AR訓練・トレーニング事例|実績やメリットを最新の動向から分かりやすく解説
現実の世界に3DCGや様々な情報を拡張表示させるARテクノロジーは、エンターテイメントのみならず、工場や製造業界、アパレルや小売の現場など、様々な業種・業界への導入が進んでいます。
そして今回取り上げるのが、企業や組織において非常に重要な訓練やトレーニングへの活用事例です。
今回の記事では、
- 訓練・トレーニングにARを活用するメリット
- 企業のおけるARトレーニングの活用事例
- スポーツ分野におけるARトレーニングの活用事例
- 防災訓練におけるARトレーニングの活用事例
など、ARトレーニングに関する最新の動向を分かりやすく解説します。
より実際的で効率的な訓練やトレーニング方法を取り入れたい、と考えている企業経営者や担当者にとっても必見の情報ばかりですので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
- 1 訓練・トレーニングでARが活用されるケース
- 2 事例1.AggrekoがトレーニングでARを導入
- 3 事例2.JR東日本が保守訓練でHoloLensを活用
- 4 事例3.米軍がマイクロソフトの「HoloLens」18万台
- 5 事例4.ドイツのスタートアップによるドローンAR訓練シミュレーション
- 6 事例5.旭エレクトロニクスによるAR溶接訓練はトレーニング
- 7 事例6.スポーツジムのトレーニングをAR×AIでアップデート
- 8 事例7.MRグラスを使った水泳トレーニング
- 9 事例8.BAEシステムズは製造現場でHoloLensを活用
- 10 事例9.仮想災害シミュレーションの防災教育アプリ 「CERD-AR」
- 11 事例10.「防災AR」の消火訓練
- 12 まとめ
訓練・トレーニングでARが活用されるケース
アメリカの調査会社「SuperData」は「企業におけるXR(AR・VR・MR技術の総称)の利用状況の調査」を行い
- 最も多いXRの用途はトレーニングで、およそ71%の企業が社内向けの教育やトレーニングにVR技術を利用
- XRを用いたトレーニングの活用で、約年間135億ドル(約1.5兆円)が削減可能
と発表。企業が訓練やトレーニングにARを活用することについて、専門家は「ARトレーニングを導入していない企業や組織は、すでに活用している企業に大きな遅れをとることになるだろう」と述べています。
そもそもARとは?
AR(拡張現実)は、3DCGなどの映像や音声情報を、現実世界に重ねて表示(拡張)させる技術を指します。
人気ゲームの「ポケモンGO」のように、現実世界に仮想空間上のキャラクター映像や音声を表示させる技術が、ARです。
ARは人手不足やコスト削減という課題へのソリューションになり得る
人口減少に起因する働き手の減少、団塊の世代を中心としたベテラン社員の大量退職などから、人手不足は業種や業界を問わず非常に大きな問題となっています。
そういった社会的な背景の中で企業や組織のトレーニングにARを活用するメリットは、業務効率化を通じて
- 人手不足の解消
- コストの削減
の2点を実現できることでしょう。
ケース⑴従業員のトレーニング・訓練におけるAR活用
ARを活用したトレーニングはファーストラインワーカーと呼ばれる労働者への訓練に非常に有用であり、国内外で徐々にARの導入が進みつつあります。
※ファーストラインワーカー:製造工場や建設現場、販売店スタッフ、医療従事者やコールセンターフタッフなど、現場の最前線で活躍する従業員のこと
その理由は大きく以下の4点に集約されるでしょう。
- 情報の視認しやすさ
- (グラスに投影すれば)ハンズフリーで情報を確認できること
- 暗黙知を形式知に変換できること
- 音声指示が可能であること
それぞれについて、詳しく解説していきます。
ARが訓練で有用な理由1.情報が3DCGで投影されるため、視認しやすい
工場で製品を組み立てる手順や機械の点検方法を学ぶときのことをイメージしてください。
従来のトレーニングでは、紙のマニュアルを見ながら製品や機械を取り扱って操作方法や手順を学んでいました。
ところがARを活用すると、組み立て手順や点検の方法が3DCGによって、製品に重ね合わて表示されます 。実際の作業で扱う機材や製品とともに点検箇所や手順が目の前に表示されれば、非常に分かりやすいだけではなく、訓練も効率化され、短時間で練度の高いトレーニングを行うことができます。
通常であれば、熟練工になるために長い時間が必要な製造業や建設業においても、ARトレーニングを導入することによって初期学習時間を大幅に短縮することが可能です。
さらに、これから外国人労働者が増加する近未来を見据えても、 難しい漢字や日本語が読めなくても3DCGで分かりやすく教育できるARトレーニングは、企業にとって非常に重要なプログラムとなっていくことは間違いありません。
※参考記事:製造業界AR活用事例|工場へのスマートグラス導入や効果に迫る
ARが訓練で有用な理由2.ハンズフリーでも情報の確認が可能
ARは、スマートグラスやモニターを介して必要な情報を目の前に表示させることができるため、手順書やマニュアルを手に持つ必要がありません。
ハンズフリーで保守や点検作業を行うことによって、目の前の情報と機器に注意を集中することができます。結果として、非常に密度の高いトレーニングを実施することが可能となるのです。
ハンズフリーで行えるARトレーニングや現場での作業は、作業の効率化と生産性の向上をもたらします。
特に工場や生産業での組立作業や、保守点検などの訓練・教育には非常に効果的。
情報確認に要する時間を短縮しつつ、フリーハンドで作業に取り組めることは、初心者へのトレーニングにも非常に有効な手段となります。
ARが訓練で有用な理由3.職人の暗黙知を形式知に転換できる
ベテラン従業員の退職によって貴重な技術が次の世代へ引き継がれていないことは日本の労働現場において非常に深刻な問題となっていますが、そうした問題もARトレーニングによって解決の方向性を探ることが可能です。
たとえば、2019年に発売されたMicrosoft社製のARデバイス「HoloLens2」には、装着者の行動データを読み取るトラッキング機能(装着者の視線・作業手順の記録、保存機能)が内蔵されています。
つまり、
- ベテラン従業員がHoloLenを装着して作業
- HoloLens2の機能で手順を記録
- ベテランの作業情報をもとにトレーニングメニューを作成
- 初学者の訓練用作業マニュアル化
というステップを踏むことで、 熟練作業員のスキルの保存・従業員の学習効率の改善の2点を達成することが可能です 。
職人の手の動きや目線、身体の向きや力加減など、熟練工に求められる必要なスキルはこれまで本人しか知り得ない「暗黙知」でした。
それがARによって3D化され、直感的なトレーニングが行えるようになることで、誰もが共有できる「形式知」へと転換されるのです。
これはARトレーニングがもたらす革新的な変革であり、人手不足で苦しむ業界おける福音となるのです。
ARが訓練で有用な理由4.音声指示も可能
HoloLensなどの専用デバイスを用いると、遠隔地から音声で指示やサポートを受けながらの訓練も可能となります。
音声でのやり取りによって、トレーナーが細かな指示を出したり、逆にトレーナーに質問しながら問題点を解決していくことができます。
これは特に、従業員教育に投下できる人的なリソースが限られている企業や組織にとっては非常に有効で、わざわざ訓練のために研修生が指定の場所まで集まる必要がなく、離れた場所でもトレーニングを行うことが可能になります。
というのも、こうしたARトレーニングは1対1だけではなく、1(トレーナー)対複数人の研修生で同時に行うことも可能。
トレーニングに要する時間とコストを大幅に削減することができます。
ARを使った遠隔地からのトレーニングは、作業の加速化とコスト・時間の削減、人手不足問題の解決という、まさに今日の企業や組織が必要としている問題へのソリューションを提示しているのです。
※参考記事:遠隔・作業支援ARの導入事例|現場の生産性向上を実現するソリューション
ケース⑵防災訓練におけるARの活用
では続いて、ARがトレーニングに有効な別のケースを見てみましょう。
災害の多い日本で、企業や組織でも非常に重要視されている防災訓練へのARの導入です。
リアルで臨場感のある訓練が可能
防災訓練は参加者に災害の危機感を自覚させることが重要ですが、その点においてARは非常に有効です。
地震や台風などが多く、災害大国とも言える日本では、自治体や企業の防災訓練に関する意識は非常に高いと言えます。
一方で、発生時間や被害の事前予測やシミュレーションが難しい自然災害において「リアルで効果的な防災訓練」を施すことは非常に難度が高く、たとえば、自治体が発行しているハザードマップで浸水の規模や深さを見ることができたとしても、正直イメージしづらいでしょう。
しかし、ARを活用することで臨場感のある防災訓練を実施することが可能です。
その点を、三鷹市の小学校が行っている毎月の防災訓練にARを取り入れた様子から見てみましょう。
スマホ用のAR防災アプリを利用すると、
- 洪水時に水がどの高さまでやってくるかを体感する
- 火災時に、校舎内に広がる煙の様子を体感する
といったことが可能です。
AR表示によって煙が充満している中を避難するためには、実身を屈めなければならないことがリアルに体験できます。
アプリ #DisasterScope は,浸水以外に #火災 による #煙 の疑似体験もできます.#スマホ の高さを感知して,天井の方は煙が濃くて床の方は薄い状況を再現できます.煙を吸わないようにしゃがんで逃げる必要性を実感できます.#AR #避難訓練 pic.twitter.com/Cr3ZXQAFj1
— Tomoki Itamiya 板宮 朋基 (@t_itamiya) July 15, 2018
「非常階段などに物を置いてはいけない」ということは良く聞きますが、その重要性もAR避難訓練では身を以て体験することができます。
AR避難訓練を実施した三鷹市の小学校校長によると、マンネリ化してきた防災訓練が、ARの導入によって子どもたちの反応も段違いになったと言います。
自社の従業員向けトレーニングや、企業向けトレーニングソリューション提供でARの活用を検討している場合
また、ここまでトレーニングにおいてARを活用する際の方向性や活用方法を解説してきましたが、本メディア「XR-Hub」を運営している株式会社x gardenはAR/VR事業コンサルティング・開発事業を展開しています。
- 自社の新規事業としてAR/VR活用を検討しており、企画やアイディアを相談したい
- AR/VRアプリケーションの開発を依頼したい
- 市場調査やユースケースの収集・事業企画書作成などのコンサルティングを依頼したい
という企業担当者の方はこちらからご相談ください。
さらに、ここからは企業や団体が実際に実施しているARトレーニングの事例や動向を参照しながら、ARの有用性をさらに調べてみましょう。
事例1.AggrekoがトレーニングでARを導入
電力や温度制御の専門企業「Aggreko(アグレコ)」は、自社のエンジニアのトレーニングのためにARを活用しています。
Aggrekoが提供している「仮設電源設備やサービス」は、建設現場だけではなく、サッカーのワールドカップやアメリカのスーパーボウルなどの世界的なイベントなど、世界200ヶ所以上で利用されています。
よって世界中に散らばるエンジニアに高度なトレーニングを定期的に施す必要がありますが、その点でARが非常に役立っています 。「世界中のエンジニアが一箇所に集まって訓練する」というコストをARにより削減
仮設電源設備とはいっても、Aggrekoが扱う機器は大型で複雑なものが多く、取り扱いには高度な専門知識が求められます。
さらに、工事現場などでの利用も多いため、的確な保守やトラブルシューティング、迅速な修理作業も求められ、こうした専門技術を培うための定期的なトレーニングが必要不可欠。
とはいえ、毎回のトレーニングのために世界中に散らばるエンジニアを一か所に集めると、経費も膨大になってしまいます。
そこでトレーニングの練度を保ったままコストを下げるために導入されたのが、ARによるトレーニングのソリューションなのです。
AggrekoのARトレーニングには、当初は専用のARデバイスの導入が検討されていましたが、1台あたり5,000ドル相当が必要になります。そうなるとコスト削減のためのAR導入が無駄になってしまう。そこで目をつけたのがiPhoneでした。
iOS11以降のiPhoneには、ARを動作させるための「ARKit」が搭載されています。また、Aggrekoのエンジニアには業務用端末としてiPhoneがすでに支給されていたため、新たに端末を導入する必要もありませんでした。
こうした経緯で、AggrekoのARトレーニングがスタートします。
実施による効果 – 年間50万ドルの削減に成功
これまではトレーニングにエンジニア一人あたり1日300ドル、3日間のトレーニングに15人が参加した場合の経費は1万ドル以上が必要でしたが、 ARトレーニングの導入により人や機材の移動を最小限で抑え、年間約50万ドルのコスト削減に成功しました 。
危険を伴うトレーニングもARに代替
さらに作業によっては危険な薬品を扱わなければならないものもありますが、ARトレーニングなら安全かつ効率的に作業手順を学ぶことができます。
また、質の高いトレーニングを一貫して行うことによってエンジニアのモチベーションの維持や、業務への関心が高まることからの、離職率の低下という思わぬ成果も得られたそうです。
ARトレーニングのような新規プロジェクトを大規模に行う際には、上層部へのROI(投資対効果)に関する説明が必ず必要になりますが、AggrekではARトレーニングに関して確かな満足と効果を報告できているとのことです。
事例2.JR東日本が保守訓練でHoloLensを活用
JR東日本は、転轍機(てんてつき)という線路の制御装置の研修のために、ARトレーニングを導入しています。
HoloLensを活用し、紙のマニュアルが不要に
この研修のために利用しているのは、マイクロソフト社製のMRデバイス「HoloLens」。
HoloLensのモニターに実寸大の転轍機と線路を表示させ、操作訓練を行っています。
転轍機の内部は複雑な配線やギアで構成されています。LEDで内部の状態を確認できる新しいタイプのものもありますが、一つ一つ目視で確認しなければならない古い転轍機も多く稼働しています。そのため、これまでの研修や実際の保守作業には紙のマニュアルが必要不可欠でした。
HoloLensにより実寸大で表示された3DCGの転轍機を使った訓練が可能に。紙のマニュアルを見ずとも、必要な手順や情報はARでモニターに表示されます。さらに実際に身体を使って作業したり、ボルトを締めるなどの実作業に近いトレーニングも行えるため、訓練効率も向上しました。
こうしたARのメリットはトレーニングだけではなく、実際の保守作業でも役立っているそうです。
>関連記事:AR/MRの本命「HoloLens」のスペック・評判・使い方/事例など徹底解説!
JR東日本は他の訓練でもARの導入を検討
視野角の確保や解像度の限界などデバイスの制約や改善すべき点も多いようですが、JR東日本は他の訓練におけるAR活用を検討しており、転轍機のARトレーニングは効果が高かったようです。
何よりも実寸大の3Dデータをもとに、実際に身体を動かしてリアルな訓練が行えることのメリットは非常に大きいとのこと。
鉄道のように内容や工程が複雑な製造系の機材メンテナンスでは、なによりも実際に身体を動かして何度も何度も作業を繰り返すことが一番のトレーニングとなります。
コストを気にすることなく、現実に近い感覚で反復作業が行えるARトレーニングは、人手不足が深刻な製造業界においても非常に有効なツールとなっています。
事例3.米軍がマイクロソフトの「HoloLens」18万台
アメリカの防衛省は、米軍の実戦向けトレーニングのために、Microsoft社製の「HoloLens2」を10万台以上導入したことを発表しました。
防衛省の発表によると、HoloLens2導入によって、核戦争の脅威を想定したARトレーニングを順次行っていくとのこと。
ARでリアルな訓練を行うことで、より実践的で練度の高いトレーニングが期待できるそうです。
>関連記事:【HoloLens2完全解説】先代モデル、Magic Leap Oneとの比較から進化を大解剖
「HoloLens」と「IVAS」による軍事訓練イノベーションに寄られる期待
今回、米軍がHoloLens2導入に費やした金額は4億8000万ドル(約540億円)とも言われています。
この契約金には、HoloLens2本体だけではなく、「Integrated Visual Augmentation System (IVAS)=統合型視覚増強システム」と称される、ARトレーニング用の新システムも含まれています。
IVASでは、「致死性の攻撃に対する防御力の向上」、「攻撃能力の向上」などに主眼を置いたトレーニングを行うだけではなく、軍事におけるイノベーションを加速させるという狙いが見受けられる、と専門家は分析しています。
というのも、HoloLens2とIVASは通常では考えられないスケジュールで導入されたという背景があるからです。
異例の速度で導入が進むHoloLensとIVAS
米軍が新たなシステムを採用するかどうかを決定するには通常、5 – 7年ほどの期間、現場での装備となると20年程かかることがある中で、HoloLens2とIVASの導入においては、契約締結から現場の導入まで1年を要さなかったのです。
米軍が相当の意気込みをもってARトレーニングを取り入れたということは疑う余地がないでしょう。
2022年頃には実戦に導入?
HoloLens2とIVASの導入からはまだ1年も経っておらず、現場からのフィードバックもまだまだこれから、といったところ。
しかし、米軍は2022年頃までにはIVASを実戦にも導入することを目論んでおり、戦闘での使用が可能になり次第、順次投入していく準備を進めているそうです。
HoloLens2とIVASを使用したトレーニングに参加した記者によると、「まるでFPS(一人称視点)ゲーム」のようだったとのことです。
HoloLens2を装着してトレーニングを開始すると、まず視界内に地図が表れ、現在地と周辺の建物や味方の位置などが表示されます 。さらに上を見上げるとコンパスが表示され、方角もリアルタイムで確認できます。移動すると地点情報も変わり、情報も随時更新されていきます。
これはまさに、人気ゲームの「コールオブデューティー」や「メタルギアソリッド」シリーズを思い出させるレイアウト。
さらに、 HoloLens2によるARトレーニングでは、兵士の心拍数を測定したり、訓練中の兵士からデータを収集して射撃技術の改善に役立てることなども行われているそうです 。
たとえば、映画でよく観るような兵士が建物に突入して敵を排除するような設定の訓練では、上官はHoloLens2を通して兵士がどこに視線を向けているかも正確に把握することができます。
またトレーニング終了後には、兵士自らが収集されたデータをもとに自分のパフォーマンスを確認できるため、常に練度の高い訓練が期待できるそうです。
もちろん、HoloLens2を軍隊での訓練や実戦に利用することに関しては強い反発の意見もあり、実際に販売元のMicrosoftのメンバーの中からも「戦争をゲームのようにしてしまう」という抗議の声が上層部に伝えられているそうです。
ARによる戦闘訓練は、それが効果的であればあるほど、ARテクノロジーに関する一般市民の反発を買う恐れも内包しています。
しかしGPSなどの軍用から派生した技術やサービスが、今では社会の重要なシステムとして利用されていることもまた事実。ARテクノロジーの軍事利用は今後も注視していく対象でしょう。
事例4.ドイツのスタートアップによるドローンAR訓練シミュレーション
ドイツのスタートアップ企業「DronDSS」は自社のARデバイス「ARbox」とドローンを組み合わせたドローンの操縦トレーニング・シミュレーションを公開しました 。
まずはこちらの動画をご覧ください。
ARboxはカメラを通して収集した情報を、連携するアプリに送信するデバイスです 。ARに対応しない機器であっても、ARboxを組み合わせることによって場所を問わずにAR機能を利用できるようになります。
ドローンの操縦はプロポ(コントローラー)にスマホなどのデバイスを取り付け、ドローンのカメラからの映像をモニターで受信しながら行います。
そこに訓練性のあるARコンテンツを取り入れることによってドローン操縦技術向上のためのトレーニングとして活用します。
低リスクで様々な操縦のトレーニングが可能
DronOSSはこのARトレーニングによって、操縦者がリスクを恐れることなくドローンの操縦技術を鍛えることができると述べています。
通過用のターゲットや風力発電機を避けるように操縦することによりドローンの操縦テクニックが向上してますが、当然それらの障害物はあくまで3DCGであり、衝突したとしてもドローンがダメージを受ける心配もありません。
また、様々な状況を設定することによって、より実践的なシミュレーション・トレーニングも行えます。
たとえば、幅がわずかしかない隙間を抜けるシミュレーションや、ある一定の高度以下を飛行させるトレーニングなど、実際のドローン運用に必要な技術をどこでも習得することができます。
ドローンのニーズが高まる中で、訓練に対するニーズが高まるのは必須
ARを用いたドローンのシミュレーション・トレーニングについて、DronOSSの共同創業者であるLuciano Mora氏は「現場からの切実な要望に応えた結果である」と述べています。
今後のドローン市場の一層の拡大を考えると、操縦士人口の増加は間違いなく、これによりドローンの安全性や正確な業務を行うためのトレーニングもニーズが高まっていくと想定されます。
DronOSSの提供するドローンAR訓練シミュレーションによって、初心者でもリスクを最小限にしながらドローンの操縦テクニックを学ぶことができます 。ドローンの飛行が許可されているエリアなら、ドローンAR訓練シミュレーションを利用して何時でも効果的で実践的なトレーニングが行なえますので、ドローン操縦を楽しみたい個人や、企業活動にドローンを用いることを考えている経営者の方は「DronOSS」を導入してみてはいかがでしょうか。
事例5.旭エレクトロニクスによるAR溶接訓練はトレーニング
最先端ITや制御システムの総合サービスソリューションを提供する「旭エレクトロニクス」は、実物の溶接機材を使ったARシミュレーションのトレーニングシステムを販売しています。
ベテラン技術者になるまでに長い時間のかかる溶接の分野で、このARシミュレーションを用いればその道30年の技術が習得できるとのこと。
2018年に東京ビッグサイトで開催された「第26回3D&バーチャルリアリティ展」でお披露目された「AR溶接技能訓練システム」は、職業訓練校への導入も予定されています。
ゲーム感覚で訓練?溶接工の人手不足を解消するソリューション
旭エレクトロニクスの販売する「AR溶接技能訓練システム」は、スペインのIT企業「SOLDAMATIC」社が開発したAR一体型の溶接用eラーニングシステムで、世界唯一のARを用いた溶接技能シミュレーションとして注目されています。
このAR溶接技能訓練システムが業界の注目を浴びる背景は他ならぬ「人手不足」。
日本だけではなく、世界的にも溶接工の労働者数は足りておらず、特に若い世代の溶接工への成り手不足が深刻な問題となっています。
そこで、ゲーム感覚で気軽に溶接技能を学んでもらおうと開発されたのが、このAR溶接技能訓練システムなのです。
AR溶接技能訓練システムは溶接マスクを模したAR対応のヘッドマントディスプレイと、溶接箇所をAR化するためのワーカーのついた練習用ワークピースを用いますが、それらに実物の溶接トーチを組み合わせることによって、現実に非常に近い感覚で溶接トレーニングが行えます。
安全性の確保と訓練の材料費削減(コストカット)・データ活用を通じた効率化が可能
ARで表現されていることから「危険な作業が伴う溶接訓練」も安全がしっかりと確保されます。
さらに非常に高価な消耗品も必要としないため、トレーニングのための費用も大幅に削減。
学習効率を上げながら、短時間のうちに高度な溶接技能を習得することが可能なのです。
実はこのAR溶接技能訓練システムは、初心者のためだけのトレーニングシステムではありません。
というのも、溶接は現場においても専門職以外は業務として毎日行うものではないため、高い練度を保つためには定期的なトレーニングが不可欠なのです。
このAR溶接技能訓練システムでは使用者のレベルに合わせた最適なプログラムを実施できます。
そのため溶接に必要な正しい知識や技能だけではなく、現場でしか身につけることのできない感覚やスキルも定期・非定期のトレーニングを通じて身につけることが可能です。
さらにトレーニングの後にはスコアが表示されるため、自分がどのレベルにあるのかも一目瞭然。
AR溶接技能訓練システムに内蔵されたソフトウェア内には、溶接上級者による作業手順や動きがデータ化されているため、繰り返しトレーニングすることで自然と高度なスキルが学べるのも非常に有効的です。
4倍以上の効率性で学習可能?すでに3,000台以上が稼働、独ベンツも導入済み
旭エレクトロニクスが日本でも販売を開始したAR溶接技能訓練システムは世界ではすでに3000台以上が稼働。
ドイツではメルセデス・ベンツ社の溶接トレーニングにも採用されています。
ARによる溶接トレーニングの最大のメリットは、初心者でも安全かつ場所を取らずに技術を学ぶことができるという点でしょう。
AR溶接技能訓練システムでトレーニングを施すと、現行の4倍以上の効率性で技術を学ぶことができるとのこと。
熟練工になるまでには30年が必要とされている溶接業で、ARを用いた溶接技能訓練システムは人手不足と経費削減というソリューションを提示してくれています。
事例6.スポーツジムのトレーニングをAR×AIでアップデート
リゾートホテルやストレッチジム、岩盤ヨガスタジオなどを経営している株式会社フュービックは、ARとAIを取り入れた新たなスポーツジム・トレーニングを開始しました。
このプログラムでは、薄型の鏡型モニターに適切な運動や効果的な動作を指示する情報がARによって表示され、効率の良いトレーニングを行うことができます。
ARトレーニングで用いる鏡型モニター「ARC Mirror(アークミラー)」
ARトレーニングで用いる鏡型モニター「ARC Mirror(アークミラー)」には、利用者が装着したウェアラブル端末で読み込んだ心拍数や動作のデータをもとにした、効果的なトレーニング・プログラムが表示されます。
それにより。行っているトレーニングの効果性や次に必要な動作がリアルタイムで認識できます。
さらに、このARトレーニングにはAIを組み合わせているところも注目ポイントで、音声や映像を通して利用者に励ましの言葉をかけたり、運動中の細かな姿勢やスピードなどの指導も行います。
パーソナルジムじゃなくても、トレーニングに慣れていない人が正しくトレーニングできるために
フュービックがスポーツジムにARトレーニングを導入した背景には、スポーツジムを取り巻く状況の変化があります。
最近ではトレーニング人口の増加に伴い、国内のスポーツジムも年々増加傾向にあります。
それに伴って、スポーツジムの形態も多様化。24時間営業や高齢者向けのジムなど、これまでスポーツジムを利用していなかった層も気軽に利用できるようになってきました。
一方で器材を使ったトレーニングは使い方がわからなかったり、誤った姿勢でトレーニングすると怪我をするリスクがあり、「器材の使い方が分からず、トレーニングを継続できない」というユーザーも多く存在します。
そういったスポーツジム初心者に対して効果的なプログラムを提供し、継続的なトレーニングへのモチベーションを高めることが、このARトレーニングでは可能なのです。全てのスポーツジム利用者にトレーナーが1対1で対応することは物理的に難しいですが、ARトレーニングを活用することによって、初心者の方が一人でも効果的なトレーニングを行えるようになります。
カロリーやスコアリングによりもちーベーションを刺激し、コーチングでトレーニングを効率化
ARC Mirrorは利用者に対してトレーニングの運動メニューとコーチングならびに進捗状況、消費カロリーやスコアリングなどがAR画像として利用者の目の前に表示します 。これにより自分の行うトレーニングの詳細やその効果も数値化されるため、トレーニングに対するやりがいも感じられるでしょう。
さらに、 ARC Mirrorにはカメラやセンサーが内蔵されており、利用者の動きを検知してAIが必要なアドバイスを音声や画像で与えられます 。
このフュービックのARスポーツジム・トレーニングは、利用者の評判も上々のようです。
実質的にAIがコーチングを行うため、トレーナーがつきっきりになる必要もなく、それがかえって気楽にトレーニングに打ち込めると感じている利用者も多いとか。
フュービックでは現在、東京都内のスポーツジムでモニターによるARスポーツジム・トレーニングのテストを行っており、効果を分析した後に他店舗への導入を検討しているそうです。
事例7.MRグラスを使った水泳トレーニング
アメリカのスポーツテクノロジー企業の「FORM(フォーム)」が2019年8月にアメリカとカナダで販売を開始したのが、水泳用ARゴーグルの「FORM Swim Goggles」です。
FORM Swim Gogglesは、水泳中の心拍数や泳いだ距離、ラップタイムなどをグラスのディスプレーにAR表示させ、スイマーのトレーニングをサポートするARデバイスです 。データの表示・保存が可能、プレイヤーのトレーニングに特化したデザイン性が魅力
FORM Swim Gogglesの片側の側面にはボックス上の機器が取り付けられ、導光板ディスプレーやセンサー、ジャイロスコープ、バッテリーなどが内蔵されています。
このFORM Swim Gogglesは、現実世界にCGや数値を拡張表示が可能になるARのメリットを十二分に活かしたデバイスと言えるでしょう。
水泳中の目に入ってくる世界はそのままに、ゴーグルのモニターに必要な情報が表示されます。
FORM Swim Gogglesは、一見するとGoogleが開発した「Google Glass」を思わせます。
FORM Swim Gogglesは上下2桁で数値が表示され、
- 上段:タイム
- 下段:
- 泳いだ距離
- スプリットタイム
- ストローク
- 消費カロリー
(任意の数値が選択可能)
となっています。
1回の充電で約16時間の利用が可能で、上下逆でも問題なく使用可能。
FORM Swim Gogglesはデバイス単体ではなく、iPhone、Androidに対応した専用アプリ「FORM Swim」と組みわせて利用します。
計測した数値をモニターに表示させる以外にも、記録したデータを保存・共有したり、情報を表示するタイミングなどもカスタマイズ可能。
また、ARデバイスとはいっても仰々しいデザインではないところが、FORM Swim Gogglesの好ましいポイントでもあります。一般的なゴーグルとほぼ変わらないデザインで、しっかりとしたフィット感や耐久性も備えていることは利用者にっても望ましいでしょう。
また、 FORM Swim Gogglesは水泳中のフォームを自動的に判別し、ストロークを確認できることも大きな特徴の一つ 。
それによって、自分のフォームの改善にも役立てられます。
現在199ドルで発売中
FORM Swim Gogglesはアメリカ及びカナダで199ドルで販売中。
日本でもアマゾンなどで発売されていますが、定価の倍以上の値段がつけられているため、早期の正規販売が望まれます。
事例8.BAEシステムズは製造現場でHoloLensを活用
イギリスの航空宇宙関連企業であるBAEシステムズ社は、製造現場での技術者のトレーニングにARを活用しています。
HoloLensで3Dマニュアルを作業中に表示
BAEシステムズ社ではトレーニングにMicrosoftの開発する「HoloLens」を使用。 手元の機材や作業を見ながら、3DモデルのマニュアルをARで重ね合わて表示することによって、訓練効率を高めています 。
紙のマニュアルをめくりながら作業するのに比べると、自分の扱っている部品に直接3Dモデルが表示されるARトレーニングは、より訓練に没頭できるのと同時に、時間の節約にもつながっているとのこと。
大幅な訓練時間の削減が実現
同社はARトレーニングソリューションの導入により、訓練時間を30~40%削減することに成功。
さらに新製品の生産ライン立ち上げ時においても、教育コンテンツの作成やトレーニングそのものに費やす時間も大幅に短縮できたことで、訓練や教育にかかる全体的なコストも10分の1にまで圧縮させることに成功(※参考)
※製造業界におけるAR活用のユースケース:製造業界AR活用事例|工場へのスマートグラス導入や効果に迫る
事例9.仮想災害シミュレーションの防災教育アプリ 「CERD-AR」
大阪市立大学都市防災教育研究センター(CERD)は、仮想災害や都市の防災関連情報をARで可視化できる防災教育向けAR(拡張現実)アプリ「CERD-AR」を発表しました。
CERD-ARは、地震や火災、洪水などの身の回りで起こりうる自然災害の情報や、防災関連情報を可視化して、避難や防災に役立たせることを目的としたARアプリです 。災害発生エリアにおける被害をリアルに再現したARアプリ
CERD-ARはiPhoneやiPadに対応したAR防災アプリで、使用すると仮想の災害発生エリアに自分が新入した際にサイレンを発し、どんな被害が起こるかをARで表示させます。
従来の防災教育アプリでは、2D上のデジタル地図に防災や災害情報を表示させるのみで、実際の避難訓練やリアルな防災訓練という観点からは納得のいくものではありませんでした。
ところが、このCERD-ARでは災害エリアに自らが侵入した際に災害情報がAR表示されることによって、より現実にちかい避難訓練に役立てることができます。
また、周辺の災害リスクや防災訓練施設なども表示できるため、防災教育への活用も期待されています。
CERD-ARの機能
CERD-ARは主に以下の4つの機能が可能です。
1.地図表示機能
通常の地図アプリと同じ様に、現在位置の表示や拡大・縮小表示が可能。
データをインポートすることによって、様々な災害・防災関連情報を地図上に表示することができます。加えて防災施設などの詳細情報(写真や動画、現在地からの距離など)も確認できるため、実際の災害を想定して避難場所や施設の活用方法を学ぶことが可能です。
2.AR表示機能
このアプリの一番の目玉がこのAR表示機能で、周辺の災害・防災関連情報を現実の風景に重ね合わせて表示させることができます。
※災害アイコンには災害の種類や現地点からの距離、災害範囲などが表示されます
3.リアルタイムに変化する災害情報
本アプリは災害の日時や災害範囲、災害の種類(火災・浸水・土砂崩れ・道路閉鎖)を設定可能。
これにより指定した日時に災害を発生させ、被災区域も自由に拡大できるので、リアリティのある避難訓練が可能になります。
4.警告機能
災害指定地域に近づいた際にメッセージや効果音で警告を発せられる。
CERD-ARは今後、浸水や土砂崩れ、火災を想定したハザードマップのGIS(地理情報システム)データとの重層表示や、アニメーションによる表示機能、VRコンテンツとの連携も予定されています。
※アプリダウンロードはこちらから
事例10.「防災AR」の消火訓練
「防災AR」は、現実の空間にARで火災状況を表示させ、消火器を使った消火訓練を体験できる防災アプリの一種です。
火災訓練の際に、実際には起こせない火事を疑似体験することによって、現実の火災時の状況をイメージしたり、よりリアルな防災訓練に活用することができます。
臨場感のある火災体験を、ノーリスクで行う
VRを行った防災アプリは、あくまで事前に用意された仮想の空間内で消火や避難を行うことになりますが、ARアプリでは自分の周囲に火災の様子を拡張表示させるため、より現実に近い防災訓練が行うことができます。
AR表示された火災は、手前の消火器のボタンを押すことによって消し止めます。
実際に消火器を使う機会は現実ではなかなかありませんが、このアプリを利用することによって、どのくらいの時間で火災を消し止めることができるのかを体験できるため、いざ火災が実際に生じた際でも、落ち着いた対応が取れるようになるでしょう。
「防災AR」はイベント時での活用も想定されています。火災訓練などは大掛かりな施設や準備が必要となりますが、このアプリを利用することによって手軽に、かつリスクもなく火災時に取るべき行動を学ぶことができます。
今後はさらに空間認知や画像認識、位置情報などのデータとリンクさせ、様々な災害を想定した避難や防災訓練に役立てられるようアップデートさせていくとのこと。
特別な設備を準備しなくとも、手持ちのスマホを使って気軽に、そしてリアルな防災訓練が行えるARアプリの必要性は、これからますます大きくなっていくことでしょう。
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まとめ
ARトレーニングを導入することによって、低コストで練度の高い訓練を効率的に行うことが可能となります。
それによって、人手の足りない部署に人員を再配置したり、初心者を短い期間で一人前に育て上げることによって人手不足を解消することができるようになるでしょう。
これからも、企業や組織における訓練やトレーニングへのARの活用に注目していきましょう。
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