英語で表示してくれたり、目的地までの道案内等もしてくれます。
外国の方も、より日本を楽しんでくれるでしょう。
⑵観光地の新たな価値創造が可能
2点目は、観光地での新たな価値創造。
アニメや映画の舞台となった実際の場所をファンの方が訪れる「聖地巡礼」は近年一層の高まりを見せていますが、
- スマホやARデバイスをかざすと、キャラクターがARで現地に出現する
- 原作の名シーンがARで再現される
といった形でARは聖地巡礼におけるプロモーションを強化することが可能です。
また、自然の風景の美しさをCGで一層際立たせる演出や、「現在見ている風景を3DCGで四季の風景に変化させる」といった形で 観光地の魅力を引き出す様々な企画・開発が可能 。
観光客の呼び込みの強化や、観光客に対する体験満足度の向上、といった「価値創造」といった点でもARは大きく貢献するのです。
価値創造の例|ARで歴史やアニメとコラボし、町おこしへ
ARが聖地巡礼との相性が良い、というのは上記のとおりですが、その背景としては、ARがVRと異なり現地体験型であることが挙げられます。
AR観光は外国人観光客向けのガイドだけでなく、史跡の再現やアニメとタイアップした町おこしにも活用されています。
というのも、VRは仮想空間での体験である一方で、ARは現地で実際に体験します。
よってARをプロモーションで活用する場合、実際に観光客にその地に足を運んでもらう理由(=「なぜ、その地でそのコンテンツを体験することがユーザーにとって価値になり得るのか」)という点を設計する必要があります。
この際、非常にアイディアの候補になりやすいのが、
- 歴史(=過去、その地でかつて発生した事象を模擬体験する)
- アニメ・ドラマ・漫画(=その地が登場する作品のファンの観光を促進する)
の2つなのです。
現在は歴史ブームであることや海外を含めて日本のアニメはファンが非常に多いことから、これらの2点を積極的に活用した事例が多く存在するのです。
経済産業省からの観光への補助金も後押しに
また、加えて経済産業省からはVR・ARやドローン活用に地域に関する製品・サービス、観光、スポーツ等の魅力をプロモーションし、地域活性化に資するコンテンツを制作する事業に係る補助金も用意されました。
観光ARアプリもこれによりプロダクトが変化し、当初はビーコン機器連動のモバイルアプリが多かったのですが、ポケモンGOのヒットにより、ユーザー側のコスト的にも安価なGPS連動やARマーカーによるARアプリが主流になりました。
AR技術の急速な進化により、利用者は観光地でスマートフォンを対象物にかざすだけで母国語音声による観光ガイドを付けることや、日本語表示の看板をARによって母国語でオーバーレイ表示させて理解することができるようになったのです。
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歴史ARが人気?町おこしで活躍する、ARを活用した観光アプリ・事例6選
ここからは、現在の活用事例ベースで観光用ARアプリ・サービスを6つ紹介していきます。
スマートフォンをかざせばあらゆる情報・コンテンツが手に入るエンターテインメント性に優れた厳選アプリなので、ぜひチェックしてみてください。
⑴MapFanインバウンド観光アプリ「多言語対応!楽しいARナビ」
訪日外国人向けに、おすすめの観光地や観光地への行き方を紹介する、iOS/Android用観光ガイドアプリ「多言語対応!楽しいARナビ」。
外国人観光客に観光地の名所に訪問してもらい、写真を撮ってSNSで母国の人に拡散してもらうことで更なるインバウンドが見込めます。
日本には素敵な名所旧跡が多く存在しますので、外国人観光客の訪問数を強化したいという自治体・企業の方は活用を検討してみると良いでしょう。
⑵観光ARスマホアプリ「かんぷら」
観光用ARアプリの代表格、「かんぷら」。
観光客は現地の情報を入力するとアプリがワンストップで対応してくれ、その場所で織り込まれたプロモーションを存分に楽しむことができます。
機能面も、AR機能「エアタグ」やルート案内、スタンプラリー、ビーコンを始め楽しい機能が豊富で、多言語対応もしているので外国からきたご友人がいれば、是非紹介頂ければと思います。
観光客の呼び込みを強化したい自治体・企業担当者の方は要チェックです。
⑶当時の景観を再現!「バーチャル平安京AR」
もちろん観光アプリは外国人向けのものだけではありません。
ARならではの面白い使い方ですが「消失してしまっている天守閣や昔の建造物」をCGで復元したアプリが存在します。
この取組は各地の自治体を中心に行われており、大掛かりなものでは立命館大学が作成した「バーチャル平安京」です。
AR技術を用いて平安京の景観をCGで再現し、実際の風景にスマホをかざすと天皇在所の大内裏内や朱雀門、羅城門といった平安の都が浮かび上がります。
※アプリのダウンロードはこちらから
⑷漆黒の大坂城豊臣天守がARで甦る!「AR大坂城豊臣天守」
城の天守閣をARで再現する観光アプリは大変人気。
株式会社ジーンによるスマートフォン・タブレット向けアプリ「AR大坂城豊臣天守 戦国最後の戦い -大坂夏の陣-」は人気を博しました。
これは、豊臣秀吉が建てた漆黒の大坂城豊臣天守と、夏の陣に参陣した真田幸村・徳川家康など4人の武将をARで楽しめるアプリです。
現在の白い大阪城の隣に黒い大坂城がARで出現し、炎上するという史実に基づく演出が入っています。
幸村や家康、政宗ら人気武将とARで記念撮影できる点も、歴史ファンからすると嬉しい機能ですね。
※すでに本アプリはクローズしているようです。
⑸AR御朱印が登場!【公式】御朱印AR「紅葉八幡宮」
若干アプローチは異なりますが、「御朱印帳」がARになったアプリまで登場しました。
そもそもARはスタンプラリー向きのソリューションではあるものの、視点が新しく非常にユニークなアプリです。
ご利益があるのかどうなのかが気になってしまいますが…。
⑹アニメの舞台をめぐる聖地巡礼ARアプリ「舞台めぐり」
アニメ「ゆるキャン△」3話までのスポットが舞台めぐりに登場!
舞台は山梨県、各スポットではキャンプをしたり日常生活を送るリンたちのARが登場します。なでしこが感動した千円札の裏の富士山も見られるかも…?
4話以降のスポットも続々登場予定です!お楽しみに♪#ゆるキャン #舞台めぐり pic.twitter.com/s5sgKTK4ed— ”舞台めぐり”公式 (@butaimeguri) 2018年4月20日
観光ARアプリで、もう一つ大きな人気を誇るのがアニメの舞台をめぐる聖地巡礼ARアプリ。なんといっても代表例は「行けるアニメ! 舞台めぐり」でしょう。
特定の位置情報にARで出現するアニメキャラと写真を撮り、日記として保存可能なアプリで、ラブライブやシュタインゲートなどとコラボしています。
人気アニメ「ガールズ&パンツァー」が茨城県の大洗、「ゆるキャン△」が山梨や静岡と、地方が舞台になっているアニメは多いのですが、ストーリーに沿った形でファンが旅をするはファンからすると非常に良いエンターテイメントコンテンツになります。
かつては「最初はキャラクターの看板などがあるだけ」だったのですが、ARアプリにより実際にキャラクターをスマホ画面内にリアルに表示できるケースが増えてきました。
番外編|箱根補完計画 ARスタンプラリー
人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の舞台である第3新東京市が箱根、ということは知っているファンが殆どでしょう。
2014年には箱根でもエヴァンゲリオンのARスタンプラリーが企画されました。
このように地元とタイアップする形でアニメ自体も風景が丁寧に書き込まれ、ファンは印象的なシーンを背景にARで再現されたキャラクターと一緒に写真を撮るのです。
日本のアニメは世界的な人気を誇る作品が多数あり、海外からやって来るファンも多く、大きな町おこしの形になっているのです。
視覚的に理解を促進する|観光パンフレットでのAR活用事例
観光パンフレットにおいてARを活用するケースも有ります。この際、技術的には大きく2つのアプローチが可能で、
- QRコードからWebAR(ブラウザ型、インストール不要でAR体験が可能)を起動
- QRコードからアプリをインストールし、AR体験
となります。
※WebARとは?
現状、WebARの観光ユースケースは少なく、基本的には「2(観光パンフレットからアプリインストール)」という形になります。
⑴大多喜町観光協会と養老渓谷観光協会が観光パンフレットにARを導入
本多忠勝が城主だった大多喜城や、養老渓谷などで知られる千葉県夷隅郡大多喜町は外国人観光客向けパンフレットを作成し、その中でAR技術を活用しました。
NTTコムウェア社開発のアプリケーション「PictuAR」を活用し、アプリ内のカメラを使用しパンフレット上の写真を撮影すると、関連する画像が複数出現するという機能を持たせました。
大多喜城や城下町の景観、ユネスコアジア太平洋遺産賞を受賞した大多喜町役場の庁舎、養老渓谷の風景を始めとした10種類の写真にAR機能を持たせ、ARで出現する画像は通常見られない貴重な画像とのこと(建物内の内部写真など)。
⑵長崎県の九十九島動植物園がパンフレットでAR活用
長崎県の九十九島動植物園は森きららの園内パンフレットにARを導入ました。
※スターティアラボ社の「COCOAR」を使用
パンフレットにARマーカーを印刷し、「COCOAR」をインストールしたユーザーがマーカーにカメラをかざすとペンギン館のCM映像やペンギンたち日常のキュートな姿を楽しむことが可能。
来場者の体験満足度を向上させる、ARを用いた有効な試作であると言えます。
観光産業の未来|XR(AR/VR)により隣接領域で生まれるビジネスを考察
ARのみならず、Oculus Questを始めとしたVRのデバイスも普及し始めており、ツーリズム領域においてはVR観光体験アプリが人気を博すと想定されます。
いわば家にいながら観光地巡りができる、というコンテンツがメインになると想定されますが、XRを最大限活用することで、
- 現実空間との連携:
仮想空間でVR体験しているユーザーの行動が、現実空間を観光しているユーザーに影響する(ARで同伴旅行、など)/その逆のパターン - 購買活動の促進:
仮想空間でのコンテンツ体験やお土産の購入など、仮想空間内でも現地での体験を踏襲した観光ビジネスが生まれる - マルチプレイかつインタラクティブなAR体験:
MRデバイスを着用した複数人が同一のオブジェクトに同時に干渉する体験が当たり前になることで、現地で体験するコンテンツもアップデートする
といったような形で、様々な「XRツーリズム」の可能性が生まれ、観光業界は一層の成長が見込まれます。
観光産業の方々は、観光客の呼び込みにXR活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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- AR観光アプリの開発やパンフレットへの導入を検討している
- ARやVRを現地のプロモーションで活用したい
- ARやVRをつかった何かを企画し、人を呼び込みたい
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国策として推進されたAR観光アプリですが、単なる観光案内だけでなく、エンターテイメント要素を訴求できる「ARならではの使い方」が広く浸透しています。
AR技術やCG技術の向上により、さらなる高機能化が予想されますが、経済効果も非常に大きく、ますますAR観光アプリには注目が集まりそうです。
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