アイトラッキングとは?技術の仕組みやVRへの導入を企業・事例から解説
アイトラッキング(=視線追跡・計測)とはその名の通り視線の動きを捉える技術で、視線情報を活用したり別のインターフェースに反映させることでより高品質なVR体験を実現します。
今回は、アイトラッキング技術の概要や「VRにおいてアイトラッキングがどの様に導入・応用されているのか」「VRへの導入メリット」」などを2019年最新のVRアイトラッキングの事例・動向と合わせて紹介します。
Contents
アイトラッキングの仕組みとは – VRにおける導入方法を解説
アイトラッキングとは、赤外線センサーなどで目の動きを感知してプレイヤーの視線がどこを見ているのかを計測する技術を指しています。
VR空間でより高品質な没入体験を実現するために、現在このアイトラッキングという技術が注目を集めています。
VRアイトラッキングの仕組みや原理は?
それでは現在公表されている最新のVRアイトラッキング技術の仕組み、原理とはどの様なものなのでしょうか?
VRヘッドセットに用いるアイトラッキング技術は眼球に直接接触しない測定デバイスを用いる必要があるため「角膜反射法」と言われる技術を使用します。
引用元:http://www.fujitsu.com/jp/Images/p03-02_tcm102-1761220.gif
これは、赤外線カメラを使って
- 角膜上の光の反射点と眼球の位置を撮影
- 光の反射点を基準点と置く
- 眼球位置の変動やその他の幾何学的特徴から眼球の向きや位置を推定する
という方法です。
▼参考図
また、Oculus社が2018年に取得した特許は、これにライトフィールドカメラを応用したものでした。
ライトフィールドカメラは光の明暗だけでなく、光の入射方向から物体の深度情報までも記録できるため、立体的にユーザーの眼球の動きを捉える事が可能で、より正確に眼球の動きが測定できるとされています。
こうしたアイトラッキング技術を用いると視線の動作でデバイスの操作が可能になります。
コントローラーを必要とせず、視線のみでVR空間内での操作ができるため、より快適なVR体験が実現するでしょう。
引用元:https://game.watch.impress.co.jp/img/gmw/docs/703/521/aiming.jpg
こういったアイトラッキングを利用したデバイス操作の活用例として、FPS系ゲームでの照準操作に用いるといった案などが提案され、注目を集めています。
アイトラッキングがVRにもたらす3つのメリット
AR・VR共に非常に必須になっていくアイトラッキングですが、VRにおいてはアイトラッキング技術を導入することで大きく3つの利点が存在します。
1.人間の視界に極限まで近づき、視覚的な没入感が高まる
人間は現実の空間でものを見るとき、焦点を合わせている部分を中心にはっきりと見え、それ以外の景色はぼやけて見えるというのが自然です。
しかし、アイトラッキング機能を搭載していないVRヘッドセットだと、映像全てがはっきりと映ってしまうため、それによって現実との差異を感じて没入感が削がれてしまいます。
VRヘッドセットにアイトラッキング機能を搭載してユーザーの視点を追跡し、「焦点の先のみ映像の解像度を上げる」といったことが可能になれば、この問題は解決され現実空間に近い映像表現が可能になります。
敷いては、視覚的なVR体験の改善、高品質化につながると期待されています。
2.PC負担の軽減とグラフィックの質の向上
また、アイトラッキング技術を利用して現実世界で人が見ている映像を忠実に再現する場合、ユーザーの焦点が合っている部分だけを高解像度で描画し、そこから外側にいくにつれて低解像度で描画すれば良いので、PCにかかる負担を大幅に軽減でき、全体のグラフィック品質を大幅に向上させる事が期待できます。
これはフォービエイテッド・レンダリングと呼ばれています。
現状100度以上の視界において、全て高解像度の映像を映す設計になっており、PCVRゴーグルなどにおいては高いPCスペックを要求されます。
技術的な課題をクリアすることでユーザー体験における障壁が下がりやすくなるというメリットもあるようです。
3.仮想空間のおける表現の多様化
それ以外にも、アイトラッキングにはVRで可能な表現の幅が大きく広がるというメリットがあります。
ユーザーの視線の動きを計測し、システム側がキャラクターとプレイヤーの目が合うなどといった演出や表現が可能になれば、現実さながらのコミュニケーション表現が可能になるでしょう。
また、VR上における他のプレイヤーとのコミュニケーション時に自分のアバターの視線が忠実に同期されていれば、そのアバターに生き生きとした表情を生み、大幅に生きた人間らしくなります。
こういった感情面での要素がVRでの没入感を大きく向上させる事は間違いありません。
以上の様に様々な観点からアイトラッキング技術はVR業界で注目を集めているのです。
2019年最新のVR企業×アイトラッキングの取り組み・現状
2018年10月、アイトラッキング技術の研究開発を専門に手がけるスウェーデン企業「Tobii(トビー)」社が「ある大手VRヘッドセットメーカー」との契約合意に達した事をアナウンスしました。
※VRヘッドセットメーカー名は非公表
また、Oculus Riftなどを販売するVRヘッドセットメーカー大手Oculus社も2016年にアイトラッキング機能を開発していたデンマークのスタートアップ「The Eye Tribe」社を買収し、2018年にはアイトラッキング技術に関する特許も取得しています。
2019年1月8日HTC社はアイトラッキング機能が搭載された「HTC Vive Pro Eye」を発表しました。また、台湾に本拠を置くStar VR社が2018年8月に発表した「Star VR One」の製品版にもアイトラッキング機能が搭載される事が発表されています。
VRにおけるアイトラッキングの活用事例2選
最後に、現在VRでアイトラッキングが活用されている事例を紹介します。
『Eye Play The Piano』:視線だけでピアノ演奏を可能に
まずはこちらの動画をご覧ください。
株式会社FOVEと筑波大学付属桐ヶ丘特別支援学校に共同企画、『Eye Play the Piano』。
株式会社FOVEは日本初のスタートアップで、視線追跡でVR空間での操作・体験を可能するテクノロジーをもっています。
そんなFOVEが『Eye Play the Piano』で提供したインターフェースは下記。
ゴーグルを装着すると現れるインターフェース上パネルに視線を合わせ、瞬きをすればそれぞれのパネルで設定されたピアノ音が発せられる仕組み。
手や腕を使わず、鍵盤を叩かずとも美しいピアノ音色を奏でることが出来る、という常識を覆す技術の進化を感じます。
視線追跡技術により身体の不自由という課題を解決していく極めて先進的な例になるでしょう。
『SMI Social Eye』:リアルタイムで眼球の動きをVR空間で再現
20年以上アイトラッキング技術開発に取り組むドイツのSMI社が発表した『SMI Social Eye』。
『SMI Social Eye』は、VRヘッドセットを装着したユーザーの眼球の動きをアイトラッキングにより検知し、VR空間上のアバターにリアルタイムで反映させられるシステムです。
VR空間における有効なコミュニケーションツールの一つとして期待されています。
VR・SNS『VRChat』などで利用できる様になれば、VR体験の没入感を高めるであろう面白い技術でしょう。
※関連記事)VRChatの概要や魅力→
話題のVRChatとは?サービスの魅力や使い方を解説!
まとめ
今回はVRにおけるアイトラッキング技術について詳しく紹介しました。
※関連記事)VRの仕組や全トラッキングの種類について
→VRの仕組み~360°の立体映像が見える2つの理由
VRヘッドセットメーカー各社がアイトラッキング技術の導入に動いていますが、2019年現在のVRアイトラッキング技術では、完全なフォービエイテッド・レンダリングを実現するのは難しく、完全なアイトラッキング機能を搭載したヘッドセットが製品化されるのは2022年頃になるだろうと予測されています。
完全な形で導入されるのはまだ数年先になりそうですが、最も飛躍的にVR体験の品質を向上させる技術の一つとして大きな期待を集めています。
今後、さらに多くのVRヘッドセットにアイトラッキング機能が搭載されていく事が見込まれるため、動向に注目していきましょう。
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