国内と海外のAR/VR市場規模予測と本格普及への課題
ARやVRはゲームの世界だけのものだと思われていませんか?
世界最大級の投資銀行であるゴールドマン・サックスは「次に来るのはVRとARであり、それは次世代コンピューティングプラットフォームだ」と明言しています。その根拠と可能性を見てみましょう。
世界のAR/VR市場規模
ゴールドマン・サックスは「技術の進歩により価格が下がり、BtoB、Btocともアプリケーションの新たな市場が立ち上がる。我々はVR/ARが数十億ドル(数千億円)の市場を生み出し、PCに新時代をもたらす可能性があると見ている」とコメントしています。
このリポートは、世界のVR/AR市場は2025年までにおよそ800億ドル(約9兆円)に達すると予測していますが、これは現在のデスクトップPC市場にほぼ匹敵する規模です。
「現在、VRは主にゲーマーの暇つぶしだと思われているが、そうしている間にも、人々の日々の生活に大きな衝撃を与えるようになってきている」同社テレコミュニケーションズ・ビジネス部門リーダーベリーニ氏は言います。
さらには今後10年間で、AR/VRのハードウェア市場が最も早い場合に、テレビの990億ドル(約12兆円)を超えて1100億ドル(約13兆円)になる可能性が、同ソフトウェア市場が720億ドルになる可能性があると予測しています。
(出典:世界AR/VR 市場規模予測、2015年~2025年)
またIDCの調査でも、2017年のAR/VRの関連支出が全世界規模で114億ドル(約1兆2,000億円)であったのに対し、4年後の2021年には2,150億ドル(約24兆円)にのぼると予測されており、年間成長率は100%を超えています。
(↓ショッピングの未来を感じます)
2017年でAR/VRがもっとも活用されたのは小売でのショーケースで、関連支出は4億4,200万ドル(約500億円)を記録しました。
次いで現場での組み立ておよび安全保守が3億6,200万ドル(約402億円)、製造業でのトレーニングでは3億900万ドル(約343億円)にのぼりました。特にARのtoB向け業務アプリケーションの利用が進んでいるのがはっきりと分かります。
急激に普及するAR/VRヘッドセット
またIDCの調査では、2022年にはAR/VRヘッドセットのビジネス利用が活発化すると予測されており、2017年の世界出荷台数は836万台で、前年比9.1%の減少となったが、2018年は再度成長に転じ、出荷台数は前年比48.5%増の1,242万台となる見通しです。
そして2017年~2021年の年間平均成長率(CAGR)は52.5%を見込んでいます。
2018年に入り、安価なARメガネの発表が相次いでおり99ドルの製品も複数出てくる予定です。先行していたMicrosoftのHoloLensも年内には大幅に安価になった後継製品が出荷予定です。
両手が使えるようになるARメガネは生産性向上に大きく寄与しますし、1万円程度のARメガネの登場は、業務利用でのARを一気に普及させる爆発力を持ちます。
–AR/VRヘッドセットの世界出荷台数予測 出典:IDC Japan
-「2022年までの世界AR/VR関連市場予測」出典:IDC Japan
歩きスマホは危険だが、歩きARは当たり前になる時代へ
ARメガネの単価がさらに下がり、本体も普通のサングラスと大差ない大きさになれば、一気にコンシューマー向けの普及が見込めます。
誰もがARメガネを装着するようになったときのことを考えてみてください。歩きスマホは危険ですが、歩きARは当たり前であり、広告の常識が一気に変わる可能性があります。
ARメガネを含めたウェアラブルデバイスに情報を提供していないと、現在で言う「Googleで検索にヒットしないサイトは存在していないも同じ」という状況と同じく、「ARで情報発信していない店は、存在していないも同じ」状況になる可能性があるのです。
今現在、ARやVRはエンタメ系の要素が強く「自分たちには関係ない」と考えている方も多いと思いますが、前述ような状況は恐らく数年後にはやってきます。(多くのアナリストは2021年に発売と噂されているAppleによるARグラスがその転機になると予測しています)
今、AR/VRに参入する企業が多いのも、「今始めておかないと手遅れになるから」です。
iPhoneが登場した時、ガラケー全盛であった日本はスマートフォンへの参入が遅れて手痛い目にあいました。
同じ失敗を繰り返さないためにも各社はこの分野に参入しているのです。
(↓インテルによるARグラスの未来がよく分かる解説動画。自動字幕を使えばある程度内容は理解できます)
日本国内のAR/VR市場規模
一方日本のAR/VR市場の立ち上がりは、まだ世界に比べて遅れているのが実情です。
IDCの調査によると、世界のAR市場の年間平均成長率(2017~21年)が159.7%であるのに対し日本は41.4%です。
同様にVR市場は62.4%に対し25.7%、関連する業務用ホストデバイスなどの市場は97.1%に対し38.4%と、いずれも大きく差が開いています。
日本の企業利用の特徴は、現場レベルでは興味を持っているのに、導入を決める上層部の理解がないために導入が進まないと言う、いつものパターンです。
日本の場合は「効率化するために投資をしてコストを下げる」という判断がなかなかされず、ドラスティックに業務改革もしないためにITの導入効果が出にくい体質の会社が多いのが背景にあります。
一方で同業他社が導入を始めると、一気に足並み揃えて普及するというために、いつも通り海外より2年遅れくらいでARやVRの波がやってくるのかも知れません。
2022年の国内のAR/VR関連市場予測
国内のAR/VR関連市場の2022年支出予想 TOP5はコンシューマー向けが58.6億ドル、続いて運輸が12.6億ドル、組立製造が3.3億ドルと業務利用では人手不足の分野の解決策にARやVRが活用されていくことが予想されています。
-国内AR/VR関連市場2022年支出額予測 Top 5
-JETRO 世界と日本のVR/AR市場の成長予測
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Invest/pdf/refe/mr_VR_AR_jp.pdf
AR/VRヘッドセットの国内出荷台数予測
一方で、AR/VRヘッドセットの国内出荷台数は他国に遅れながらも順調に伸びていくことが予想されています。
特徴としては、VRよりも、明らかにARヘッドセットの業務利用がニーズを牽引するということです。労働力不足に悩む日本において、AR技術の活用が非熟練者や外国人の戦力化に寄与しそうです。
-AR/VRヘッドセットの国内出荷台数予測:IDC Japan
まとめ
AR/VRは、業務利用でも明らかに効果がある技術ですが、日本国内での普及は海外に比べて遅れることが予想されています。
しかしグローバルの競争下では、国内同業他社の出方を見ているだけでは手遅れになる可能性があります。
日本国内のAR/VRの普及には、なによりもAR/VRの体験機会を増やすことが重要であり、具体的な使い方をイメージしてもらえるように提案していくことが必要でしょう。
また、AR/VRはそれ単体としての技術だけでなく、同時翻訳機能を含めたAIや、IoTとの組み合わせ、マーケティングオートメーション等の統合が重要になると考えられます。
今後、ベンダー各社の提案力が試される時代に突入していきそうですね。
合わせて読みたいVRを活用したビジネス事例の記事こちら→)3分で分かる!VRビジネス最新事例8選 – 業種別の利用ケース解説
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