High Fidelityから読み解く「VR」と「ブロックチェーン」の可能性
「VR」と「ブロックチェーン」。
これまで異なる文脈として扱われるテクノロジーでしたが、最近この2領域の統合を試みるスタートアップが増えています。
この2領域の統合には、どのような背景があるのでしょうか?
本日はそんな「ブロックチェーン」×「VR」を推進するスタートアップ「High Fidelity」を紹介しながら、その潮流を紐解いてみたいと思います。
High Fidelityとは?
High Fidelityはクラウドサービスを使うことで誰もが簡単にVR世界の製作者になることが可能なサービスです。
2007年頃に爆発的な人気を博した「Second Life」の創設者であるフィリップ・ローズデール氏が設立しており、今年シリーズDで3,500万ドル(約38.5億円)の資金調達を行った旨を発表しています。
High Fidelityの最大の特徴は、オープンソースで開発されている点です。
解放されているオープンソースは自分で改変して、誰もが理想的なVR空間を製作することが可能になっています。
一定の開発技術がある人なら誰もが「プラットフォームの改善を待つよりも自分で創った方早い」という環境を実現することが彼らのビジョンとするところでしょう。
これが空間を作るホスト向けのユーザーバリューです。
一方、ゲスト(作られた空間に参加するユーザー)から見たときのHigh Fidelityのバリューは、昔の「mixiのコミュニティ」のような、ホストユーザーが有志で創った複数のVR空間を自由に行き来出来るようになる点です。
インターネット・コミュニティの歴史から考えると、自由度の高いVR空間におけるコミュニティの「デザイン」「存在目的」「運営ルール」は所属しているクラスタ毎に最適化されていくと想定されます。
このいくつも分散したグループのプラットフォームであるHigh Fidelityではユーザーが自由に、あらゆるコミュニティを移動、交流することができ、同社によれば市場に流通するVRハードウェアが彼らの期待に追いつけば、早急にスケール化が狙えるとの事です。
このあたりはVRchatの興隆が説得力を持たせますね。(2ヶ月で20倍に増加、300万人を超えるVRchat)
VR空間(プラットフォーム)におけるブロックチェーンの真価
現在同社はプラットフォーム上における決済システムや貨幣の交換、所有物の売買などの透明性と公表性を担保するべく、ブロックチェーン開発に力を入れています。
創業者のローズデール氏は、ブロックチェーン技術がVR空間では不可欠になると主張しています。
それもそのはず、同社を「プラットフォーム」という括りで見たときに、同一カテゴリと言える「Airbnb」や「メルカリ」「Uber」などが最も注力してるポイントはユーザーにとっての「安心・安全」です。
これはプラットフォームの本質的なバリューが「取引を円滑にすること」に集約されるからであり、この鉄則は現実空間だろうが、デジタル空間だろうが変わりません。
High Fidelityにおいてユーザーが何か売買したり取引を行ったり、空間を所有するようなるわけですが、ヒト・モノ・カネが流動した情報は全て同プラットフォームでは非中央集権的な形で記録され、その役割はブロックチェーンが担っています。
これはまさにブロックチェーンの堅牢性がユーザーにとって、プラットフォーム参加への安心感を生むからに他ならないわけです。
VR空間でブロックチェーンが浸透しやすい理由
では最後にVR空間でのブロックチェーンの浸透のしやすさについて考えて見ましょう。
いきなり少し話が逸れますが、現実世界でブロックチェーンとの相性が良いとされる1つの領域に「物流」があります。
物流はこれまで、あらゆる物資の移動を「誰か物資を盗むのではないか?」という性悪説を前提に、紙で管理していました。
この監督コストの存在が物流業務の非効率化を招いていたのですが、分散台帳による高セキュリティによってそもそもの「監督」と「信頼」が必要なくなるブロックチェーンはまさに物流業界にとって相性の良いテクノロジーなのです。
しかしながら、その浸透は容易くありません。これは既得権益や現状のオペレーションが現在の環境に適応しており「既に回っている現状を変革する」にはよほどの強いコミットとインセンティブが必要になるからです。
これはテクノロジーの浸透が先進国よりも途上国の方が早い「Leapfrog」と呼ばれる現象に通じるものがあります。
例えば、数年前まで金融業界の仕組みが周回遅れだった中国は、政府の強力なコミットにより現在世界で最もフィンテックが進んだ国になりました。
テクノロジーの進化の段階を1~2段すっ飛ばしたこの大変革は日本のように金融業界の仕組みが一定進んだ国では、根回し・政治的な問題が絡み、思うように進めることは出来ません。
これがLeapfrogの意味するところですが、ここにブロックチェーンがVR空間から浸透する論拠があります。
VR空間は既得権益が存在せず、新しく作る世界になるためブロックチェーンを前提にした社会の枠組みを作ることが出来ます。
High Fidelityの空間ではブロックチェーン導入による障壁はなく、その世界に参画するユーザーはヒト・モノ・カネがトラストレスに流動する世界を享受することができます。
これは本体である「High Fidelity」にとってユーザーの安心を作ることが競争優位性に繋がるため、強力なインセンティブがあり、ブロックチェーンをサービス上に設計することが必然だからです。
まとめ
ここまで「確からしさ」の弱いポエムのような記事を書いてしまいましたが、VRchatでアバターの著作権が問題になっているように、AR/VR空間の「デジタルクリエイティブ」における所有権、著作権は非常に重要な論点です。
現在、音楽業界などがブロックチェーンを活用して著作権などがアーティストに還元される仕組みを構築しつつありますが、VRやARの時代に、ブロックチェーンがどのような役割を担っていくのか、今後も編集部ではウォッチしていきたいと思います!
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