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VRは認知症に効果があるのか?最新研究と共に解説。


VRのユースケースは近年どんどん拡大しており、認知症の治療や予防、理解促進の分野にも広がっています。
今回はVRが認知症の治療や理解促進のためにどのように活用されているのかについて詳しく紹介していきます。

VRが認知症に効果があると言われる根拠とメカニズム

VR認知症

VRの利用場面は医療にも広がりを見せており、日本でも社会問題となりつつある認知症への応用も期待されています。

認知症は脳の神経細胞が減少したり、機能不全を起こしたりすることによって認知機能に障害がでる病気で、体験したことを丸ごと忘れる、判断力が低下するといった症状が表れます。
中には日常生活に大きな支障をきたすようになり、暴力的になる人もいます。

厚生労働省の発表によれば、日本国内の65歳以上の高齢者の8〜10%が認知症患者おり、2060年には患者数が1,154万人に上るといわれいます。
高齢化が進行する日本社会にとって、認知症への対応は大きなテーマとなりつつあります。

VR認知症

そんな中、VRの没入感を利用することで患者の認知機能を刺激し、症状の進行を抑えたりリハビリをしたりする取り組みが日本国内外で始まっています。

認知症に関する研究の結果、認知症の治療には回想法という心理療法が有効であることが明らかになってきました。
回想法とは、昔流行った音楽や撮影した写真、折り紙などの昔遊びなどを利用してその時代を語り合うというもので、1960年代にロバート・バト
ラー氏によって提唱されました。

VR認知症

この方法では、保存されている記憶を呼び起こし言葉にしたり聞いたりすることで、脳の血流が促進され活性化し認知症の進行を遅らせたり予防したりすることができます。

VRは回想法による治療効果をより引き出すことができるとして期待されています。
昔の記憶を呼び起こす時に、まるで昔に戻ったような体験をVRを通して体験することで、脳の活性化を促すことができるのです。

認知症に取り組む国内外のスタートアップ3選

認知症に対してVRを生かして立ち向かうスタートアップが世界中で立ち上がっています。ここではその中でも選りすぐりを3社紹介します。

Virtue

VR認知症

VirtueはVRによる回想法をより簡単にすることで認知症治療を推し進めようとしているイギリスの企業です。
すでに紹介したように回想法は認知症治療のためによく行われている手法でしたが、Virtue社はVRの没入感に目をつけて回想法をより効果的に実施できるようにしようとしています。

このシステムは「LookBack VR」と名付けられており、360度のVRコンテンツを提供します。
具体的なコンテンツは、患者の年齢層や性別などによってカスタマイズされ、喫茶店やその時代の映画などを体験することができます。
患者自身の思い入れの深い時代をVRを通して体験することで、脳の記憶を司る部分を活性化させることができます。

回想法のような心理療法は専門家が患者と寄り添いながら行うもので、専門の知識や経験が必要なものでありなかなか誰でもできるような治療ではありません。
しかしVRを利用することで、少し訓練した人であれば、患者の治療を行うことが可能になりました。
VRによるこの治療法が広く普及すれば、認知症治療がより手軽なものとなっていくことでしょう。

株式会社テクリコ

VR認知症

株式会社テクリコはリハまるというVRを利用したリハビリテーションソフトウェアを世界で初めて開発しました。

これには脳トレリハビリアプリ、運動機能改善リハビリアプリ、運動リハビリアプリの3つが含まれており、特に高齢者のリハビリを効果的かつ効率的に実施することを支援するものです。

特に脳機能を活性化させるための脳トレリハビリアプリは、これまで作業療法士が患者とマンツーマンで行なっていたリハビリを複合現実機能によって支援するもので、認知症のリハビリにも応用されています。

その注目度から、マスメディアでも取り上げられているようです。


VRやAR技術を使うことで、楽しみながら認知機能や身体機能を改善させることができるとすれば、リハビリテーションのあり方も大きく変わっていくことが期待できます。

株式会社シルバーウッド

VR認知症

株式会社シルバーウッドは、VRを使って認知症体験を行うことで認知症患者への差別や偏見を無くそうとするプロジェクトを推進しています。
認知症の中核症状は認知・主観に関わる部分なので、他人にはなかなかわかりづらい部分があります。


それが原因で認知症による徘徊や暴力・暴言などの表面的な言動によって差別や偏見を受けることが多いものです。

しかし、シルバーウッド社によると、これらの言動は認知症だからなのではなく、認知症により世界の捉え方が大きく変わり混乱した結果生じるようです。

シルバーウッド社は、認知症によって世界がどのように見えるのかをVRを通して体験することで、認知症患者への理解を広げることで正しい介護のあり方を創出したいと考えているようです。

VRの他人の主観の疑似体験できる機能をうまく活かした好事例として注目を浴びています。

VRで健常者も認知症が体験出来る

すでに紹介したシルバーウッド社は全国各地で認知症体験ができる体験会を実施しています。
認知症を発症すると家族の存在自体が欠落するため、介護をしてくれていたとしても見知らぬ他人に世話をされることとなります。

シルバーウッド
また、認知症のある種類では、幻覚が見えることがあるそうです。
仮に健常者であっても、知らない他人がそばにいたり幻覚が見えれば恐怖を感じるはずです。
シルバーウッド社のVR認知症体験はこのような恐怖や不安をVRを通して実際に体験できます。


認知症は感染症のように誰でも体験できるものではなく、その上症状が出た時にどのように感じるのかが他人には分かりにくいものです。人は他人の主観を体験することはできないからです。
そこでVRは疑似的に他人の主観を体験することができるので、非常に強烈な共感を感じることができるのです。

これを裏付けるデータとして、公益社団法人全国老人保健施設協会がVRで認知症の体験をした人に実施したアンケート調査によれば、体験した約9割が認知症への理解が進んだと回答しています。

VRが認知症の治療に直接活用されるのと並行して、認知症への理解促進のためにVRを利用する事例も今後続々と増えていくのではないかと考えられます。

まとめ

今回は認知症の治療・予防へVRがどのように利用されているのかについて解説してきました。
VRによる没入感は人の認知機能に強く働きかけるため、認知症をはじめとする病気に対して利用価値が高いと考えられています。

また、VRを利用した認知症への理解促進と差別の解消の取り組みも合わせて紹介しました。
他人の主観を疑似体験することで感じる強い共感は、間違いなく差別や偏見を減らしていくことでしょう。

今後、認知症は高齢化の進む日本社会にとって大きな課題となっていきます。
その中で、VRが認知症患者への治療だけでなく、社会全体の理解や共感を広げていくことにも一役買っていくでしょう。

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