Google Glassはオワコンじゃない?「第二世代」現在の姿と今後の展望
Googleが2012年に発表したメガネ型ARデバイスは「Google Glass」のニュースはまたたく間に世界中を駆け巡り、先進的なデザインと目の前にAR(拡張現実)を表示して生活をサポートするという発想が、多くのガジェットファンを虜にしました。
プライバシーへの懸念などから一般発売は中止となり、「Google Glassはもう終わった」と思っている方も多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。
今回はGoogleが引き続き研究と開発を続ける「Google Glass」のこれまでの歩みを振り返りつつ、現状と未来について考察してみましょう。
Contents
Google Glassとは?スペックや価格・購入方法
漫画ドラゴンボールでベジータたちが装着していた、戦闘能力や探索機能を備えたメガネ型の装置「スカウター」。
そのスカウターにそっくりということで話題になった「Google Glass」のことを覚えておられる方も多いでしょう。では、Google Glassの概要について解説していきます。
ARツール・Google Glassの概要・価格
- 2012年 Googleが「Google Glass」を発表
- 2013年 テスト版となる『Explorer Edition』の発売をアナウンス (ローンチせず)
価格:1500$ - 2015年 一般販売しないまま、販売終了
- 2017年 新型のGoogle Glass、『Glass Enterprise Edition』を法人限定商品として販売
(「第二世代」)
スカウターにそっくりなメガネ型ウェアラブル端末、「Google Glass」の開発と発売をGoogleが発表したのは2012年のこと。
メガネの一方のフレームに、透過型のディスプレイやマイク・カメラ機能などを備えた「Google Glass」は、写真や動画の撮影、通話、ナビゲーション、スケジュール管理等を視界に表示させ、視界を塞がずに日常生活を行いながらハンズフリーでスマホ機能をもたせた未来のデバイスということで世間の注目を集めました。
2013年には主に開発者や各分野で活躍する人を対象に、テスト版となる『Explorer Edition』の発売日がアナウンスされましたが、1500ドルもする価格の高さと、あくまでもテスト版ということで一般への発売は見送られました。
ですが、逆にその希少性からさらに関心も高まり、当時は「Google Glass」の予約や販売を謳う詐欺まで現れるほどでした。
しかし、注目度の高さと比例するように、「Google Glass」に対する懸念の声も次第に大きくなっていきます。
一番のやり玉として取り上げられたのが、「Google Glass」の撮影機能です。
ウインクするだけで動画や写真の撮影ができるというその機能性から、
- 盗撮などのプライバシーに関する問題や
- 運転中の脇見運転
といった危険性が取り沙汰されるようになりました。
また、小型デバイスゆえのバッテリーに対する懸念、アプリや通知などの見え方がはっきりしない等の問題点も指摘され、ついに一般発売の日を迎えることなく、2015年テスト版「Google Glass」の販売が終了となりました。
しかし、Googleは「Google Glass」に見切りをつけたわけでも、開発自体を中止したわけでもありません。
2017年には画面を大型化、処理速度や駆動時間を改善した新型の「Google Glass」、『Glass Enterprise Edition』を法人限定商品として販売を再開したのです。
旧型が開発者や各分野でのスペシャリストを対象に、「Google Glass」の可能性を模索する『Explorer』すなわち『冒険者』モデルだとすると、新型の『Enterprise Edition』は文字通り、『企業向け』のデバイスとして発売されました。
見た目もさらにスッキリとなった新型「Google Glass」。旧モデルよりも軽量化しつつも課題だったバッテリーの駆動時間を改善。さらにAtomを採用し、演算能力も向上させ、画面の大型化と併せてかなりのスペックアップとなっています。
あくまでも法人向けモデルのため、一般発売はされていません。
Google Glassの購入方法
Google Glassは一般向けに販売されていませんが、いくつかの方法で購入することが出来ます。
1.Amazonで購入する
実はAmazonで購入することが出来るんです。
開発者向けのGoogle Glassになりますが、20万~25万程度で購入可能。気になる方が入れば是非チェックしてみて下さい。
2.【第三世代】Google Glass V3.0 2GB RAM グーグルグラス XE-C 開発者向け (White ホワイト)をチェックする
2.メルカリなどフリマアプリから探す
以外ですが、ディベロッパー向けのGoogle Glassはメルカリ等フリマアプリに出品されています。
前提数は多くない点、また中古品という点は注意する必要がありますが、
- 価格を抑えられる
- 通常出回っていないモデルも稀に出品される
という点は魅力的です。
あくまで中古品かつ個人出品ですので、購入前にAmazonで本物のモデル情報をしっかりとチェックし、コメント機能で出品者にどのモデルか確かめることを推奨します。
ARグラス『Google Glass』の使い方
では、この「Google Glass」を使って何ができるのでしょうか?
「Google Glass」は眼鏡に透過型ディスプレイを搭載してたスタイルになています。
網膜に直接映像を投影する網膜投影モデルとは異なり、あくまでもグラスに画像を投影し、現実空間に映像を重ねて見られる『AR(拡張現実)デバイス』となります。
片目のみの投影のため、立体的に画像を表示することはできません。
網膜投影モデルと違い、シンプルな仕組みのため、将来的には一般ユーザー向けの展開も期待されています。
操作方法は本体にあるタッチパッドをスワイプすることによって、アプリや通知を管理することができます。
「Google Glass」で操作できるアプリを使ってどんなことができるか、まずはこちらの動画をご覧ください。
因みに、新型「Google Glass」の仕様は公式には発表されていません。
そこで、上記の動画と旧型機の仕様を元に、『Google Glassで出来ること』を探ってみましょう。
Google Glassの機能一覧
1.検索機能
Googleといえばもちろん「検索エンジン」がテクノロジーのベースですが、それは「Google Glass」でも同様です。
「OK, glass.~」といえば、「Google Glass」でも検索機能を利用することが出来ます。
2.通知機能
スマホと同じように、メッセージや天気予報、1日のスケジュールの通知が画面上に表示されます。
大きく異なるのが、いちいちスマホを手にしなくてもそれこそリアルタイムで目の前に通知が表示されること。同じような機能を持つものとしてアップルウォッチなどのスマートウォッチがありますが、「Google Glass」を使えばデバイスを『見る』という意識すらなくなります。そのスムーズさ・スマートさは特別な体験をもたらします。
3.地図機能
現実世界にデジタル情報を表示させるAR技術と、地図機能のマッチングは最高の組み合わせの一つです。
スマホで地図を確認する場合、なんどもスマホと目の前の風景を見比べる必要がありますが、「Google Glass」では自分が見ている景色の中に進む方角や必要な情報が表示されるため、とても便利です。
4.通話機能
「Google Glass」にはマイクも搭載されているため、アプリを立ち上げて通話を行うことができます。
同じようにメッセージを送信することもできるため、着信→返信を両手を一切使わずに完了させることが可能です。
5.顔認識機能
PCやスマホでも一般的となった顔認識機能を「Google Glass」も備えています。
「Google Glass」をかけて相手の顔を見ると、Facebookのように人物の特定や情報を表示させることができるようになります。相手の名前が分からない…というような時にも便利ですね。ただし、プライバシー侵害の恐れがあるため、個人での利用は制限されています。
スマホと同じで、アプリ次第で可能性はさらに広がる「Google Glass」。スマホを手にする必要がなく様々な機能をスマートに利用できる、まさに夢のデバイスと言えるでしょう。
【考察】Google Glassは失敗だったのか – 一般化を見送った要因
様々な可能性を秘めた「Google Glass」。しかし一般発売が見送られたのはどこに原因があったのでしょうか?
「Google Glass」が一般発売を見送ったのは、技術的な課題や失敗の原因・理由があったからではなく、主に
- プライバシーの問題が解決しなかった
- 法人向けの開発に軸足を移したこと
がその理由です。実際に企業・法人向けに「Google Glass」の開発と販売は続けられており、活用事例も報告されています。
では、今現在「Google Glass」が企業の現場でどのように用いられているのか、その様子を見てみることにしましょう。
開発者向けGoogle Glassの存在と、4つの活用事例
Googleは法人向けに『Glass Enterprise Edition』を発売するにあたって、2年にかけてテストを行ってきました。
その成果についてはGoogle自身が明らかにしていて、以下のようになっています。
1.航空製造分野
航空機の製造や修理を行っている『GE Aviation』では「Google Glass」と作業補助サービスの『Upskll』を導入することによって、作業現場でのエラー発生率が低下したほか、メカニックの作業効率が8~12%向上したと報告しています。
2.農作業分野
農作業機器を製造している『AGCO』社では、「Google Glass」導入によって組立時間が25%、検査時間が30%削減できたほか、紙のマニュアルを廃止して「Google Glass」で画像撮影・送信を行うようにしたため、作業効率が著しく向上したとのこと。
3.運送分野
国際輸送を専門とする物流会社の『DHL』では、主にピッキング過程において「Google Glass」を導入。
従来、作業員は手に「作業指示書」を持ちながら商品を運んだり、保管するといった作業をしていましたが、ARグラスに製品保管場所・配置場所などの指示を表示することで作業指示書が不要になり、平均して15%生産性が向上したそうです。
4.医療分野
「Google Glass」の活用が特に期待されているのが医療分野。
現在、医者は診察後の患者のカルテや紹介状の作成に労働時間の1/3を費やしているそうです。そのような医療現場に「Google Glass」と『Augmedix』サービスを導入することによって、
- 医師が問診をする間に自動的にカルテを作成
- グラスに必要な情報を表示する
という改善を図り、医師をサポートするとともに、患者とよりコミュニケーションを図ることが可能になっています。
※『Augmedix』:サンフランシスコの医療スタートアップ。患者の健康記録を取り扱うプラットフォームを展開。
このように、現在すでに工場や製造業、スポーツの分野などでも様々な企業の現場に導入され、実績事例を積み重ねている新型の「Google Glass」。
法人向けの『Glass Enterprise Edition』は「Google Glass」単独での提供はされておらず、各企業に合わせた先王のソリューション・サービスとセットになって販売されています。
※関連記事:
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「Google Glass」の将来
企業向けのデバイスとして再出発を果たした「Google Glass」。
現時点でも各パートナー企業での活用事例が数多く報告されていることから、実務上で「Google Glass」の活用がより一層広がっていくことは間違いありませんし、「オワコン」ではないことは明らかでしょう。
ただ、「Google Glass」はこのまま法人向けデバイスとして特化していくのか、それとも我々一般ユーザも手にすることができるようになるのか、現時点でハッキリとしたことは何も言えません。
購入方法もGoogleと提携するソリューションパートナー企業を通してからに限られているため、現時点で個人が「Google Glass」を購入する手段はありません。
プライバシーのなどの問題をクリアして、私たち一般ユーザーも早く「Google Glass」を自由に使えるようになってほしいですね。
法人向けの活用も大切ですが、プライベート向けの「Google Glass」の発売も期待しましょう。
※合わせておすすめしたい記事:
ARグラスに関する紹介記事→
Google AR(ARcore)に関する解説記事→
まとめ
未来のデバイスとして注目を浴びた「Google Glass」。一般発売が見送れられたあとも、Googleは研究と開発をずっと続けてきました。そしてそれは業務用という形で、しっかりと実を結びつつあります。
このような実績とフォローアップを継続して行っていけば、一般市場への導入も将来的には十分にありえるでしょう。
私たちの生活をより便利に、そして快適にしてくれる「Google Glass」を我々一般ユーザーも自由に使えるようになるといいですね!
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